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総理のオツムの程度の「わかりやすい説明」

2015.07.22.18:43

 まずはニュースの引用から。

 民主党の細野豪志政調会長は21日午前の記者会見で、安倍晋三首相がフジテレビの番組で火災が起きた家屋の模型を使って集団的自衛権が行使できるケースを解説したことについて「例として非常に不適切だ。火事と自衛の問題はまったく性質が違う」と指摘した。
 また、「極めてとんちんかんで稚拙だ。これで国民の理解を得られると思っておられるのなら、国民をバカにしている」と批判した。(産経新聞)

 これに対し、菅義偉官房長官は会見で、「指摘は全く当たらない。極めて分かりやすかったという方を何人も聞いている」と反論。首相は今後もテレビを通じて国民に発信していく意向で、首相周辺は「オファーがあれば、いつでも受ける」としている。今月6日から計5回出演した自民党のインターネット番組をさらに活用することも検討している。(時事ドットコム)


 これ、こうした記事を見るより先に、Youtubeか何かに出ているだろうと、僕はその番組の録画を探して見ていました。

安倍首相緊急生出演

 何ともはや…という感じで、悲惨としか評しようのないものです。細野政調会長の指摘は全面的に正しい。菅官房長官は「極めて分かりやすかったという方を何人も聞いている(日本語がヘンだが、そのまま)」と反論したという話ですが、それはたとえをたとえとして受け取らず、文字通りに解釈してしまったというような人だけで、つまり、問題が全くわかっていない人に限られるでしょう。小学生でもこれがヘンだというのはわかる。あの「改憲マンガ」も悲惨なものでしたが、安倍自民は国民の知能指数を一体どのレベルに設定してこういうことをやっているのかなと思います。一言でいえば、「頭が悪いにもほどがある」のです。自分に合わせて人のそれを判断するなよ。

 お笑いネタとしては十分に使えます。この「炎上」を表わすらしい、綿菓子状の妙な赤茶色のモコモコといい、それを折り曲げて「延焼」を表現する仕草といい、意味不明の説明(とくにこの「アメリカ家」の「離れ」って、何を指してるわけ?)といい、どれをとっても不可解きわまりないものなので、一国の総理ともあろう者が、「わかりやすい説明」と称して、こんなアホな模型まで使って出鱈目な説明をするとは、もしもこれが世界にニュースとして配信されたら、国辱ものです。こんなもの、「説明」にも何にもなっていないのですが、この種のことを繰り返して「国民の理解が得られる」と本気で考えているのだとすれば、それはもう完全に終わっているということです。人口百人の僻地の村議会でもこれよりはレベルが上でしょう。全くもって、今の日本は恐ろしいことになっているようです。

 その愚劣さについてはあらためて説明する必要もないと思いますが、一つだけ指摘しておくと、「アメリカ家が火事になれば、他の同盟国(イギリス等)は消火に駆けつけるが、日本は憲法のせいで行けません」なんて説明をして、いかにも日本が情のない国のような言い方をするわけですが、戦争と火事が別物であることはもとより、「アメリカ家」が火炎に包まれるなどという事態は、要するにアメリカ本土が爆撃などの軍事攻撃を受けているということなので、第3次世界大戦でも起きないかぎり、「ありえない」事態です(テロ事件程度で他国の軍隊が「救援」に駆けつけることはない)。そうなったときは、他の同盟国も戦乱に巻き込まれているだろうから、よそに救援に行くどころの話ではなくなっているでしょう(戦争では、強い国を先に攻撃するなんてことは通常ありえないので)。

 同様に、「離れ」というのは一体何なのか? それが別の国なら「○○家」ということになるだろうし、それは昔日本がハワイの真珠湾攻撃をしたような「事態」なのか? 何を言いたいのかさっぱりわからないので、「たとえ」にすらなっていないのです。

 ここまで下らないと、論破することもかえって困難です。理性的・論理的な議論などというものは、この種の人たち相手にはできないからです。この番組、全体に愚劣で、冒頭に出てくる「わからない」という「国民の声」の紹介について、「一般の声に使う例があまりにもひどすぎる。法案の存在すら知らないような声を国民の声として出すなよ」という怒りのコメントが下に出ていて、全く同感ですが、ここまで無知なパッパラパーは、うちの塾の高校生にすら一人もいませんよ。フジテレビの番組というのは、この程度の人たちだけ相手にしてるのですか? それとも、鋭い批判を口にするような人たちの声を集めると、「偏った意見だ!」と安倍がまたブチ切れるので、わざとこういうのばかりにした?

