アメリカほどひどくはないとしても、わが国も階級社会、格差社会になりつつある(すでになっている)と言われます。そのわかりやすい例の一つは、難関大学の合格者の多くを中高一貫の有名私立校が占めていることです。親が教育熱心で、その余裕もないのに無理してわが子を私立にやる場合もあるようですが、ふつうは私立の高い学費(そこに入れるための早くからの塾通いの費用――しばしば高額で、月10万を超えることもある――も含む)を負担できる家庭だからで、当然公立学校の親よりも平均年収はずっと高い。慶応の幼稚舎のように小学校から私立に行かせる場合にはさらに費用はかさむわけで、そういうところには当然ながら貧困家庭の子供なんてのは一人もいないわけです。早くから同質の子供集団の中で育つことになる。
そうすると、どういうことになるか? そこにはいわゆる「庶民家庭」の子はほとんどいないので、その生活ぶりを知ることもない。中上流といえば聞こえはいいが、どこかしらsnobbishな雰囲気を湛えた金持ち・小金持ち家庭の子供たちの集まりで、鼻持ちならない閉鎖性を備えた空間の中で育って、無意識に自分たちの「階級利益」を中心にしてしかものを考えられない人間になってしまう可能性がかなり高くなります。
それが有名大を出て、社会の行く末を決めるようなエリートとなる。必ずしも学歴エリートでなくても、たとえば安倍晋三を代表とするような二世三世議員の場合だと、エスカレーター進学の二流大卒でもエリートとして通用してしまうのですが、ともかく「下々の生活」を知らず、そうしたことには関心ももたないような同質集団――それがいわゆる「人脈」を形成してさらに強力となる――が社会を支配するようになるわけです。
むろん、庶民家庭出身の学歴エリートというのは今でもいるわけです。いてもらわないと困るが、彼らがそうした集団に取り込まれて自らの出自を裏切る可能性は、野心的な人間であればあるほど高くなる。それが官僚になってパワーゲームの味をしめたりすると、なおさらのことです。むしろそういう人間ほど、「成り上がり」の悲しさで、その集団に自己同一化すべく、よりいっそう「階級利益」に貢献しようと骨折ったりするのです。そしてそのうち、国政選挙に出て、政治家への転身を図ったりする(口先だけのきれいごとは山のように並べながら)。
こうしてエリートたちは「弱きを助け、強きを挫く」のではなく、「強きを助け、弱きを挫く」ようになる。今のアメリカ社会に露骨に見られるように。そんなものはもはやエリートでも何でもない、と言っても始まらない。それは社会が腐っていくときにつねに起こる、浅ましくも「普遍的」な現象なのです。
ちなみに、今のアメリカは学費が高騰して、もはや大学は貧しい若者が行けるところではなくなっています。日本とは逆に名門大(アイビー・リーグと通称される大学群)は全部が私立で、州立(公立)大の方が入りやすいのですが、その学費の高さにはちょっと驚かされる。次は「アメリカ田舎留学録」と題されたブログからの引用です。
アメリカでは、総合大学の学費は私立で年額35,000ドル~50,000ドル(1ドル120円換算で420万円から600万円)、州立でも少なくとも25,000ドル(同300万円、州内の場合は半額以下)と日本とは比べ物にならないほど高額です。また大学を4年で卒業するのが難しく、その分学費は余分にかかります。ランキングが高い大学では4年での卒業率は高いですが、中程度の大学になると4年卒業率が50%程度のところもあります。
これ、「年額」、つまり一年間の学費ですよ。だからトータルの費用は最低でもそれの四倍ということになる。日本のように医学部、法学部なんてものはなく、医学部の場合はこの後に四年制のメディカル・スクールが、法学部の場合は三年制のロー・スクールが追加される。全部合わせると一体いくらになるか……計算する気も起きません(これに対して、フランスやドイツでは驚くほど学費が安い)。
こうした大学進学にかかる費用を見ると、アメリカの中産階級は没落して貧困化しているというのに、民主主義もへったくれもあるかということになります。だから「階級分断社会」と呼ばれるまでになったのです。が、これは、それがあたかも「世界標準」であるかのごとく、アメリカの後追いばかりしている愚かなわが国の明日の姿でもあるでしょう。
とどめに、偶然Youtubeで見つけた秀作ドキュメントを一つご紹介しておきましょう(吹き替えなのがちょっと残念ですが)。これと長編ノンフィクション部門でアカデミー賞を受賞した『インサイド・ジョブ』を合わせて見れば、アメリカン・ドリームなるものがとうの昔にフィクションになってしまった、そして「1%対99%」という表現が誇張でも何でもない、今のアメリカの悲惨な姿がよくわかるでしょう。アメリカの正気と良心は、まだこういうものが作れる人がいるというところに示されているのですが。
