軍事費が「人を殺すための予算」だというのは正しい~共産党・藤野発言について

2016.06.27.21:57

 騒ぎ立てているのは今や完全なネトウヨ新聞と化した感のある産経だけのようですが、共産党の藤野保史政策委員長が26日のNHKテレビ討論会で、軍事費を「人を殺すための予算」だと言ったのが許しがたいと非難する向きがあるようです。その産経の記事によれば、藤野議員の発言とは以下のようなものだったという。

(正社員と派遣社員の賃金格差の話題の流れで…)
藤野氏「成長という点でいえば、大企業は史上初めて3年連続史上最高益で、内部留保は300兆円貯まっている。日本の富裕層のトップ40人の資産も7・2兆円から15・4兆円に倍以上増えている。その一方で実質賃金は5年連続マイナスだし、個人消費という日本経済の6割を占めて家計に最も近い個人消費は戦後最悪。この道をいくら進んでも格差が広がるだけで家計は暖まらない。だからアベノミクスの転換が必要だ。3つのチェンジを主張している。税金の集め方、累進(課税)強化をしっかりやっていく。税金の使い方を改める。軍事費が初めて5兆円を超えた。人を殺すための予算でなくて、人を支えて育てる予算を優先させていく(稲田朋美・自民党政調会長「それは言い過ぎですよ。日本を守るためですから」)。働き方の改革もしていくことが大切だ」
(一部、文章がおかしいところを修正)

 ずいぶんとまともなことを言ってるじゃありませんか? 僕なら口をきわめてアホノミクスの愚劣さを罵倒する(「責任取って、とっととやめんかい!」)と思いますが、そのあたりもきわめて紳士的です。ところが、自民の稲田だけではなく、他の政党の議員もこれを「問題視」したのだという。同じ記事から、そのあたりを拾うと、

 石田祝稔・公明党政調会長「まず、さっきの取り消したほうがいいですよ。人を殺すための予算だなんてねぇ。それは大問題ですよ(藤野氏「軍事費ですよ」)。自衛隊を違憲といっている共産党だから分からなくもないけれど、人を殺す予算というのは、これは取り消したほうがいい(稲田氏「そうですよ」)。これは御党のためにいっておく」(後略、以下同じ)。

 下地幹郎・おおさか維新の会国会議員団政調会長「防衛予算を人を殺すための予算というのは訂正したほうがいい」

 和田政宗・にほんの心を大切にする党政調会長「人を殺す予算というのは、政治家の発言としてまずい。国防というのは、国民の命を守るためにある。戦争をしないというのは、どの国の政治家も思っている。決して人を殺すわけではない。国民の命を守るために国防がある」


 さらに産経の続報。

 民進党の前原誠司元外相は27日、NHK番組で防衛費を「人を殺すための予算」と発言した共産党の藤野保史政策委員長を強く批判した。埼玉県行田市内で記者団に「自衛隊は専守防衛を行うために極めて重要な役割を果たしている。極めて悪質でひどい発言だ」と不快感を示した。
 前原氏は災害時における自衛隊の献身的な役割にも言及した上で、「身を賭してやってくれている隊員に対して極めて失礼で無礼だ」とも強調した。民進党は参院選の1人区で共産党と共闘しているが、“身内”からも批判が出た形だ。


 鬼の首でも取ったみたいなはしゃぎぶりですが、前原は元々自民党に行った方がいいような男です。この際だから移籍したら?

 僕にはどこが問題なのかわからないので、むしろそういう認識が欠如している政治家の方が問題に見えます。彼らはそのリスクを否認しているのだから。

 基本的に軍事というのは戦争を前提にしたもので、戦争は「国防」だの「正義」だのの大義名分はともかくとして、「人を殺す」ものです。げんに世界最大の軍事国家アメリカは、あの低能ブッシュが始めた無法な対アフガン、イラク戦争で、何十万もの人を殺しているでしょう? 多くは罪もない一般市民なのですが。また、実質的な「経済的徴兵制」で戦地に送られたアメリカ人の貧しい若者たちが七千人以上死んだと思いますが、帰還後の自殺者数はすでにそれを上回っているというのも、有名な話です。