 僕は我慢してこの録画をしまいまで見てみましたが、内容があるのは最後の8分強だけです。だから、アホらしい話にはつきあえないという読者は、時間の目盛りを1時間02分に合わせて、そこから先だけご覧ください。ここでの津田大介氏とやくみつる氏の問いは、いずれもこれまで指摘されてきた点ですが、安倍にとっては痛い、的を射た質問です。

 他に、僕が「いい質問だな」と思ったのは、50分あたりに出てくる、産経新聞論説委員の久保田るり子氏の質問です。氏は「すでにある周辺事態法や領海警備法では不十分で、どうしてこの安保法案が今新たに必要なのか、その理由をご説明いただきたい」という趣旨の発言をしているのです(これは安倍御用新聞の産経にも人はいるのだな、ということを印象づける質問です)。

 むろん、安倍はそのいずれにも答えていません。相手の質問の意味がわかっているのかどうかすら疑わしいので、これでは国会審議で「問題の理解が深まらない」のも道理です。かんじんな論点に差しかかると、きまってスルーしてしまうのですから。

 安倍のズレた応答を見てわかるのは、「アメリカさんに日本を守ってもらうためには、アメリカさんの要請に従い、アメリカさんが気を悪くしないように、アメリカが行う戦争の是非善悪は問わず、どこにでも飛んで行って、後方支援という名の下働き、または代理の下請けを進んでやるしかない」と言いたいのだな、ということだけです(それに「わが国の存立危機事態」などという無理なこじつけをするものだから、わけのわからないことになる)。かつて小泉元総理は自衛隊のイラク派兵のとき、「アメリカは日本への攻撃は自国への攻撃とみなすと言ってくれている。他にそんなこと言ってくれる国がありますか!」とトレードマークのライオン髪を逆立てて叫んでいましたが、本気でそんなこと信じているのかと、僕はその国際政治認識に呆れました(そもそも、仲間だから悪事にも進んで加担すべし、というのではヤンキーの理屈以下なのですが)。安倍も日米軍事同盟による中国との対峙・対決をイメージしているのでしょうが、アホか、と言いたくなるような国際政治認識です(これ、説明が必要ですか?)。

 僕は前回、日本のイラク戦争支持、奥大使・井ノ上書記官殉職、自衛隊イラク派兵の“戦犯”岡本行夫について疑問を呈しましたが、安倍がテレビに出たとき、ゲストやコメンテーターの人たちにぜひ質問してもらいたいのは、あの自衛隊のイラク派兵を、安倍はどう考えているのか、ということです。安倍はこの番組でも「イラクや、アフガン、ベトナム戦争のようなものに自衛隊を派遣することは決してない」と言っていますが、同時に、イラク戦争肩入れの張本人である岡本を指名して、公聴会で安保法案擁護の弁論をぶってもらっているのです。

 要するに、このサギ男の頭の中は支離滅裂で、こういうのが仮に教師をやっていれば、生徒の頭の中はぐちゃぐちゃになって、進歩は全然期待できなくなります。教わる方まで頭が悪くなってしまう。彼が国民相手にこの種の説明を繰り返すのはそれと同じで、それは公害と同じなのです。

 安倍の言うことがいかに出鱈目か、もうひとつ例を示しておきましょう。安倍は今なお「(安保法案は)合憲と確信している」と言い張っています。この番組でも懲りずにあの「砂川判決」を持ち出し、津田氏に「それは集団的自衛権容認の根拠にはなりえないのではありませんか?(これは今や常識です)」と言われてごまかす羽目になっているのですが、同時に他方では、「憲法学者の六割は自衛隊も違憲だと言っている」、だから自衛隊を受け入れている国民世論とは憲法学者たちはズレているので、そんな現実離れのした連中の言うことは聞く必要がないとほのめかすのです。

