FC2ブログ

子供たちと読むトランプ演説の中身

2017.01.21.17:54

 ゆうべ深夜のトランプの就任セレモニーの一部を、僕も見ました。全米各地で反対デモがあって、暴動に発展したケースまであるという話ですが、そのせいかどうか、今朝はトランプ関連の不吉な夢を見て目覚めたので、先が思いやられます。

 同時通訳の声が邪魔になって(失礼!)、ところどころ聴き取れなかったのが残念でしたが、全文が次のサイトで見られます。

・トランプ大統領就任演説

 英語のお勉強も兼ねて、ちょっと重要な個所をいくつか取り出してみましょうか。一緒に読んでみて下さい。

 Today's ceremony, however, has a very special meaning because today we are not merely transferring power from one administration to another or from one party to another, but we are transferring power from Washington, D.C., and giving it back to you, the people.
 For too long, a small group in our nation's capital has reaped the rewards of government while the people have bore the cost. Washington flourished, but the people did not share in its wealth. Politicians prospered but the jobs left and the factories closed.
 The establishment protected itself, but not the citizens of our country. Their victories have not been your victories. Their triumphs have not been your triumphs. And while they celebrated in our nation's capital, there was little to celebrate for struggling families all across our land.
 That all changes starting right here and right now, because this moment is your moment.

(訳:本日の式典は、しかし、特別な意味をもっています。今日私たちはたんに一つの政府から別の政府へと、一つの政党から別の政党へと権力を移譲しているだけではないからです。私たちは今、権力をワシントンDCからあなた方国民へと取り戻しているのです。
 長い間、国民がその負担にあえぐ中、首都の小集団が政治から報酬を得てきました。ワシントンは栄えたが、人々がその富を共有することはなかった。政治家たちは利益を得たが、職は置き去りにされ、工場は閉鎖されました。
 エスタブリッシュメント〔支配階級〕は自らを守ったが、それは私たちの国民を、ではなかったのです。彼らの勝利はあなた方の勝利ではありませんでした。そして彼らが首都でお祝いをしているとき、国中の苦しむ家庭には祝うべきことはほとんどなかったのです。)

 力強いお言葉、という感じで、この後に出てくるWhat truly matters is not which party controls our government, but whether our government is controlled by the people(真に重要なのはどの政党が政府を支配するかではなく、私たちの政府が国民に支配されているかどうかということなのです)、a nation exists to serve its citizens(国家は国民に奉仕するために存在する)なんてのは、このあたりだけ聞くと、トランプがバーニー・サンダースと入れ替わったのか、という感じです。

 しかし、これはトランプなので、そのトランプらしさがだんだん出てきます。「あんたが大将!」とばかり、さんざん国民をおだて上げた後で、「問題はそんなに単純な話か?」と言いたくなる方向に行き出すのです。

 For many decades we've enriched foreign industry at the expense of American industry, subsidized the armies of other countries while allowing for the very sad depletion of our military.
 We've defended other nations' borders while refusing to defend our own. And we've spent trillions and trillions of dollars overseas while America's infrastructure has fallen into disrepair and decay.
 We've made other countries rich while the wealth, strength and confidence of our country has dissipated over the horizon.

(何十年にもわたって、私たちはアメリカ産業の犠牲の上に、諸外国を富ませてきました。他国の軍への助成を行う一方、わが軍の悲しむべき消耗を許してきたのです。
 私たちは他国の国境を守り、その一方で自らの国境防衛は拒んできました。そして、アメリカのインフラが荒廃を余儀なくされる中、海外で途方もない金額を費やしてきたのです。
 私たちは他国を富ませる一方で、自国の富と強さ、自信を失ったのです。)

 One by one, the factories shuttered and left our shores with not even a thought about the millions and millions of American workers that were left behind.
 The wealth of our middle class has been ripped from their homes and then redistributed all across the world. But that is the past, and now we are looking only to the future.

(一つまた一つと、工場は閉鎖され、国内の置き去りにされた無数のアメリカ人労働者には一顧だに与えられなかったのです。
 中産階級の富は騙し取られ、[不当にも]世界中に再分配されたのです。しかしそれは過去のこと、今や私たちは未来だけを見ているのです。)

 要するに、こういうことです。アメリカの中産階級の没落はひとえに自由貿易のためであって、そのために製造業が空洞化してしまったから、こんなことになった。「世界の警察官」として海外であれこれ世話を焼きすぎたのもよくなかった。アフガンやイラク相手の戦争では途方もない戦費がかかって、それはおたく(=アメリカ)が勝手に始めた戦争ではないのかというような批判はこの際完全無視するとして、とにかく労賃の安い発展途上国に製造業が移ってしまって、その場合は高関税を課せばよかったのだが、お人よしでそんなことはしなかったものだから、国内の工場はバタバタ閉鎖することになってしまった。

 だから問題の解決はかんたんで、輸入品には高い関税をかけてしまえば、割高になるから国内製造業は競争力を回復して雇用が戻る。海外に派遣している軍隊は撤退させるか、そこの国に費用の大部分を肩代わりさせるかすればいい。韓国と日本なんか、いてほしければ費用を全額出せよな(ガーガー言えば、家来のアベは必ず折れてくるだろう)。

 アメリカの今の拡大しすぎた所得格差は、経済成長分のほとんどをウォールストリートとグルになった富裕層が巻き上げているからだ、というような説は詐欺師として告発されたこともある不動産屋としては承服できない。だから今後も金融資本とは個人的に仲良くして、保護貿易主義でやる。アメリカが輸出する際、相手国も高関税で対抗したらどうするのかって? そんなものは、軍事力で脅して、こちらの基準で「適正」と思われるレベルまで下げさせればよいのだよ。がはは…。

 まあ、中国とはビミョーだが、ロシアのプーチンとは仲良くして、昔みたいに、世界を二つで分け合って、他は“子分”にしてしまえばいいんだから、話はかんたんなのよ。強いアメリカ帝国万歳!

