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安倍「おともだち人事」の行き着く先

2014.02.07.15:20

 さっきネットのニュースサイトで「安倍晋三首相が2月5日に行われた参院予算委員会で「『安倍政権打倒は朝日の社是である』と(聞いている)」と話す一幕があった」(JCASTニュース)という記事を見つけて、思わず笑ってしまいました。むろん、朝日新聞側はそれをきっぱり否定しているという話ですが、僕の場合は「安倍政権打倒は個人是」なので、よくお見知りおき下さい。

 なぜって、こんなしよーもない、アブナイ奴をのさばらせておくと、ロクなことにはならないだろうと思うからです。彼は余裕で皮肉まじりそう言ったということですが、いい気になられては困るので、この先日本の国際的孤立を招いて“戦前回帰”することになっても、彼はそれに対する責任は取れないでしょう。野党とマスコミの無能に助けられているだけなのだということを忘れるなよ。

 さて、本題です。NHK新会長の「不適切」発言に続いて、今度はそれを会長に選出した経営委員にも問題が出て、ややこしいことになっているという話なので、それについて書きます。

 一人は長谷川三千子氏(埼玉大名誉教授)で、「就任前、朝日新聞社で1993年に拳銃自殺した右翼団体元幹部を礼賛する追悼文を発表していたことが明らかになった」とのこと。
 一体それはどういうものだったのか? 朝日新聞デジタルに「長谷川三千子氏の追悼文全文」というのが出ているので、それを引用すると、

【神にささげるお供へもののほとんどすべては、人間がもらつても嬉(うれ)しいものばかりである。上等の御神酒(おみき)は言ふに及ばず、海山の幸やお菓子の類……。或(あ)るとき神社の奉納のお祭りをごく真近(まぢか)で拝見する機会があつたとき、ちやうどお昼を食べそこねて空腹で、目の前を運ばれゆくお供物に思はず腹が鳴つて恥ずかしかつた記憶がある。あゝ、さぞや神さまも美味(おい)しく召上るだらうなあ、と思つたものである。
 しかし神にささげることはできても、人間に供することは決してできないものがある。自らの命である。よく陳腐な口説き文句に「君のためには命をささげる」などといふセリフがあるが、言ふ者も聞く者も、そんなセリフを文字通りに信じはしない。もしも本当にさう言つて、女の前で割腹自殺する男がゐたら、(よほどの毒婦でないかぎり)喜ぶ女はゐないであらう。下手をしたら、精神的打撃をかうむつたと言つて遺族に賠償を請求するかも知れない。人間は、人の死をささげられても、受け取ることができないのである。
 人間が自らの死をささげることができるのは、神に対してのみである。そして、もしもそれが本当に正しくささげられれば、それ以上の奉納はありえない。それは絶対の祭りとも言ふべきものである。
 野村秋介氏が二十年前、朝日新聞東京本社で自裁をとげたとき、彼は決して朝日新聞のために死んだりしたのではなかつた。彼らほど、人の死を受け取る資格に欠けた人々はゐない。人間が自らの命をもつて神と対話することができるなどといふことを露ほども信じてゐない連中の目の前で、野村秋介は神にその死をささげたのである。
 「すめらみこと いやさか」と彼が三回唱えたとき、彼がそこに呼び出したのは、日本の神々の遠い子孫であられると同時に、自らも現御神(あきつみかみ)であられる天皇陛下であつた。そしてそのとき、たとへその一瞬のことではあれ、わが国の今上陛下は(「人間宣言」が何と言はうと、日本国憲法が何と言はうと)ふたたび現御神となられたのである。
 野村秋介氏の死を追悼することの意味はそこにある。と私は思ふ。そして、それ以外のところにはない、と思つてゐる。(仮名遣いは原文のまま)】

 うーむ。安倍晋三が変えたがっている日本国憲法には「思想信条の自由」やその発表の自由も含まれているので、そのことについてとやかく言う気は僕にはありませんが、こういうのは2.26事件の青年将校や、割腹自殺を遂げた三島由紀夫などとも通底するメンタリティで、「わが国の今上陛下は(「人間宣言」が何と言はうと、日本国憲法が何と言はうと)ふたたび現御神となられたのである」という最後の一文からもわかるように、今の「日本国民統合の象徴としての天皇」では満足できなくて、「ふたたび現御神となられ」んことを希求するかなりfanaticな御仁だと判断する他はないでしょう(「現御神であられる天皇陛下」のために戦場に赴いて「自らの死をささげ」るのが何よりの光栄である、というのが戦前戦中の教育だったことは言うまでもありませんが、こういう思想には、誰にもまして昭和天皇や今の天皇陛下ご自身が強い不快を示されるでしょう)。