 こういうのをご都合主義と言います。安保法案を正当化するためにその「合憲性」を主張しながら、他方では憲法学者の解釈など取るに足りないという。安倍が「後継者」に指名するつもりらしいという子分の稲田朋美は最高裁を「憲法解釈の最高権威」だと言っているそうで、だから、度重なる憲法学者たちの指摘で「使えない」とわかった砂川判決を彼はまだ振りかざしているわけですが、問題が強い政治性を帯びてくると「統治行為論」で判断回避する最高裁のありようは、時の権力におもねりすぎるところがあって、学問的には「最高権威」などではありませんが、そういったことはともかく、自己正当化に好都合と見れば、憲法を利用し、不都合と見れば「憲法の他に考慮すべき重大なことがある」と言って、それをないがしろにする。そこには論理的整合性などというものは全くないのです。要するに、彼にとって憲法とはただの「道具」にすぎないのです。

 彼の悪質なところは、「今でも憲法学者の六割は自衛隊を違憲としている」などと言って、卑劣なやり方でその「権威」をおとしめようとしていることです。自衛隊は憲法の文字面からすれば違憲だと、僕も思います。しかし、実質的に、「文字面からすれば違憲だが、今の自衛隊のありようなら許容する」という一応のコンセンサスが国民の間にできていて、憲法学者たちもそれは承知しているから、「自衛隊廃絶運動」のようなものは起きていないのです。一部にはこれは苦しいこじつけだから、憲法改正して実態に適合するよう、憲法の条文をより明確なものに改めるべきだと言う人たちもいるのですが、話が長くなるので、それについては措きます。安保法案に対する今回の憲法学者たちの猛烈な反対は、それが従来の、一定の明確な歯止めを設けている九条の政府解釈を反故にして、「アメリカに追随して他国の戦争にも首を突っ込める」ものにするものだという点に対してなのです。明らかにレベルの違う話なのに、安倍はそこを故意にごっちゃにして、憲法学者たちの信用を損ねようとしているのです。

 こうした姑息さは、民主的な手続きによらず重要機関の長などに「お友達」を次々送り込んで(これは本来禁じ手です)、それを「翼賛機関」にし、事実上の独裁体制をつくろうとする彼ならではのもので、非常にタチが悪い。僕は前から何度も彼は「妄想の政治家」だと言っていますが、彼にとってはその「妄想」が絶対であり、「正義」なので、他はその妄想実現のためのダシ、道具にすぎないのです。三権分立も、立憲主義も、組織の独立性もクソもない。ここらへん、彼はほんとにあのアドルフ・ヒトラーとよく似ています(その「妄想」の中身がどこかからの借り物で、愚劣なのも同じです)。

 幸いなことに、今の日本はヒトラー登場時のドイツ社会ほどにはまだ焼きが回っていない。安倍政権の面々は頭があまりよろしくないことから(それを「反知性主義」と評する向きもありますが)、いたるところで論理的支離滅裂に陥って、馬脚をあらわす羽目になっているのです。それでもまだ政権支持率が30%台もあるというのは僕には驚きですが、この流れはカネのかかりすぎる新国立競技場見直しパフォーマンスなどによっては挽回できないものなので、諦めなければ自滅に追い込むこともできるかと、僕もほんとは他にすることがあるのですが、せっせとこんなものを書いているのです。

 あの「火事模型」、安倍はあちこちのテレビ局に持ち込んで、今後も幾度となく「わかりやすい」説明をしていただきたいものです。それは安保法制ではなく、彼のオツムの支離滅裂さの「わかりやすい説明」にはなるから、支持率をさらに下げるのに役立つでしょう。

 それにしても、ここまで程度の低い政治家が総理になり、「独裁」に近い権力を握って、国家のありようを決定的に変える“壊憲”法案を強行採決で通す、というのは、数年前までは予想できなかったことです。前にも「未曾有」が読めないというので有名になった、マンガ『ゴルゴ13』で「国際政治を勉強」なさっているという素晴らしい自民党の総理(安倍の大事な「お友達」の一人で、内閣の一員)がいましたが、その彼でもこれほどトンチンカンかつ無謀なことはしようとしなかった。恐ろしい時代になったもので、仮に主要国の政治リーダーが同レベルの人間ばかりになれば、第3次世界大戦も現実味を帯びてくるでしょう。僕らはそろそろ真面目にその心配をした方がいいかもしれません。
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