シリアスな後期オヤジ(後期高齢者に準じてこう称している)である僕は、ふだんこの手の話題には見向きもしないのですが、殺伐たる世相を和らげるものとして、いわゆる「ゆるキャラ」なるものには一定の理解を示しています。
先頃は、お隣り熊本県の「くまモン」が天皇皇后両陛下にお目通りし、あまつさえ皇后様から「くまモンはお一人なの?」という慈愛に満ちた有難いお言葉まで賜ったとか。昔、初めてパンダが上野動物園にお目見えして大騒ぎになったとき、VIPというのはVery Important Pandaの略なのではないかと言われましたが、今や「ゆるキャラ」といえども、くまモンほどの人気者ともなれば、そこらのオヤジなんかとは比べものにならないほどの社会的重要性をもつのです。
去年、うちの塾にも熱烈な「くまモン」ファンの女子生徒がいました。下敷きやファイル、筆箱まで全部「くまモン」で統一されているのです。カバンにはもちろん「くまモン人形」が吊り下げられている。「くまモンって、可愛い!」と、くまモンにプロポーズされたら一発でお嫁に行きそうな感じでした。あるとき僕はスーパーで「くまモン」包装の塩飴を見つけたので買ってきて、中味は皆で食べたのですが、その袋はもちろん彼女が大事そうに持って帰りました。
どうせ今どきのお馬鹿な女子高生だろうって? それがまた、お勉強の方もよくできる子だったので、余裕で九州大学に合格したのです。想像するに、彼女の部屋は「くまモン」グッズに埋め尽くされていたのではないかと思いますが、愛するくまモンに囲まれて、幸福な気分でお勉強にも励むことができたのでしょう。
そのとき僕は一つ不審に思ったので、「宮崎県にはそういうご当地キャラはいないの?」とたずねました。すると彼女のみならず、女の子たちの表情が一斉に曇りました。
「いるんですけどね、一応…」
「みやざき犬とかいって、何と言うか…その、センスが…」
「あんなのじゃねえ…」
「要するに、わざとらしいというのか、ちっとも可愛くないんですよ!」
酷評に次ぐ酷評! やはり「ゆるキャラ」にももって生まれたスター性というか、“花”があるものとないものとがあって、ないものはいくら宣伝しても流行らないのです。その代表の一つが「みやざきけん」。「くまモン」なんかは一気に全国区の人気者になりましたが、「みやざきけん」は県内の女子中高生たちにすら無視されているのです。とほほ…。
ところで、おなじゆるキャラのあの「ふなっしー」というのは何なのでしょう? 僕はテレビはふだんニュース番組とドキュメンタリーの他には、「ダーウィンが来た!」ぐらいしか見ない(訂正:「トンイ」も見ています)のですが、何度かたまたま民放であれが映るのを見たことがあって、そのたび「何なんだ、これは?」とチャンネルを変えずにそのまま見てしまったのですが、あれは人をそうさせてしまうようなインパクトをもった不思議な存在です。あまりにも安易で馬鹿げていて、一挙手一投足が全部可笑しい。
そういうわけで、僕でさえ「ふなっしー」は知っていたのですが、しばらく前にある女子生徒に「先生、私って、ふなっしーに似てますか?」と急に聞かれたときは、途方に暮れてしまいました。
「ふなっしーって、何でまた…?」
「この前学校で○○先生が、私のことをまじまじと見て、『君はふなっしーそのものじゃない?』って、いきなり言ったんです。帰るときも『バイバイ、ふなっしー』って。女の子にそんなこと言うなんて、失礼だと思いませんか!」
彼女の話によれば、その先生はふだん教わっている先生ではないのですが、学年集会か何かがあって、そこにやってきた先生が、不意に自分の前で立ち止まって「ふなっしー」呼ばわりしたというのです。その先生のことは、先方は知らないでしょうが、僕の方は生徒を通じてよく知っていて、優秀だと僕が買っている先生の一人です。真面目だが、言われてみれば、そういうヘンなことを面白がるところはありそうな人物に思える。
「たしかに、それは失礼な話だよね。君がふなっしーに似てるなんて、そんなことは…」
言いながら、僕は笑いをこらえることができませんでした。その子は可愛い子なのですが、何かそのたたずまいに、ふなっしーを髣髴させるような“天然”的なところがないではない。本人にもそれを真面目に気にしているふうはなくて、一緒に釣られて笑い出してしまったのですが、以来、僕は彼女の顔を見るたびにふなっしーを思い出してしまうという病気にかかったのです。前は「くまモン」ファンがいたと思ったら、今度は「ふなっしー」が生徒の中に出現したのです。他にも想像力が豊かすぎて、英文を読んでいるうちにとんでもない空想物語の中に入り込んでしまって、毎度「珍答」で笑わせてくれる生徒が何人もいるのに、この上「ふなっしー」まで新戦力として加わったとなると、塾としての“厳粛さ”を維持するのに苦労する羽目になるのです(幸い学年は別ですが)。