 この人は、ウィキペディアによれば、「男女共同参画社会に批判的で『女性が家で子を産み育て男性が妻と子を養うのが合理的』と主張している。また、女性に社会進出を促す男女雇用機会均等法の思想は個人の生き方への干渉だと批判し、政府に対し『誤りを反省して方向を転ずべき』と求めている」のだそうで、ウィキペディアにはときに中傷目的でとんでもない嘘が書かれていることがあるとしても、これはそうではなさそうで、他にも同趣旨の記事が多く見つかることから、並の右翼では対抗できないほどの“復古”思想の持主だと察せられます(ご自分は大学に勤めながら出産し、子育てもしたそうですが)。

 「5日午前の記者会見で矢面に立たされた菅義偉官房長官は、長谷川氏を起用した理由を『わが国を代表する哲学者、評論家として活躍し、わが国の文化にも精通している』と繰り返し、文書については『承知していなかった』と論評を避けた」(毎日新聞)とのことですが、僕は哲学や思想方面にはそう疎い方ではないつもりですが、長谷川氏が「わが国を代表する哲学者、評論家」だという話は初めて聞きました。それはごく一部の「右翼論壇」においてのみの話なのではありませんか?(ついでに言うと、僕は野村秋介の名は知っていて、その手記を読んだこともあります。物好きなもので、あまり人が読まないものも読んでいたりするのです。)

 もう一人、問題となっているNHK経営委員は、最近本屋に行くとその小説が平積みになっている売れっ子作家の百田尚樹氏です。僕はよく塾の生徒たちに、「君らが学校の朝夕課外や宿題、部活で忙しいのはよくわかるが、少しは本も読みなよ」と言っているのですが、そういうあまり本を読まない高校生でも『永遠の0』は読んで感動しました、なんて言ってるぐらいだから、若い読者もたくさんいるのです。ベストセラー小説の類はほとんど読まない僕はその作者のことも全く知らなかったのですが、この前の衆院選の選挙速報のとき、民放のゲストの一人にこの人が入っていて、「何?」と思うような「右翼発言」を連発し、周りの人たちはだいぶ引いていたので、「こういう人物の書く小説が売れているのか?」と少し心配になってしまいました。

 氏の「歴史認識」なるものはネトウヨレベルを超えるものではありませんが、その「思想・信条」に忠実に、彼は都知事選で元航空幕僚長の田母神俊雄氏を応援し、街頭演説でネトウヨならではの珍説をぶち、ついでに「他の主要候補を『人間のくずみたいなもの』と批判した」というので、物議をかもすことになったのです。

 「南京大虐殺はなかった」という右翼の強引な議論を、僕らは何度聞かされたことでしょう。彼は、しかし、まだやっているのです。なるほど、「30万人」というのは中国側の誇張でしょう。けれども、「虐殺」の事実はあったと見るのが大方の歴史家の見方で、僕も昔関連書を何冊か読んだことがありますが、それは「事実無根のでっちあげ」と強弁するには無理なだけの証拠が示されているのです。相手の言うことに誇張や嘘が混じっていたから、全体が虚偽のでっちあげだということには必ずしもならないので、まともな研究者なら、そういう感情的な極論に陥ることはないでしょう。

 彼はまた、「米軍による東京大空襲や原爆投下を『大虐殺だった』とした上で『東京裁判はそれをごまかすための裁判だった』と主張」(これはスポニチ)しているという話ですが、一体どういう論理構造になっているのか、首をひねらざるを得ません。

 「大虐殺」は空襲や原爆投下にかぎったことではない、戦争そのものがそうなのです。しかし、人類はそれを「やむを得ないこと」として、長く不問に付してきた。戦争(全面戦争)で無差別爆撃したり、敵兵を大量殺戮したりすることは「ふつう」に行われてきたのです。

 「東京裁判はそれをごまかすための裁判だった」と言うからには、東京裁判当時、アメリカが東京大空襲(絨毯爆撃の被害に遭ったのは東京だけではありませんが)や原爆投下に深い罪悪感を抱いていた、ということになりますが、そんな話はどこからも聞いたことがないので、常識的に考えても、アメリカ人がそこまでナイーブだったとは信じられません。彼らは日本軍の蛮行とそれを支持した国家の悪を暴き、その責任者を見つけて処罰しようという意図で軍事裁判を行なったので、自らの「正義」を疑うことはほとんどなかったのではないでしょうか。要するに、空襲や原爆投下にひそかに強いうしろめたさを感じていて、それをごまかすためにあれをやったとは考えられないということです(「神がかり的な愚劣な迷信で凝り固まったジャップを叩きのめした」という快感に酔っていたという面はあるかも知れませんが)。

 こういう珍説は今の極右論壇でははやりなのかも知れませんが、どう見ても正気な人間を納得させるだけの説得力はない。長谷川氏の文章と同じで、ファナティックとしか評しようのない暴論です。よりによって何でそんなおかしな人たちがNHKの経営委員なんかになったのか?

 これは安倍総理お得意の「おともだち人事」の一環のようです。「2人はともに保守系論者で、安倍晋三首相の再登板を求める民間有志の発起人を務めた。昨年11月にそろって委員に起用されたのは、安倍氏の後押しがあったからだとされる」(北海道新聞)ので、いわば「ごほうび人事」なのです。公共機関の私物化と批判されても致し方はない。

 こういう人事によって安倍の本性(彼は見た目がいかにもお坊ちゃま然としているので得をしている)が露骨に出るのはわかりやすくてよいという面もありますが、国際政治の観点から見て、その害悪ははかり知れない。百田氏の暴論はさっそく中国にも伝えられ、すぐに非難声明のようなものが出されたし、長谷川氏のそれにしても、戦前の国家神道丸出しのそれは言説なのだから、彼の「靖国参拝」も、これらの文脈の中で解釈されるでしょう。集団的自衛権云々も、秘密保護法も、「戦前回帰」の下心あってのものだと解釈されるので、げんに日本人である僕ですらそう見て警戒感を強めているのです。人は「おともだち」によって解釈されるので、申し訳のように「不戦の誓い」などと言ってみても、そんなもの、何の説得力もないわけです。

 中国も韓国も、今は深刻な「お家の事情」を抱えていて、指導者は国民の不満のマグマの蓄積に神経をとがらせています。そこでこういう、やたら相手国の国民感情を悪く刺激するようなことばかりやっていては、彼らも強硬姿勢を募らせることしかできなくなる。あるいは、好戦的な指導者の場合には、その姿勢に対する国民の共感が増えて、外から“間接支援”をすることになってしまうのです。

 やることが政治家とは思えないほど稚拙です。先の中国の防空識別圏の設置に対しては、アメリカのみならずヨーロッパからも非難の声が聞かれました。しかし、その後の首相靖国参拝によって、アメリカは異例の「失望」を表明し、あの話なんかはどこかへ消し飛んでしまったかっこうです。中国の指導部は、「うまいタイミングでやらかしてくれた」とひそかにほくそ笑んでいるのではないでしょうか。

 韓国の朴大統領の「言いつけ外交」にしてもそうです。当初予想された「親日」どころではない彼女の頑固な「反日」ぶりには僕のような者ですら驚きましたが、それを刺激するような言動ばかり目立つ安倍政権とそのおともだち連合のやり方は、事態を悪化させるばかりです。こちらがそういうことをしなければ、相手の「日本には先の戦争に対する反省が全くない」というしつこい論難は、次第に浮いたものになって、海外での説得力を失うでしょう。しかし、「それ見たことか」と言われるような失言ばかりこちらが重ねていれば、状況は相手に有利になるのです(従軍慰安婦問題に関しては、軍の直接関与があったかどうかというような問題は、右翼が言うほど決定的な問題ではないので、とにかくそれは存在したということです。他の国にあったかどうかというようなことも重要事ではない。「しかし…」と言いながら、そういうことでしつこくゴチャゴチャ言うから、「いまだに日本人にはその非人道性を正当化しようとする傾向が濃厚にある」ということになって反発を買うのです)。

 安倍晋三の真の狙いは、あるいはそこにあるのかも知れません(彼はそこまで物事を深く考えられるタイプではなさそうですが、無意識のものとして)。アメリカも(こんなに尽くしているのに!)味方はしてくれない。中韓はいわれない非難を日本に向けている。孤立の不安とないまぜになったおかしな国家主義的なプライドから、思想統制と軍事力の強化という方向に向かい、世界経済がどん詰まりになって二進も三進も行かなくなったところで、何か些細なことがきっかけで戦争に突入(学校での「愛国教育」よろしきを得て、若者はそれを歓呼の声で迎える)。そういうシナリオも全くの絵空事ではないだろうと僕は思っています。

 安倍内閣はアベノミクスとやらの効果がゼロということにでもならないかぎり、当分安泰でしょう。原発も再稼動になり、フクイチ事故など存在しなかったかのように事は進んで行く(それは赤字国債増発の口実に使われるのみ)。「おともだち人事」はさらに多方面にわたって、思想統制が見えないかたちで進んで行くのです。そこに大地震なり、国債の大暴落(国内で9割を消化しているから安心と言う向きもありますが、逆にだから健全な歯止め機能が働かないのです)なりが襲いかかる。

 オルダス・ハクスレーにならって、その後の日本社会の有様をシュミレーションして『新・すばらしき新世界』と題した小説でも書いてみましょうかね。百田氏のようにフィクションの才能があればそうするのですが、残念ながら僕にはそのようなものはなさそうです。

 ちなみに安倍総理、「不偏不党」どころか「偏りまくり」という批判をかわすために、僕もNHK経営委員に推薦してくれませんか? 逆の人間を入れてバランスを取るのです。
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