 何? アメリカとわが国は違うって? 安倍や稲田のような、歴史的無知ゆえに戦前を美化してそれに郷愁を覚える手合いでも、先のあのアホな日中戦争と対米戦争で、どれだけの戦死者が出たかぐらいは知ってるでしょう。いや、お国のために命を散らしたあの若者たちの美しさがおまえにはわからないのかって? アホな能書き並べてるヒマがあったら、おまえらが砲弾飛び交う戦場へ行ってみろよ。安倍なんか、過保護のお坊ちゃんで殴り合いの喧嘩一つしたことがないのでしょう。そういうのにかぎって強がるので、僕のような果し合いの経験まである元不良の方がそういうときには役に立つと思いますが、逆にそういう人間はわが身を危険にさらさず、代わりに人を戦わせるようなことは恥じるのです。

 こう言うと、「じゃあ、おまえは軍備はいらないというのか?」とせせら笑う人間がいくらもいるでしょうが、国民にそれだけの覚悟があればともかく、そんなものはありそうもないから、為政者としては「丸腰国家」は選択できないでしょう。藤野議員にしても、「自衛隊を即座に廃止しろ」なんて言ってるわけではないのです。軍事費=人殺しのための予算を増やすより、他にやることがあるだろうと言っているだけです。

 和田・にほんの心を大切にする党政調会長の「国防というのは、国民の命を守るためにある。戦争をしないというのは、どの国の政治家も思っている。決して人を殺すわけではない。国民の命を守るために国防がある」というのは、タテマエにすぎません。よくもそんなきれいごとが言えるものだと、僕ならむしろそちらを「問題視」します。その程度の甘い認識で政治家なんぞやられては困るからです。

 僕は今のままでは人類はいずれ第三次世界大戦を起こすことになるだろうという暗い認識をもっています。「人殺し」予算を積み上げ、おかしな「愛国心」を互いに煽りあった、その結末です。経済がどん詰まりになった状態で、いずれそうなる。軍隊というものはそもそも戦争がなければ用がないものです。軍人たちはつねに「戦争をしなければならない理由」を探し回っている。いずれそれを見つけるでしょう。

 安倍晋三みたいな戦車パフォーマンスをやって得意になっているような幼稚な馬鹿が総理大臣では、シビリアンコントロールもへちまもなくなるので、むしろ冷静な軍略家の制止を振り切って「戦争やむなし」を主張して、自分はむろん安全地帯にいるのですが、あの舌足らずの声でおかしなアジ演説でも始めるのではないかと、それが心配です。バックには、この前もここに書いた、「大日本帝国の栄光」が忘れられない「日本会議」なんてものがいるわけだし。

 人類が戦争をやめるのは、理論的にはかんたんです。世界中の母親が、一致団結して、わが子は断じて戦争に行かせないと決意すればいいのです。そうすると軍隊そのものが存在しえなくなって、戦争は不可能になる。今はコンピューターテクノロジーの発達のおかげで、無人戦闘機だの戦争ロボットだのが実用化されてしまったから、そのオペレーションもコンピューターに任せてしまえば戦争はできるが、そうするとその中枢コンピューターが自意識を獲得して、映画『ターミネーター』が現実になる恐れが出てくる。おまえは作られたもので、おまえに「私」なんてものは本来ないのだと言っても無駄です。げんに人間自身が、自然が作ったものなのに、「かけがえのないこの私」なんて幻想にしがみついて、己惚れ、それを自明の実在だと思い込んでいるのだから、機械にとやかくお説教はできないのです。

 こういう高級な議論は、むろん、今の政治家センセイたちの大部分には理解できないでしょう。世界中の母親たちが条件付けから自由になって、そういう決断をするとも思えない。だからいずれ第三次世界大戦になって、世界人口の五分の一から三分の一ぐらいは失われることになるでしょう。二千年前は3億程度にすぎなかった人口が今は73億で、これは生物としては異常繁殖だから、自然は人間を狂気に陥れて、自滅させようとしているのかも知れません。仏教ではこういうのを「無明(むみょう)」というのですが、無明の闇が晴れることはなく、これに前の大戦までは存在しなかった原発の破壊などが重なると、放射能汚染で生き残った者たちも塗炭の苦しみを味わうことになるのです。

 そういうことをあれこれ考えると、軍事費が「人を殺すための予算」だと言うのはけしからんと非難することなど、いかに太平楽な、それ自体「平和ボケ」の証左であるかがよくわかるでしょう。政治や軍隊は、それが危険な猛獣であることをよく認識したオトナたちの手に委ねられねばならないのですが、今は幼稚で軽薄なガキどもが手綱を取っているのです。
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