さて、そのふなっしー(本物の方)ですが、それが「くまモン」などと違って「公認キャラ」でないことを、次の記事で僕は初めて知りました。
【千葉県船橋市は30日、非公認のご当地キャラとして同市をPRしている、「ふなっしー」に感謝状を贈った。“梨の妖精”として一昨年に誕生したふなっしーは、型破りな言動で全国区の人気者になっている。
地元の保育園児が声援を送る中、市役所で松戸徹市長から感謝状を受け取ったふなっしーは体をくねらせ、「感謝感激なっしー、ありがとなっしー」。市公認キャラの「船えもん」とともに上機嫌で撮影に応じた。
今年最後の目標は紅白出場とのことだが、「オファーはまだないなっしー」。市長は新たに公認キャラとしないとし、ふなっしーも「やめとくなっしー」と非公認キャラのプライドを見せた。】(産経新聞)
船橋市の「公認キャラ」は「ふなっしー」ではなくて、「船えもん」だったのです。
考えてみれば、「公認」のキャラならあんなに無茶苦茶(この記事では好意的に「型破りな言動」となっていますが)やってるはずもないのですが、それにしても、あれが「梨の妖精」だったとは! あんなドタバタした(運動能力は極めて高い)妖精がいるとは、妖精の定義それ自体に反するようにも思われますが、本人がそう言っているのだから仕方がありません。妖精にもノー天気な特殊なタイプが稀に存在するのでしょう。
ともあれ、僕はこの「ふなっしー」の栄誉を、わが塾の「ふなっしー」にも伝えることでしょう。そのふなっしーの勇姿の写真はこちらです。
それでついでに思ったのですが、わが延岡市もそういうキャラを作りませんかね。名前は「のべりん」とかして、ぼーっと突っ立って何もしないのです。やたらと動き回るキャラ全盛の折柄、かえって注目を引くかもしれません。何もしないのは僕の最も得意とするところ(ほとんど天賦の才能と言える!)なので、あと何年かして塾教師を引退した暁には、僕がその着ぐるみの中に入ってもよい(もちろん、日当はいただきますが)。素晴らしいアイディアではありませんか?
先頃は、お隣り熊本県の「くまモン」が天皇皇后両陛下にお目通りし、あまつさえ皇后様から「くまモンはお一人なの?」という慈愛に満ちた有難いお言葉まで賜ったとか。昔、初めてパンダが上野動物園にお目見えして大騒ぎになったとき、VIPというのはVery Important Pandaの略なのではないかと言われましたが、今や「ゆるキャラ」といえども、くまモンほどの人気者ともなれば、そこらのオヤジなんかとは比べものにならないほどの社会的重要性をもつのです。
去年、うちの塾にも熱烈な「くまモン」ファンの女子生徒がいました。下敷きやファイル、筆箱まで全部「くまモン」で統一されているのです。カバンにはもちろん「くまモン人形」が吊り下げられている。「くまモンって、可愛い!」と、くまモンにプロポーズされたら一発でお嫁に行きそうな感じでした。あるとき僕はスーパーで「くまモン」包装の塩飴を見つけたので買ってきて、中味は皆で食べたのですが、その袋はもちろん彼女が大事そうに持って帰りました。
どうせ今どきのお馬鹿な女子高生だろうって? それがまた、お勉強の方もよくできる子だったので、余裕で九州大学に合格したのです。想像するに、彼女の部屋は「くまモン」グッズに埋め尽くされていたのではないかと思いますが、愛するくまモンに囲まれて、幸福な気分でお勉強にも励むことができたのでしょう。
そのとき僕は一つ不審に思ったので、「宮崎県にはそういうご当地キャラはいないの?」とたずねました。すると彼女のみならず、女の子たちの表情が一斉に曇りました。
「いるんですけどね、一応…」
「みやざき犬とかいって、何と言うか…その、センスが…」
「あんなのじゃねえ…」
「要するに、わざとらしいというのか、ちっとも可愛くないんですよ!」
酷評に次ぐ酷評! やはり「ゆるキャラ」にももって生まれたスター性というか、“花”があるものとないものとがあって、ないものはいくら宣伝しても流行らないのです。その代表の一つが「みやざきけん」。「くまモン」なんかは一気に全国区の人気者になりましたが、「みやざきけん」は県内の女子中高生たちにすら無視されているのです。とほほ…。
