反面教師としてのオトナたち

2017.03.29.16:38

 老母の顔を見に帰省していたので、このブログもしばらくお休みにしましたが、例の「籠池騒動」は続いているようです。「朝鮮半島情勢が不安定なこの難しい時期にこういうことで政府対応が混乱して外交に影響するのはよろしくない」なんて言う向きもあるようですが、それとこれとは別の話なので、こういうお粗末な問題を作り出した側が悪い。加計学園の話もあることだし、これまでの数々の“お友達”人事(NHK会長、最高裁判事任命、各種諮問委員会等)などもそうですが、他方でマスコミを恫喝して不都合なことは報道させないように仕向けて批判を封じ込め、安倍政権下でわが国は韓国並の本格的な「情実政治」(妻もそれに“尽力”している)に落ち込みつつあるのだから、その罪は大きいと言うべきでしょう(前回も書いたように、それに唯々諾々と従う関係者も悪いのですが)。

 さっきネットのニュースサイトを見て、面白かったのは次の三つです。

「昭恵リスク」鮮明に(毎日新聞)

森友問題 証人喚問の衝撃 「籠池の乱」が怖すぎる(AERA)

国会での証人喚問は「犯罪捜査のため」という暴論(ハフィントンポスト/郷原信郎が斬る)

 ①はこの件で頑張っている毎日の関係記事もまとめて読めるので便利です。中には国会での籠池証言に対してフェイスブックで反論した昭恵夫人のコメント全文も入っていて、これはご本人が書いたというより、公邸関係者が代作したものだと言われていますが、「私人」の割にはそういうことが多いらしいのには笑えます。ともかくこれによれば、「籠池証言は全くのデタラメ」ということになるわけですが、ジャーナリストの皆さんには頑張っていただいて、どちらが嘘つきなのか、解明に努めていただきたいと思います(細部の話は別として、例の領収書の件からしても、昭恵夫人、というより官邸スタッフが嘘をついているという可能性の方が高いと僕は見ていますが、秘書共々「記憶にない」だけなのかも知れません。この前刑法の偽証罪について書いたとき触れたように、「記憶に反していなければ、客観的事実とは異なっていても許される」ことになっているのです)。

 証人喚問の際提示されたという「安倍昭恵夫人付官邸職員の回答ファクス」なるものも興味深いもので、こういうのが「口利き」でなければ、何が口利きなのかと思われるので、財務省は夫人の「問い合わせ」にさぞやビビったことでしょう。「私人」だから構わないというような屁理屈は、三流弁護士以外、考えつくのが難しいようなレベルのものです。

 ②のAERAの記事には、今はとくに役人の「忖度」が働きやすくなっているのだということで、こういう説明が出ています。

「内閣人事局が発足し、官邸が官僚人事を掌握するようになって官僚の意識は激変しました。特に幹部官僚にとっては内閣人事局でどう評価されるのかが一番の気がかりですから、森友学園の問題も、『忖度(そんたく)』という言葉がすべてを物語ると思います」

 内閣人事局は、国家公務員の人事管理に関する中枢機能を担う。14年5月に発足し、審議官級以上の約600人の人事を官邸主導で担うことになった。

「官僚は昭恵夫人の名が出れば身構えますよね。雑な扱いやけんもほろろな扱いをしたら、『何省の誰それの態度は……』ということが必ず官邸に打ち返され、出世の足を引っ張られることになりますから。特に安倍1強体制が20年の東京五輪までは続くと見られている中で、『昭恵夫人絡みの案件』という話が回ってきたら、財務官僚の側は昭恵さんの後ろには安倍首相がいることを直感的に察し、ベストの対応をするのは当然の原理でしょう」(ジャーナリスト)


「官邸が官僚人事を掌握するようになっ」た「内閣人事局」は「14年5月に発足し」たとありますが、第二次安倍政権が発足したのは2012年12月26日なので、「忖度行政」の温床となるこの新制度は、むろん、安倍政権が作ったものです。昭恵夫人は知ってか知らずか、これを最大限に利用している。前々回、新潮の「文科省に圧力電話する安倍昭恵は私人か!」という記事をここでも紹介して、彼女が「全国高校生未来会議」なるものを主催するロクな実績もない「リビジョン」という団体を強烈にプッシュしていて、文科省のお墨付きを与えさせ、ところがこの団体の代表は安倍首相の親戚の青年で、彼は「AO義塾」なる塾を経営していて、その「未来会議」で臆することもなくその塾への勧誘を行い、そのイベント自体をAO入試用の題材に使っていた、という話を書きました。こういうのを世間では「不正」と呼びますが、自分が善意なら公私混同も許されると思っているらしい夫人にはそのへんの感覚は全くないらしく、森友学園の件も基本的に同じなのです。「ええ加減にせいや、このアホ女!」と今では言われているでしょうが、元はと言えば夫の方もやたら「お友達人事」が好きな御仁なので、夫唱婦随というべきか、これは公私のけじめのない似たもの夫婦なのです。それが日本国の総理とその妻だというのだから、全く恐れ入ります。

