下村博文・不正献金疑惑から浮かぶ加計学園理事長の巧妙さ

2017.06.30.15:53

 下村博文・自民党幹事長代行については「また、あんたでっか…」という感じですが、それとひき較べ、この加計学園理事長・加計孝太郎という人物は、相当なやり手のようです。奸智に長けた人物と言うべきか、容易なことでは尻尾はつかませないでしょう。

 文春記事に慌てて記者会見を開いた下村博文のその会見の模様をテレビニュースで見ていて、「うまいなあ」と僕が感心したのは、下村その人は相変わらず「バカ丸出し」に見えますが、「2013年と14年、加計学園の秘書室長が下村事務所を訪れ、計11の個人・企業から預かってきた各100万円ずつを持参した。1人・1社20万円以下で、それぞれ領収書を渡した」という説明のくだりです(「1人・1社20万円以下」というのも、それだと収支報告書への記載義務がないという点を逆手に取っているわけです)。

 この後加計学園はすぐ、「献金していない」という発表を行いましたが、それは本当でしょう。秘書室長がカネをもって行っても、その中には加計学園からの献金は含まれていないのです。「うまい」というのはここのところで、下村のためにパーティ券を捌いてやりながら、しかし、将来この日あることを見越して、自分は買っていない。受託収賄の疑いを残さないためです。

 安倍は以前、加計の理事長のことを「自分のスポンサー」と言っていたそうですが、安倍相手にもそのあたり、足がつくような下手な真似はしていないでしょう。用心深い、よく頭の回る人なのです。そこらの不用心な土建屋のオッサンとは違う。

 加計のためによく働いてみせたあの萩生田(そんなゴリ押しはしていないとシラを切り続けていますが)にしても、落選して失業中、安倍の斡旋で加計学園が経営する千葉科学大学の危機管理学部で客員教授をさせてもらい、10万の月給をもらっていた。少なくとも表向きはそれだけなので、法的な問題は生じにくいわけです。月10万程度なら「不当な利益供与」だの何だのと言われるおそれはまずない。

 政治家に恩を売り、自分が経営する学園の事業拡大に協力させながら、しかし、「癒着」をとやかく言われるような痕跡は残さない。うまいと言うゆえんです。例の獣医学部の今治市には土地を買い取らせたうえで、無償提供させ、かつ大学建設費用も多額負担させながら、自分の地元・岡山市の息のかかった建設業者を連れてきて、今治市の地元業者はほとんど恩恵にあずかっていない(市長関連の業者は抜かりなくかませている)と批判されているようですが、それも別に「違法」ではないのです。おそらく、そのあたりは計算し尽しているのでしょう。

 千葉科学大学を誘致したのは銚子市で、人口減少が止まらず、雇用吸収力のある産業・企業もないということで、「大学でも…」ということになったのでしょうが、銚子市はこの大学誘致で借金をさらに増やしたものの、思うような経済効果は見込めず、「第二の夕張になる」なんて心配もされているようです(大学は毎年定員割れが続いている)。

 新設地方私大で「大成功」と言えるのは、僕の知るかぎり、大分県別府市の「立命館アジア太平洋大学」くらいのものでしょう。有名商社など企業にも好感され、就職がよく、人気も出て、偏差値も上がっている。しかし、少子化が進む中、こういうのは例外に属します。

「獣医学部なら定員割れの心配もない」と加計の理事長は計算したのでしょう(きっかけは息子が獣医学部の出身だったことだそうで、いずれはその息子を教授、学長にでもと考えているのでしょう)。今まで何度申請してもはねられたが、今度は「腹心の友」安倍が総理の座にいるおかげでうまく行った。ところが、あいにくなことにこの騒ぎになってしまったのです。安倍も森友のときのような手のひら返しの対応は、「昔からお世話になっている加計さん」に対してはできないから、「岩盤規制を突破するためにやった。知人だったのはたまたまにすぎない」と苦しい言い訳に終始するほかなくなったのです。