ところで、おなじゆるキャラのあの「ふなっしー」というのは何なのでしょう? 僕はテレビはふだんニュース番組とドキュメンタリーの他には、「ダーウィンが来た!」ぐらいしか見ない(訂正:「トンイ」も見ています)のですが、何度かたまたま民放であれが映るのを見たことがあって、そのたび「何なんだ、これは?」とチャンネルを変えずにそのまま見てしまったのですが、あれは人をそうさせてしまうようなインパクトをもった不思議な存在です。あまりにも安易で馬鹿げていて、一挙手一投足が全部可笑しい。
そういうわけで、僕でさえ「ふなっしー」は知っていたのですが、しばらく前にある女子生徒に「先生、私って、ふなっしーに似てますか?」と急に聞かれたときは、途方に暮れてしまいました。
「ふなっしーって、何でまた…?」
「この前学校で○○先生が、私のことをまじまじと見て、『君はふなっしーそのものじゃない?』って、いきなり言ったんです。帰るときも『バイバイ、ふなっしー』って。女の子にそんなこと言うなんて、失礼だと思いませんか!」
彼女の話によれば、その先生はふだん教わっている先生ではないのですが、学年集会か何かがあって、そこにやってきた先生が、不意に自分の前で立ち止まって「ふなっしー」呼ばわりしたというのです。その先生のことは、先方は知らないでしょうが、僕の方は生徒を通じてよく知っていて、優秀だと僕が買っている先生の一人です。真面目だが、言われてみれば、そういうヘンなことを面白がるところはありそうな人物に思える。
「たしかに、それは失礼な話だよね。君がふなっしーに似てるなんて、そんなことは…」
言いながら、僕は笑いをこらえることができませんでした。その子は可愛い子なのですが、何かそのたたずまいに、ふなっしーを髣髴させるような“天然”的なところがないではない。本人にもそれを真面目に気にしているふうはなくて、一緒に釣られて笑い出してしまったのですが、以来、僕は彼女の顔を見るたびにふなっしーを思い出してしまうという病気にかかったのです。前は「くまモン」ファンがいたと思ったら、今度は「ふなっしー」が生徒の中に出現したのです。他にも想像力が豊かすぎて、英文を読んでいるうちにとんでもない空想物語の中に入り込んでしまって、毎度「珍答」で笑わせてくれる生徒が何人もいるのに、この上「ふなっしー」まで新戦力として加わったとなると、塾としての“厳粛さ”を維持するのに苦労する羽目になるのです(幸い学年は別ですが)。
さて、そのふなっしー(本物の方)ですが、それが「くまモン」などと違って「公認キャラ」でないことを、次の記事で僕は初めて知りました。
【千葉県船橋市は30日、非公認のご当地キャラとして同市をPRしている、「ふなっしー」に感謝状を贈った。“梨の妖精”として一昨年に誕生したふなっしーは、型破りな言動で全国区の人気者になっている。
地元の保育園児が声援を送る中、市役所で松戸徹市長から感謝状を受け取ったふなっしーは体をくねらせ、「感謝感激なっしー、ありがとなっしー」。市公認キャラの「船えもん」とともに上機嫌で撮影に応じた。
今年最後の目標は紅白出場とのことだが、「オファーはまだないなっしー」。市長は新たに公認キャラとしないとし、ふなっしーも「やめとくなっしー」と非公認キャラのプライドを見せた。】(産経新聞)
船橋市の「公認キャラ」は「ふなっしー」ではなくて、「船えもん」だったのです。
考えてみれば、「公認」のキャラならあんなに無茶苦茶(この記事では好意的に「型破りな言動」となっていますが)やってるはずもないのですが、それにしても、あれが「梨の妖精」だったとは! あんなドタバタした(運動能力は極めて高い)妖精がいるとは、妖精の定義それ自体に反するようにも思われますが、本人がそう言っているのだから仕方がありません。妖精にもノー天気な特殊なタイプが稀に存在するのでしょう。
ともあれ、僕はこの「ふなっしー」の栄誉を、わが塾の「ふなっしー」にも伝えることでしょう。そのふなっしーの勇姿の写真はこちらです。
それでついでに思ったのですが、わが延岡市もそういうキャラを作りませんかね。名前は「のべりん」とかして、ぼーっと突っ立って何もしないのです。やたらと動き回るキャラ全盛の折柄、かえって注目を引くかもしれません。何もしないのは僕の最も得意とするところ(ほとんど天賦の才能と言える!)なので、あと何年かして塾教師を引退した暁には、僕がその着ぐるみの中に入ってもよい(もちろん、日当はいただきますが)。素晴らしいアイディアではありませんか?
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