 ③は、元検事で弁護士の郷原さんのブログ記事を転載したものですが、安倍首相の、

 なぜ籠池さんが証人として呼ばれたのかと言えば、...(中略)...補助金等の不正な刑事罰に関わることをやっているかどうかであり、私や妻はそうではないわけであるから、それなのに証人喚問に出ろというのはおかしな話

 だという珍答弁を引用して、それが法律学上から見ても常識から見ても逆立ちした奇妙な論理であることを明快に説明してくれたものです。深刻なのは、今の安倍政権には「そんなヘンテコで間違った論理は通用しませんよ」ということを言うまともな知性と良識の持主が誰もいないのかということで、最後の、

 私は、これまで、長期化している安倍政権と日本政府について、「権力の一極集中」に漠然とした危惧感を持ちながらも、国政を遂行する能力、様々な事態に対応する能力という面では、それ相応に高いものと考えていた。少なくとも、その前の民主党政権よりははるかにましだと思ってきた。
 しかし、この森友学園問題という、外交・防衛等の国政の重要課題とはレベルの違う、些細な問題での対応に失敗し続け、最後には、法治国家ではあり得ないような対応を、組織を挙げて行っている安倍政権の現状を見ると、やっていることのレベルは、混乱が続いている近隣諸国と変わらない。
 日本人であることが不安になってきたというのが偽らざる思いである。


 という感想には共感する人が多いでしょう。籠池氏を証人喚問してビビらせ、潰してやろうという政府側の目論見は見事に失敗したわけですが、昭恵夫人(というより、繰り返しますが首相官邸)は数時間後、フェイスブックを使ってその証言を全面否定、「国有地の売却交渉が行われていたときに財務省で理財局長を務めていた迫田英典国税庁長官」は、籠池証言の翌日、国会に参考人招致されて「本件について報告等を受けたことはない。政治的配慮をするべくもなかった」(AERA記事)とこれまた全否定。疑惑が取り沙汰されている松井大阪府知事も、記者会見などで責任を政府転嫁と、皆さん責任逃れにやっきになっているわけですが、「私がやりました」なんて素直に言うわけはないとしても、嘘つきがずいぶんと多いらしいのはたしかで、事が学校設立を巡るものであったことからして、「都合が悪くなると嘘をつくのはあたりまえ」という素晴らしい“道徳教育”を関係したオトナたちが子供たちにして下さっているのは何とも皮肉なことです。

 僕が学校の先生なら、「嘘も方便」というテーマで「道徳の授業」を行い、子供たちに「どういう嘘なら許されるか?」ということで議論させると思いますが、現役の先生たちはやってみたらいかがでしょう? こういう「現実のニュース事例」を使えば、生徒たちの興味関心も自然に湧くわけで、別に誘導しなくても、子供たちの結論は「あんなオトナたちにだけはなってはならない」というところに落ち着くと思いますが、これぞ真の道徳教育です。

 何なら僕が講師嫌司会者として出向きますから、延岡市の学校なんか、呼んでくれませんかね? 前に二度ほど、小中学校の保護者相手に話をさせてもらったことがあるのですが、それは「子供はしっかり遊ばせましょう」というような話で、このブログを書くようになってから、危険人物視されるようになったのか、どこからもそういう依頼は来なくなりました。

 ディスカッションの司会なんかさせると名人級だと自負しているのに、これは残念なことです。子供たちに自由にホンネを言わせて、侃々諤々の議論になって、それで問題への理解を深めさせるというのがああいう授業の一番大事なポイントでしょう。ほっとくと、大人社会への困った誤解が生じることになるので、こういう事件が起きたときは「道徳の時間」なるものを利用してそういうことをした方がいい。高校生なんかだととくに、それは面白くて有益だと感じられるのではないでしょうか。僕は皮肉ではなく、真面目に言っているのです。
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