 From this day forward, it's going to be only America first, America first. Every decision on trade, on taxes, on immigration, on foreign affairs will be made to benefit American workers and American families. We must protect our borders from the ravages of other countries making our product, stealing our companies and destroying our jobs.
 Protection will lead to great prosperity and strength. I will fight for you with every breath in my body, and I will never ever let you down.
 America will start winning again, winning like never before.

(今後は何を措いても「アメリカ第一」。貿易であれ、税であれ、移民、海外問題であれ、あらゆる決定はアメリカ人労働者とアメリカ人家庭の利益になるように行われるのです。私たちは国境を他国の破壊から守らなければなりません。そういう国は私たちの製品を作り、企業を盗み、そして私たちアメリカ人の仕事を破壊しているのです。
 こうした保護は大きな繁栄と強さにつながるでしょう。私は全力を挙げてあなた方のために戦います。そうしてあなた方を失望させることは決してないでしょう。
 アメリカは再び勝ち始め、しかもかつてないほど大勝ちするのです。)

 多国籍企業はたんに自己利益拡大のために海外展開しているにすぎませんが、トランプの解釈によれば、それは「会社を盗まれた」ことになるのです。アメリカのそうした企業には発展途上国で労働者をひどい低賃金で買い叩き、悲惨な労働環境を強いて「非人道的搾取」としか言いようのないことをしているところも少なくありませんが、そういう貧しい国の気の毒な労働者たちは「アメリカから会社を盗んだ」不届者なのです。

 そうして、「いいことずくめのアメリカ」の未来図を提示した後、彼はおごそかに言います。

 We will follow two simple rules: Buy American and hire American.

 訳す必要もないでしょう。われらが総理もいつぞや「Buy Abenomics!」なんてアメリカまで出向いてやってましたが、トランプはそれに「アメリカ人を雇え!」と追加するのです。何ぃ、メキシコに新工場を作るだと? あんな国のことはどうだっていい。どうせ連中はビンボーで、車も満足に買えないのだ。アメリカで売るんなら、国内で製造せんかい!

 ここらへんでいい加減、あまりにもone-sided なのに気づいたらしく、トランプ氏はこう言い添えます。ほとんど噴飯ものですが。

 We will seek friendship and goodwill with the nations of the world, but we do so with the understanding that it is the right of all nations to put their own interests first.
 We do not seek to impose our way of life on anyone, but rather to let it shine as an example.

(私たちは世界の国々との友好を求めます。しかし私たちがそうするのは、すべての国が自国固有の利益を第一にする権利をもつという前提でのことです。
 私たちには自分の生き方を誰にも押しつける気はありませんが、それが一つのお手本として輝かしいものたらんと志すのです。)

 エゴイズム・ファーストのお手本として世界が見習うような国たらんと、トランプのアメリカは願うというわけで、素晴らしい。その政策が「アメリカの金融資本ファースト」「軍産複合体ファースト」にならないことを、他国の庶民としては願うのみです。

 結果としてはそうなりかねないものを、アメリカの没落中産階級を救う手立てとどう両立させるのか、僕にはさっぱりわかりませんが、その「無理な話」をどう調整するのか、しばらくは興味津々で見物させてもらうことにしましょう。

 続けて、イスラム過激派掃討についての力強い決意も語られています。

 We will re-enforce old alliances and form new ones and unite the civilized world against radical Islamic terrorism, which we will eradicate completely from the face of the earth.

 われわれ文明国は、共同してあの危険なイスラムのテロリズムに対抗し、それを地上から根絶するであろうと高らかに宣言するのですが、断っとくけど、これは別にイスラムへの差別ではないよと、When you open your heart to patriotism, there is no room for prejudice(愛国主義に心を開くとき、偏見の余地なんかあるはずはない)と、このあたりは「力強い」とは言えないまでも、一応付け足しておくのです。神国の民は共に連帯して暮らすとき、それは何と善く喜ばしいものであるかと、聖書も言ってるでしょ?(The Bible tells us how good and pleasant it is when God's people live together in unity)。みんなで「アメリカ・ファースト」のために団結(solidarity)しましょうね。何といっても、私たちは神に守られている国民なのですから(And most importantly, we will be protected by God)。

 Finally, we must think big and dream even bigger. In America, we understand that a nation is only living as long as it is striving. We will no longer accept politicians who are all talk and no action, constantly complaining but never doing anything about it.
The time for empty talk is over. Now arrives the hour of action.

(最後に、私たちはいや増す大きな夢をもたねばなりません。アメリカでは、国家国民は、戦い続けるかぎりにおいてのみ生きていられるのだということを、私たちは理解しています。私たちはもはや、口先ばかりで行動しない、いつも文句ばかり言うが何もしない政治家は受け入れません。
 空虚なおしゃべりの時代は終わったのです。今こそ行動すべき時です。)

 以下、「空虚なおしゃべり」としか思えない檄文が続いて、

 You will never be ignored again. Your voice, your hopes and your dreams will define our American destiny. And your courage and goodness and love will forever guide us along the way.
Together we will make America strong again, we will make America wealthy again, we will make America proud again, we will make America safe again.

 という「外国人にも優しい」わかりやすい、激励とも約束ともつかない空疎きわまりない言葉の後、「一緒にアメリカを再び偉大にしましょう。サンキュー、ゴッド・ブレス・ユー。ゴッド・ブレス・アメリカ」で終わるのです。

 これ、名演説として、わが国でもCD付書籍が発売されたりするんですかね?
プロフィール

大野龍一

Author:大野龍一

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR