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塾も予備校もいらなくなる?

2014.09.05.07:18

 駿台、河合塾と並んでかつては三大予備校の一つに数えられた代々木ゼミナールが全国27校のうち20校を閉鎖する(全国模試やセンターリサーチも廃止)というニュースは、けっこう大きな話題になったようです。

 しかし、これは大手だったから目立つだけで、中小の予備校はすでに多くが淘汰されて消えている(前に研数学館のそれがニュースになったことがありました)ので、他の二つに難関大の合格実績で大きく水を開けられた代ゼミがこうなるのは、ある意味「時間の問題」だったわけです。

 それに、代ゼミは別に潰れるわけではない。財務状況は悪くないそうだし、前に買収したSAPIX(難関中学受験で有名)は好調らしいから、これは儲からない部門は思いきって削減する“前向き”のリストラと解することもできるでしょう(そもそも校舎を増やしすぎていたのです)。自社ビルをホテルに改装して、そちらに事業展開するのではないか、といった憶測もあるようですが、何にせよ校舎の閉鎖イコール倒産、というのとはだいぶ趣が違って、それほど悲壮感はなさそうです。

 正直、もう予備校の時代ではないと思います。少子化に加えて浪人生が激減(その減り具合はすさまじいので、この20年で昔の2割以下になってしまった!)したことで、大手といえども、浪人生主体の経営ではどこももう立ち行かなくなっているからです。だから現役高校生を多く取り込まねばならないが、高校生では一人当たりの単価はずっと小さいし、それも過当競争に陥っているので、代ゼミが規模を大幅縮小したからといって、他が楽になるということはあまりないでしょう。

 むろん、大手予備校ではなく、小規模な塾が有利な時代になったとか、そんな話では全然ないので、塾なんかはもっとヤバいのです。僕は延岡で高校生対象の英語だけの塾(サービスで小論文指導は行なう)を11年間やってきて、毎年高3生が入試が終わってどっと抜けるたびに、当然しばらくは商売にならないので、「もうそろそろ店じまいかな?」と思うのですが、そのうちまたコマが埋まり始めて…ということで、結果的に続いてきただけなのです。田舎の零細塾にしては合格実績はかなりいいのですが、それは近くに大手予備校がなくて、優秀層を全部そっちにもっていかれることがないので、旧帝大レベルに合格できそうな元々が高い潜在能力をもつ生徒もその中にかなり混じっているからです。そういう生徒は、学校では身につかない二次学力がつくよう鍛えれば、大方は狙い通りのところに合格する(それも早めに来てくれないと間に合わないのですが)。それは予備校でも同じだと思いますが、この商売は半ば以上「元々の素質のよい生徒をつかまえれば勝ち」なのです。生徒次第なので、合格実績がよくても、別に塾の手柄ではない(逆に能力の高い生徒を集めて、それでも結果がひどければ、それは教える側の無能のせいだということになるでしょう)。

 しかし、こういうのも「何とか食えればいい」ということで、細々とやってきたから続いただけの話で、最近は強力なライバルが出現しています。それは大手予備校でも地域の他の塾でもなくて、インターネットを使ったオンライン予備校です。僕がその存在を知ったのは、息子が去年「受験サプリ」という名のそれを利用していたからで、「なかなか使える」のだという。料金も恐ろしく安いので、月に千円足らずでそれが利用できるのです。むろん、その中の講座をテキストを取り寄せて本格的にやるとなると、テキスト代などは別途かかるようですが、それも高が知れたものです。予備校よりはるかに安いのはもちろん、塾と較べてもずっと安い。講師も一流どころを揃え、科目も多くを扱っているということになると、塾もふつうの予備校もいらなくなってしまうのです(時間も、完全に自分の都合に合わせられる)。

 これは受験業界の「価格破壊」です。彼はそれを必要に応じてあちこちつまみ食いしていたようですが、日本史を一から独学でやらねばならなくなったときは、それをここの日本史講座に頼って、三ヶ月でマスターする計画を立てて、そのとおりにやったのです(何でそんな面倒なことになったのかというと、私立から国立に志望替えしたとき、地歴2科目が必要になったのですが、学校ではそれが一つしか選択できないというおかしなカリキュラムになっていたからです)。授業や解説なしのテキストだけの完全な独習では、それはかなり難しかったでしょう。そのあたり、「受験サプリ」サマサマだったのです。

 僕は彼の話を聞いて、「ずいぶん便利なものができたな」と感心したのですが、こういうのは少なくとも「自分で勝手に勉強する」タイプの生徒には強力な援軍で、これと良質な通信添削などを組み合わせれば、塾も予備校もいらなくなるでしょう。少子化で受験生人口が減っている上に、こういうのまで出現すると、下手な学校の授業(失礼!)がいらないのはもちろん、従来タイプの塾・予備校も無用化するのです。

 僕はむろん、英語は高1のときから直接自分で教えていて、本人も長文読解や英作文は父親の塾だけで足りると思っていたようですが、それだってその気になればそちらで何とかできたでしょう。そう考えると、これは商売上大きな脅威であるのは間違いないのです。

 これは時代の流れです。僕が肉体労働専門の“さすらいの出稼ぎ人”生活に疲れて20代末にこの業界に入った頃は、ちょうど第二次ベビーブーム世代(1971~74年生まれ)の子たちが高校受験に差しかかる前で、当時塾は儲かる商売でした。部活明けの夏期講習の頃など、入塾希望者の面談をさばくのが大変で、ある年、二つの教室の室長を兼務しなければならなくなったときなど、一週間で2教室分の入塾面接をこなすことはどうやっても不可能だと途方に暮れたことがあったくらいで、今から思えばぜいたくな悩みだったのですが、今はそれとは全く逆のトレンドの中にいるのです。それにインターネットの普及がさらに追い討ちをかけている。

 すぐには塾も予備校もなくならないから、しばらくは縮小するパイをめぐっての熾烈なシェア争い、生徒の争奪戦が続くのでしょう。すでに予備校は模試やセンターリサーチの結果を元に、優秀な生徒には割引特典のDMを送って、生徒獲得に必死になっています。そのダンピングも半端ではないので、授業料全額無料から、75%、50%カットと、生徒の成績に応じて値引き額も異なる(また“格”の低いところほど割引の度合いが大きくなる)のです。これは入試シーズンがまだ終わらないうちから始まっているので、「もし残念な結果になっていたら」うちに来ませんか、ということで、優秀な浪人候補生(多くは合格しているとしても)の勧誘合戦が繰り広げられているのです。「浪人の沙汰も成績次第」なのだなと、僕は生徒たちから話を聞いて苦笑したのですが、それくらいシビアなものになっていて、これは行き着く先は消耗戦なので、経営体力のないところから倒されてゆくことになるでしょう(ダンピングをしても優秀層を確保したいのは、先にも述べたように、生徒の地力が受験においては大きくモノを言うので、そうしないと有名難関大学の十分な合格実績が出せなくなってしまうからです)。

 当然、浪人生相手だけでは商売にならなくなった大手予備校は現役高校生、さらには中学生、小学生と、囲い込みの手を伸ばし続けているので、塾がその影響を受けないわけはない。おまけに、オンライン予備校、オンライン塾が次々出てくるということになると、大手スーパーやインターネットを利用した通信販売に地域の個人商店がやれてしまったのと同じ図式になって、多くの塾が廃業に追い込まれることになるでしょう。

 競争意欲皆無、広告ゼロのわが零細塾が存続できるのはいつまでなのか…。いよいよこれは秒読み段階に入ってきたなと思う、きょうこのごろなのです(そのうちこのブログに、「インターネット霊能人生相談」の開業広告でも出す羽目になるかも知れません。どなたか、手頃な価格の水晶玉を売っているところをご存じの方はいませんか?)。
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