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真似ても無駄?~東大理Ⅲ三兄弟母の子育て法について

2015.11.07.15:08

 先日ネットのニュースサイトを見ていたら、AERAのものだという、こういう記事に遭遇しました。日付は7月30日となっているので、何でかなと思いましたが、アクセスする人が多くて、その関係で今も出ているのでしょう。そのまま引用すると、

 奈良県に住む佐藤亮子さんは、3人の息子を灘中・灘高から東京大医学部(理科3類)に合格させ、高2の長女も、現在、東大理科3類を目指して勉強中だ。テレビは見せず、3歳までに1万冊の絵本を読み聞かせ、1万曲の歌を歌って聞かせた。東大入試の日は、宿泊したホテルから大学の門まで、息子たちに付き添った。「(総理の)SPは玄関までの数メートルをひとりで歩かせますか?」「それと同じです」。その他、長男を東大とイエール大学にダブル合格させた小成富貴子さんの体験談、塾選びや留学のプランニングなども交えて、超エリートたちの驚きの合格プログラムを徹底取材してみた。

 このあと、本文記事の「さわり」の箇所が無料で読めるようになっていて、

家ではテレビを見せません/東大やイエール大に子どもを合格させた母の哲学

 親ができることといえば、夜食を用意して「伴走」すること――。
 そんな受験の常識を覆す、「母主導」の合格体験記。

 勉強部屋はつくらずリビングに4人分の勉強机を並べて、3人の息子を灘中・高等学校から東京大学医学部(理科3類)に合格させた母がいる。奈良県に住む佐藤亮子さん。高2の長女(17)も現在、東大理3を目指して勉強中だ。
 子どもたちは決してガリ勉タイプではない。中学、高校では部活動も楽しんだ。だがその裏で亮子さんが物事に優先順位をつけ、とことん面倒を見た。家の手伝いも学校の準備も、一切させなかった。
 「家事の習得はいつでもできますが、勉強は頭の柔らかいうちのほうがより多く吸収できます。だから勉強する時間のほうを優先させてきました」
 テレビは見せず、3歳までに1万冊の絵本を読み聞かせ、1万曲の歌を歌って聞かせた。言語能力は思考力に直結するからだ。加えて亮子さんは、「小学校6年までの勉強が人生の根幹をなす」として、1歳から公文式教室に通わせて「国語と算数」を先取りし、4年生から「理科、社会」を補強するために受験塾の浜学園に通わせた。

◎筆圧改善で成績アップ
 初めから中学受験を目指していたわけではない。
 「灘中がどこにあるのかも知りませんでした。小学5年の子が夜10時に塾から帰宅するなんて遅すぎると思い、受験用の算数の講座はやめたらどうかと長男に言ったほどです。ところが息子は『やめたくない。楽しいんだ!』と興奮気味に言い、そこからわが家の本格的な中学受験が始まりました」
 何事も100%徹底するのが亮子さんの流儀だ。子どもたちには「テストでは必ず満点を目指して」と言ってきた。
 「90点でいいと思ったら、まず90点はとれない。50点か60点です。入試も通らないでしょう。できなかった10点部分が出題されたら、アウトです」
 個性の異なる4人の子どもたち一人ひとりの模試や宿題に目を通し、弱点を見つけ『具体的な解決法』を編み出したのも亮子さん。三男が灘中の算数の過去問で伸び悩んだとき、たどり着いたのは「筆圧」だった。
 「灘中の算数はスピードが要求されます。三男は筆圧が強く、書くスピードが遅かった。消しゴムで消した文字跡がケアレスミスを誘発してもいた。筆圧を矯正して、成績を上げました」
 子どもたちの毎日のスケジュール表も、大学入試まで亮子さんが作った。時間感覚を養い管理能力を育むため、家の時計は一つを除きすべて20分早めてある。これで遅刻もしない。一人ひとりにタイマーを与え、休憩時間も分単位で管理させた。

 東大入試の日は、宿泊した東京のホテルから大学の門まで息子たちに付き添った。「18歳の子に、親がそこまでするのか」という批判にはこう反論する。
 「子育ても仕事と一緒で、結果が大事。中途半端な感情をはさんではダメなんです。私の使命は、無事に試験会場に送り届けること。安倍総理のSPと一緒です。総理の車が自宅前に到着したあと、SPは玄関までの数メートルをひとりで歩かせますか? そこで事故にあったら? それと同じです」
 目的意識を持って徹底する。その先に、3人の息子の東大理3合格があった・・・