しかし、「情実認可」の疑いは濃厚でも、受託収賄で引っ張られるような間抜けなことはしていない。そこが加計孝太郎という人物の抜け目のなさなのです。

 とはいえ、これは実質的には「不正」です。金銭授受のあるなしにかかわらず、知人・友人のために特別な利便をはかれば、公正を害したことになるのは明白だからです。下村のこの件でも、加計名義で50万出すより、こちらの方が下村にとっては助かる。実質的には献金以上の効果をもつのです。しかし、献金ではない。「専門家は『あっせん行為があれば違法の疑いがあり、丁寧な説明が必要だ』と指摘」している(日経記事)そうですが、御用弁護士・法学者が助太刀に入るだろうし、おそらくは逃げられてしまうでしょう。

 にしても、下村博文という男のセコさ、姑息さには、あらためて呆れます。2015年3月、「下村博文・文科相の不正献金疑惑問題」と題してこのブログにも書いたことがありますが、それは

「●●博友会」というのが全国各地にいくつもあるそうで、そこから会費だの、講演会、懇親パーティ料だのという紛らわしい名目でカネを吸い上げているが、このうち政治団体として届け出られているのは、東京のそれ一つだけだという…

 疑惑が週刊文春で報じられたのを受けて書いたものです。彼は元は東京板橋区で小中学生相手の塾を経営していた男で、「下村氏の文部科学大臣就任は、本人と塾業界の“悲願”だった」なんて、馬鹿馬鹿しいにもほどがあるので、声がやたらでかいだけの単細胞の集まり、ワセダの雄弁会上がりだということも、僕には気に入らなかった。このアホは、大学の学長の集まりにのこのこ出かけていって、「大学でも入学式などには国旗掲揚、君が代斉唱が望ましい」なんて低次元のたわごとを並べて、失笑を買う始末だったのです。安倍のお友達だけあって、教育の何たるかについての深い理解などカケラもない。それが文科大臣だなんて、国辱でなくて何なのでしょう。

 ともあれ、そのときは何とか逃げられたようで、市民有志から訴えがあったが、検察はしばらくして不起訴処分にした。検察が無能すぎたか、官邸筋から強い圧力がかかったか、たぶん後者だったのでしょう。

 今回はどうか? 別件でまずいのがすでに入っている。次の記事をご覧ください。

下村博文氏『加計学園から200万円の闇献金』報道を否定 一方で「加計の秘書室長が...」

 週刊文春デジタルはパーティー券について、他にも「収支報告書に記載されていないケース」があると指摘している。
 同誌によると、大手予備校の「東進ハイスクール」などを運営する「ナガセ」の永瀬昭幸社長が2012年9月25日、50万円分のパーティー券を購入しているが、博友会の政治資金収支報告書に記載されていないとしている。


 これは裏が取れているようで、

 大手予備校の「東進ハイスクール」などを運営するナガセの永瀬昭幸社長。12年のリストによれば、永瀬氏は9月25日に50万円分を購入している。ナガセに確認すると、「ご指摘いただいた通り事実でございます」

 と東進側は認めているから、りっぱな「虚偽記載」になっているわけです。下村は週刊文春に対し、加計から献金があったかのような報道は事実に反するから、名誉棄損で訴えると息巻いていますが、こちらは「秘書がうっかりして記載し忘れただけ」とか何とか、言い繕うつもりなのでしょう。前の、後援会を政治団体として届け出ないまま、裏でせっせと「集金」に励んでいた件といい、不明朗の化けものみたいな奴です。

「このタイミングでこんな記事が出るとは、選挙妨害以外の何ものでもない!」と怒っているそうですが、自分がおかしなことをやっているから告発されるわけで、自民党関係者の違法行為の告発は、いつも選挙が終わってからでないと許されないとでも、この男は本気で思っているのでしょうか? そのあたり、加計の理事長に、もっとカシコいやり方はないか、教えてもらいに行ったらいいかもしれませんね。むろん、すでに見たように、そういうのは「悪知恵」以外の何ものでもないのですが…。

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