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ワセダは省庁と仲良し?

2017.01.23.16:40

 この件に関しては、僕が見たかぎり東京新聞の次の記事が最も包括的かつ詳細です。

大学再就職 5年で49人 文科省天下り問題(1.21朝刊)

 要は早稲田だけの問題ではなく、文科省は「組織ぐるみ」でOBの大学への再就職斡旋をはかっていたということですが、「本紙の調べでは早大は2015年までの五年間に省庁出身者が10人再就職しており、他校に比べて多い」とされており、文科省にかぎらず、霞が関のお役人が大学に天下るケースは多いが、早稲田はその中でも目立つ大学だということです。

「早大側は『そのことで大学の独立が脅かされたことはない』と」言っているという話ですが、こういう話は額面通りには受け取れないもので、「直接」ではなくとも「間接的」な影響はあるでしょう。それで「省庁受け」がよくなると、補助金を始め、何かと好都合だと考えられるからです。それで「匙加減」が変わるということはある。

 昔の大学と今の大学は違います。今は「財務状況」や「就職率」が重視されるので、ビンボーで、やたらと留年や中退が多く、就職する気のない学生がたくさんいるなどという大学は、受験生とその保護者からそっぽを向かれてしまうのです。

 昔のワセダはまさにそういう大学でした。ビンボーだからかどうか知らないが、一切広告を出さず、それはたぶんデマだったでしょうが、日大(当時最大のマンモス大学)から金を借りていて、大隈講堂がその抵当に入っているなんて話がまことしやかに囁かれていたのです。学生たちはそれはありうることだと思っていた。慶応と違って貧乏で、OB、OGにも金持ちは少ないから、寄付金の集まりも悪いと聞いていたからです。ワセダというのはヘンな大学で、学生も卒業生も母校の悪口ばかり言っている。そのあたり、元々お金持ちのボンボンが多い慶応が「母校愛」に富み、三田会の「鉄の結束」を誇っているのと対照的です。

 今でもまだやっているかどうかは知りませんが、新入生は大学の入学式(全体と学部別の二つがあるのですが)で、『巨人・大隈重信』という大昔の白黒映画を見せられる。配給元は大映か何かだったと思うのですが、主だった役者はたいがいがワセダのOB、OGなのです。この映画の中で大きな笑いが起きる箇所が二つあって、一つは「謀反人」の大隈が専門学校を作ったというので、「よからぬことを企んでいるのではないか?」と緊急閣議が開かれ、その席上閣僚の誰かが「(国家権力にとって危険だから今のうちに)潰してしまおう」と発言するところです。もう一つは、大隈が入学式か何かの席上、「希望者は全員入学させる!」と力を込めて言うところで、当時は浪人がむやみと多く、実質倍率も10倍前後あったから、ブラック・ジョークみたいに聞こえたのです。

 学部にもよりますが、遺憾なことに今以上に「東大落ち」は多かった(だから彼らは優秀だったというのは都市伝説の一つにすぎません)。「良家の子弟」が意外に多いなという感じもあったのですが、当時はまだ地方色も豊かで、「何かといえば権力や権威に楯突きたがる田舎の反抗的な若者に好まれる大学」という指標があったとすれば、たぶんそれではトップだったでしょう(二位には立命館あたりが来たはず)。それで講義には出席せず、そういう連中は元々がビンボーなので、学費未納で除籍処分を食らう、というのが、ワセダにおける「出世の王道」とみなされていたのです。当時はシュウカツに勤しむなんてのは自慢できないことで、こっそりそれをやって、大企業や公務員に就職先を決めた連中は、聞かれもしないのに、「内部から改革を行う」という抱負を語ったりしたもので、あたかもそれがやましいことであるかのような雰囲気があったのです。

 こういうのは「今は昔」の話で、そういうのでは保護者からすれば危険きわまりなく、受験生にしても、それでは一生フリーターで終わってしまうのではないかと、敬遠の対象にしかならないのです。だからオンボロ建物もモダンなものに変え、昔より面倒見がよくなり、管理的になった。学生の気質も変わってきたので、公務員志望の学生や、上場企業への就職者も増えた。全体に「反権力」ではなく「親権力」に変わったので、教員に省庁からの天下りが増えるなんてのも、現場の元エライさんからアドバイスが受けられるという意味で、学生にとってはむしろウェルカムなのでしょう。

 昔、いくらか滑稽に思われたのは、教授たちが東大を目の敵にしていたことです。こちらがライバル視しても、向こうがしてくれなければ意味はないだろうと学生たちは苦笑していましたが、今は教授陣を自校出身者で固めるという愚かな「純血主義」政策(だから「教員三流」と言われた)もやめたようで、教授に東大出身者も増えたことから、あれはあれで面白かったのですが、そういう意味でも「反体制気質」は薄れたことでしょう。

 つまり、今のワセダには「在野精神」なんてものはすでにないわけで、大体が、今はそういうのは売り物にならないのです。むしろ、それが災いして「親エスタブリッシュメント」の慶応に水を開けられたと言えるので、省庁や大企業幹部のOBを多く受け入れて、そのへんを挽回したいというのが大学のホンネなのではないかと思われます。

 僕にはそれをいいとか悪いとか言う気はありません。こういうのも時代の流れです。今の時代で一番「古き良き時代」の自由な雰囲気と野放図さを残している大学は京大だろうと思いますが、今回の「国家公務員法違反」でワセダに天下りした文科省の元局長は、京大法学部出身だったと聞いて、僕は思わず笑ってしまいました。京大の中でも法学部は例外的に「権力志向」が強い学部だとはいえ、個性と自由を看板にする(あるいはしていた)代表的な二つの大学が、今回のそれに反する事件に関係していたというのは、ある意味象徴的です。僕はどうせ東大法学部出身者だろうと思っていましたが、「東大的見地」からすれば文科省は二流省庁で、だから東大出身者の比率もあそこは高くないのかもしれません。

 まあ、しかし、お役人たちは法律ぐらいは守りましょうね。中国や韓国と較べると、わが国の官僚はずっとクリーンですが、組織ぐるみでセコい脱法行為を働いて、口裏合わせまで依頼していたというのでは示しがつきません。学校行政のトップに立つ文科省の場合、どの面下げてエラそうに指図しているのだと子供たちにまで思われるので、面目丸潰れです。

 ワセダも教員採用は公募で、公明正大にやった方がいい。この件に関する早大ホームページの記事には「元高等教育局長が高等教育に関する高い識見および著作権制度についての優れた教育・研究業績を有しており、本学教授(任期付)としてふさわしいと判断し、採用を決定」したのだとありますが、「オープンにやるので、あらためて個人で応募してください」と突き返すぐらいの度胸とプライドはあってしかるべきでした。選考を内々でコソコソやってるから、そこにつけ込まれてこういうことにもなるのです。「在野精神」はもはや売り物にならないからといって、権力追従の牙を抜かれた家畜同然になっては、ワセダの存在価値はゼロになってしまうでしょう。
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