大学受験生にもこれは役立ちますよ。なぜなら、入試英語には類似問題をテーマとした英文がすでにいくつも出ているからです。
・パーク・アベニュー 格差社会アメリカ FC2 Video
そうすると、どういうことになるか? そこにはいわゆる「庶民家庭」の子はほとんどいないので、その生活ぶりを知ることもない。中上流といえば聞こえはいいが、どこかしらsnobbishな雰囲気を湛えた金持ち・小金持ち家庭の子供たちの集まりで、鼻持ちならない閉鎖性を備えた空間の中で育って、無意識に自分たちの「階級利益」を中心にしてしかものを考えられない人間になってしまう可能性がかなり高くなります。
それが有名大を出て、社会の行く末を決めるようなエリートとなる。必ずしも学歴エリートでなくても、たとえば安倍晋三を代表とするような二世三世議員の場合だと、エスカレーター進学の二流大卒でもエリートとして通用してしまうのですが、ともかく「下々の生活」を知らず、そうしたことには関心ももたないような同質集団――それがいわゆる「人脈」を形成してさらに強力となる――が社会を支配するようになるわけです。
むろん、庶民家庭出身の学歴エリートというのは今でもいるわけです。いてもらわないと困るが、彼らがそうした集団に取り込まれて自らの出自を裏切る可能性は、野心的な人間であればあるほど高くなる。それが官僚になってパワーゲームの味をしめたりすると、なおさらのことです。むしろそういう人間ほど、「成り上がり」の悲しさで、その集団に自己同一化すべく、よりいっそう「階級利益」に貢献しようと骨折ったりするのです。そしてそのうち、国政選挙に出て、政治家への転身を図ったりする(口先だけのきれいごとは山のように並べながら)。
こうしてエリートたちは「弱きを助け、強きを挫く」のではなく、「強きを助け、弱きを挫く」ようになる。今のアメリカ社会に露骨に見られるように。そんなものはもはやエリートでも何でもない、と言っても始まらない。それは社会が腐っていくときにつねに起こる、浅ましくも「普遍的」な現象なのです。
ちなみに、今のアメリカは学費が高騰して、もはや大学は貧しい若者が行けるところではなくなっています。日本とは逆に名門大(アイビー・リーグと通称される大学群)は全部が私立で、州立(公立)大の方が入りやすいのですが、その学費の高さにはちょっと驚かされる。次は「アメリカ田舎留学録」と題されたブログからの引用です。
アメリカでは、総合大学の学費は私立で年額35,000ドル~50,000ドル(1ドル120円換算で420万円から600万円)、州立でも少なくとも25,000ドル(同300万円、州内の場合は半額以下)と日本とは比べ物にならないほど高額です。また大学を4年で卒業するのが難しく、その分学費は余分にかかります。ランキングが高い大学では4年での卒業率は高いですが、中程度の大学になると4年卒業率が50%程度のところもあります。
これ、「年額」、つまり一年間の学費ですよ。だからトータルの費用は最低でもそれの四倍ということになる。日本のように医学部、法学部なんてものはなく、医学部の場合はこの後に四年制のメディカル・スクールが、法学部の場合は三年制のロー・スクールが追加される。全部合わせると一体いくらになるか……計算する気も起きません(これに対して、フランスやドイツでは驚くほど学費が安い)。
こうした大学進学にかかる費用を見ると、アメリカの中産階級は没落して貧困化しているというのに、民主主義もへったくれもあるかということになります。だから「階級分断社会」と呼ばれるまでになったのです。が、これは、それがあたかも「世界標準」であるかのごとく、アメリカの後追いばかりしている愚かなわが国の明日の姿でもあるでしょう。
とどめに、偶然Youtubeで見つけた秀作ドキュメントを一つご紹介しておきましょう(吹き替えなのがちょっと残念ですが)。これと長編ノンフィクション部門でアカデミー賞を受賞した『インサイド・ジョブ』を合わせて見れば、アメリカン・ドリームなるものがとうの昔にフィクションになってしまった、そして「1%対99%」という表現が誇張でも何でもない、今のアメリカの悲惨な姿がよくわかるでしょう。アメリカの正気と良心は、まだこういうものが作れる人がいるというところに示されているのですが。
大学受験生にもこれは役立ちますよ。なぜなら、入試英語には類似問題をテーマとした英文がすでにいくつも出ているからです。
・パーク・アベニュー 格差社会アメリカ FC2 Video
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