 何だか、すごいなあ、という感じですが、塾教師としての僕の結論を先に言わせてもらえば、こういうのは「子供本人の資質による」ので、元々この3人の息子さんたちは頭がよかったのでしょう。だから、あんまりおかしなことをやって潰してしまった場合は別として、こういうことをしなくても、東大の理Ⅲはともかく、理Ⅰ理Ⅱか、地方国立大の医学部ぐらいには入れていたのではないでしょうか。

「高2の長女も、現在、東大理科3類を目指して勉強中」とありますが、そんなにみんな医者になりたいのか、そのあたりも疑問に思うので、東大理Ⅲは別に医学に興味があるわけではないのに、「最難関」だからという理由だけで受験して合格した、モチベーションの低い学生が一定数いると聞いているので、子供がおかしな具合に「洗脳」されているのではないかという気もします。僕が子供の立場なら、正直こういう母親は勘弁してもらいたいなと思うでしょう。

 こういうのを読んで、「それでは私も…」と真似をする教育ママがたくさんいたとして、大方は失敗するでしょう。やり方もふつうではない。

 テレビは見せず、3歳までに1万冊の絵本を読み聞かせ、1万曲の歌を歌って聞かせた。言語能力は思考力に直結するからだ。加えて亮子さんは、「小学校6年までの勉強が人生の根幹をなす」として、1歳から公文式教室に通わせて「国語と算数」を先取りし、4年生から「理科、社会」を補強するために受験塾の浜学園に通わせた。

 家の手伝いも家事も一切させず、親がスケジュールを管理して、テストではつねに満点を目指させる…。たまたまよくできる子供たちだったからよかったものの、そうでなければ、子供の人格が歪んでしまうでしょう。「ガリ勉ではない」というが、小さい頃からそれだけやらせれば立派な「ガリ勉」ですよ。別によそ様の家庭教育の方針に難癖つける気はありませんが…。

 僕は昔、たいそうお勉強のよくできる子で、有名中学受験塾でもつねにトップクラスの成績を維持していたにもかかわらず、不幸にして難関私立中の入試には失敗してしまったという中1の女の子に会ったことがあります。母親と二人で塾の面接に現われて、確かにこの子は頭がよさそうだなという印象でしたが、三者面談の途中、脈絡もなく突然アハハと笑いだしたのにはびっくりさせられました。母親は何でもなさそうに、「この子は時々こんなふうに笑いだすんです」と言うのですが、こういうのは「空笑」といって、統合失調症の症状の一つだと言われているのです。僕の見るところ、これはそこまで重篤なものではなくて、長期にわたる強度の緊張、ストレス、諸々のために、神経的に参ってしまっているためではないかと感じられました。たぶんそのせいで受験にも失敗したのでしょう。それで、「この子は相当疲れているように見えるので、しばらくゆっくり休ませてあげて、一度お医者さんにも見てもらった方がいいのではありませんか?」とアドバイスしたのですが、整った端正な顔立ちのその少女の空笑の奥には、無理に無理を重ねてきた苦しみと痛みが見えるような気がして、かわいそうに思われました。神経的にも繊細な子に見えましたが、お母さんは教育熱心でも、そのあたりのことにはかなり鈍感なようでした。

 むろん、「三人の息子全員東大理Ⅲ合格」の記事のお母さんの場合、メンタル面への配慮も怠りなしで、だからうまくいったということもあるのでしょうが、繰り返しますが、こういうのは子供の素質が元から優れていた場合だけで、途中で無理がかかりすぎてそのマイナス面が露呈し、親の教育熱心がアダとなる、ということも少なくないのです。

 だからあんまり真似はしない方がいい。まあ、「3歳までに1万冊の絵本を読み聞かせ、1万曲の歌を歌って聞かせた」なんてのは、誰にでもできる芸当ではないし、音痴の母親の場合だと、それは子供への虐待以外の何ものでもなくなってしまうでしょう。

