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「最終的かつ不可逆的」

2015.12.29(13:03) 364

 拙速の印象は否めないものの、決着を急ぎたい双方の政権事情から、事務方の詰めも進んでいたらしく、まずはめでたい日韓合意となったようです。背後の傀儡師、アメリカも早速「歓迎の意」を表明したようですが、「最終的かつ不可逆的」という言葉は、「最終的」であれば当然「不可逆的」だとふつうは理解されるので、韓国側の「蒸し返し」を封じるためのずいぶん念の入った言葉だと、笑った人が少なくないでしょう。

 文書化はされなかったものの、共同記者会見を開いて世界にアピールしたので、政権が代わって「それは前の政権の単なる口約束なので、そんなものには縛られない」とのちの韓国政権が言ったとすれば、国際的信用を失う。その意味ではこれは「日本外交の勝利」です。

 問題は例の「挺対協」を代表とする韓国の反日団体(「慰安婦問題を政治利用してきた」というパク・ユハ教授の指摘は正しいと思います)で、昨日の日経新聞電子版の記事にはこうありました。

 韓国挺身(ていしん)隊問題対策協議会(挺対協)ら旧日本軍の元従軍慰安婦らを支援する6つの市民団体は28日、日韓合意を「被害者と国民の思いを裏切るものだ」と批判する見解を発表した。合意が慰安婦問題の不法性に触れていないと指摘し、今後も日本政府が法的責任を果たすよう求めていくとした。
 ソウルの日本大使館前にある慰安婦を象徴する少女像問題で韓国政府が解決へ努力するとした点にも「屈辱的だ」と強く反発。日本の要求を受け入れて妥結させたとして「恥ずかしく、失望させるものだ」と自国政府を酷評した。
 共同発表には強硬姿勢で知られる挺対協のほか、元慰安婦が共同生活する支援施設「ナヌムの家」などが加わった。


 これらの団体は、その「偏った主張」と「しつこさ」によって、日本の右翼だけでなく、一般国民の「嫌韓」感情を高めてきた元凶と言って差し支えないものですが、韓国世論がそれに今後どの程度の支持を与えるかによって事態は変わってくるでしょう。

 日本の場合も、右翼には不満が多いようで、産経には次のような記事が出ています。

 日本のこころを大切にする党の中山恭子代表は28日、慰安婦問題で日韓両政府が合意したことについて、「未来志向の日韓関係を目指して努力した」としつつ、「安倍外交の最大の汚点となると考えられ、大いなる失望を表明する」との談話を発表した。
 中山氏は、岸田文雄外相が日韓外相会談後の共同記者発表で「当時の軍の関与の下に」と発言したことについて「いかなる歴史的事実に基づいたものなのかを政府として明確にする必要がある」とし、在韓日本大使館前や米国などの慰安婦像の撤去についても「何ら確約がなされていない」と強調した。
 また、「この像のために、海外の日本人達、とくに子供達がいわれのないいじめに遭っている現状について、日本政府としては、どのような対応をしようとするのか明らかにすべきである」とも指摘。「種々の問題点を包含する内容」と疑問を呈し、「強く抗議する」とした。


 問題は、日韓両国のこの手の人たちの「妨害」を今後どれだけ排せるか、というところでしょう。安倍晋三は本来この中山氏と同じような考えの持ち主なので、自分が総理でなく、これを行ったのが民主党政権なら、似たような声明を出して非難したはずです。アメリカの意向と、支持率アップを狙ったパフォーマンスでしかないと僕は理解していますが、それは今後の彼自身の言動を縛ることになるので、その意味ではよかったと思います(彼に節操がないのは、何も今に始まったことではありません)。

 挺対協が同じ主張を繰り返しても、韓国世論がそれになびかず、日本でも中山氏のようなことを言う人がいても、それが世論の大きな支持を得ることがなければ、この問題は解決へと向かうでしょう。どちらも言っていることが極端で、過去の歴史的事実に即したものではないのだから、自覚のないトラブルメーカーなのです。

 朴槿恵大統領と安倍晋三は、これまでそれぞれのそうした団体の極端な見解に肩入れして、事態を悪化させてきた。これら日韓両国の「愛国者」たちは、だから「裏切られた」と思っても何ら不思議ではありません。一国の政治指導者ともあろう者が、そういうのに乗っかってわざわざ対立を煽るような言動を繰り返し、事態がこじれた挙句、共通のボス(米国)に命じられて「和解」劇を演じるというのは、マッチポンプそのもので、情けないことこの上なしですが。

 それにしても、政治家というのは一体どういう人種なのか? もう少し程度の高い人たちにやってもらいたいと、今さらながら思ってしまいます。それぞれの国民が選んだ大統領であり、総理なので、昔、自民党の某法務大臣が言ったように、「この程度の国民なら、この程度の政治家」ということになるのかも知れませんが。

 ともあれ、この問題、これを機に歴史問題全般についても相互の理解と歩み寄りが進んで、双方の硬直した「愛国イデオロギー」を超えたほんとの和解の地平に達することを期待したいものです。

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祝子川通信 Hourigawa Tsushin


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