「ママ、もうヘンな歌はやめて!」
「何言ってるんですか! 1万曲歌わないと、あんたはトーダイには入れないんですからね! 忙しくて、3歳までには3千曲しか歌えなかったから、あんたが小学生になった今も、ママはこうして歌い続けてるんじゃありませんか。まだあと2千曲も残ってるのよ!」
「もうママの歌も、クモンも習い事もいやだよう。好きに外で遊びたい」
「お黙りなさい! いいこと? 『小学校6年までの勉強が人生の根幹をなす』んですからね。そんな気ままを言ってるとお馬鹿になって、泣く泣くワセダあたりに行く羽目になるのよ。それでもいいわけ?」
「ボクは大学なんて、どこでもいいよう。テレビも見たいし、遊びたいよう」

 …てなことになって、ふつうの家庭の場合だと、そうした計画は早い段階で瓦解することになってしまうので、その方がむしろ健康だと僕は思いますが、こういう記事や本を読むお母さんたちは、思わない人が多いのでしょうね。

 前にある出版社の編集者と話をしていて、たまたま「成功本」の話になったことがあります。意見を聞くと、「たしかにあれは出版社と著者だけは儲かりますが、あそこまではちょっと…という気がするものですから」という返事でした。ああいうのは効かない水虫の薬と似ていて、だから読者は「これでダメならあれ」というふうに、次から次へと買い続ける羽目になるのです。二人の見解が一致したのは、「成功する人間は成功本なんて読まない」ということで、これは事実そうでしょう。今はおよそその種の本とは無関係に見える、実生活においては相当悲惨だったニーチェのような「深刻すぎる」哲学者の言葉まで「成功本」仕様に仕立てられているのを見ると驚いてしまうのですが、中にはこの手のハウツー本を真に受けると、高望みさせられるだけで大方は確実に失敗するだろうな、と思えるものもあるのです。そうなると「成功本」というよりは「不幸本」です。誰が責任を取るのでしょうか?

 話を戻して、たしかに子育てや勉強の仕方にはうまいやり方とまずいやり方があるでしょう。それによって子供の未来は大きく変わってくる。それはたしかですが、それはかんたんに公式化できるようなものではありません。たとえば、僕は長年塾商売をやってきて、その子が日頃どういう頭の使い方をしているかは成績の伸びに大きく関係するということは言えると思うのですが、棒暗記にばかり頼ろうとする子に、理解を先行させる癖をつけさせようとしても、そういう子はそちらが苦手だから機械的暗記ですませようとするので、疑問をもってなぜ?と考えることが刺激的だとか、楽しいとは思えないのです。色々なことを結びつけて考えるのも、知的好奇心の強い子だと視野が広がって面白く感じるが、そうでない子にはそれも負担で、苦痛なのです。こういうところに目を向けろと教えて、「ああ、そうか」とピンと来るのは、それまでおかしな教師陣におかしな勉強の仕方を強いられていたから、本来の「気づき」が妨げられていたという子にかぎるので、それがなければ自分でわかったという子なのです(そういう子がかなり多いのも事実ですが)。

 そこらへん、やはり素質の問題は大きいなと感じさせられるので、子供の素質は様々なので、望ましい親の子育て法としてはやはり、「子供の素質を見抜いて、すぐれた面を伸ばしてやり、弱点は補強してあげる」という態度で臨むのが一番でしょう。親が勝手に青写真を描いて、やみくもに子供をそれに適合させようとすると失敗し、不幸な結果になることが多い。子育て本、教育本の類も、その一番基本的なことを踏まえて活用しないと、かえって害の方が大きくなるのです。結局のところ、一番大切なのは子供への愛情と相互のコミュニケーションで、それが子供の素質そのものを豊かにし、子供の自然な自己肯定感を高めるので、それにまさるものはないだろうと、僕には思えるのですが…。

 ちなみに、今年ニュートリノ研究でノーベル物理学賞を受賞した東大宇宙線研究所所長の梶田隆章教授は、埼玉大学(生まれ育ちも埼玉)の出身です。子供の頃から成績抜群で、「よく学び、よく遊ぶ」仲間にも好かれる少年で、志望していた京大には合格確実と見られていたが、入試前日風邪で高熱を発して、朦朧状態での受験となって失敗、二期校(今で言う後期)受験を余儀なくされ、埼玉大学に入学した。そこで生涯の伴侶となる奥さんとも出会ったそうで、この話を紹介した週刊新潮は「人生はどう転ぶかわからない」と締めくくっていますが、その通りなので、こういう話は目先の結果や運不運だけにあんまり一喜一憂しない方がよいという教訓になりそうです。
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