安倍首相に英語を学ぶ~under controlの意味

2013.09.14.16:35

“The situation is under control. It has never done and will never do any damage to Tokyo.”

 安倍総理はIOCの最後のプレゼン(presentation)で福島原発事故についてそう語り、これが「委員たちの不安を払拭」して、2020年の東京オリンピック開催の決定打になったのだと、巷間言われています。実際それは力強く、確信に満ちたもので、僕にはunder controlの前に“省略”されているperfectlyが聞えたほどです(一応訳しておくと、「事態は落ち着いています。それはこれまで東京にいかなる被害ももたらしたことがないし、今後もないでしょう」)。

 これは受験生諸君にとっても勉強になります。来年のセンターに出るかも? 次の文に下から適切なものをえらんで入れなさい。

 The damage is done ! The situation is(   )control. 
  ① above ② by ③ out of ④ under

 こういう問題の場合、文法的に適合するものは複数あるが、文脈からして適切なのは一つしかない、というのがミソなので、全体をきちんと読んで判断しましょうね。
 そうすると、前にThe damage is done ! がある(これは「被害はもう済んだ→今は安全になった」の意味ではなくて「すでに被害は出てしまった→もう手遅れだ」の意味です)ので、「事態は手に負えなくなっている」の意味になるはずで、正解は③だということになります。尚、受験生にはおなじみのbeyondも使えると思いますが、ここは学校でunderとout ofのペアで覚えることが多いのではないかと思うので、こうしておきました。
 安倍総理のdo damage to~は教科書どおりで、do harm(good)to~などと同じ使い方です。doの代わりにcause も使えるし、そのまま動詞のかたちで用いることもある。

 にしても、東京に害は出ていないという話はともかく(never…anyというのは完全否定なので、いくら何でも言い過ぎですが)、福島原発事故の現状は誰が見てもunder controlとはほど遠いと見えるので、コメディ映画にはUnder control!と自信たっぷり言った次の瞬間、爆発が起きて吹き飛ばされる、なんてシーンがよくありますが、テレビで安倍首相の演説のその部分を見たとき、僕は不謹慎にもそれを連想してしまいました。翌日、補強工事をしたはずの使用済核燃料プールが微震であえなく倒壊、なんてニュースが出なくてよかった。

 さすがの東電もこれには困惑を隠せないようで、さっきネットでニュースを見たら、次のような記事が出ていました。

 汚染水「制御できてない」 首相発言否定
【東京電力福島第1原発の汚染水漏れを巡り、同社幹部が13日、福島県で開かれた民主党の会合で「コントロール(制御)できていない」と発言した。安倍晋三首相が今月7日、2020年東京五輪招致のプレゼンテーションで「国際公約」した内容を否定した形で、民主党は追及する構え。政府は反論している。首相は19日、汚染水漏れの状況を確認するため同原発を視察する予定で、防護服で原発施設内に入ることも検討している。
 東京電力の山下和彦フェローは、民主党の汚染水問題対策本部の会合で、「ちゃんとコントロールされているのか」と追及され、「今の状態は申し訳ありません。コントロールできていないと考えます」と答えた。同席した資源エネルギー庁幹部も「今後はコントロールできるようにします」などと応じた。
 山下氏は、役員クラスに当たるフェローの1人。廃炉に向けた中長期対策を統括している人物だ。首相発言を否定した内容だけに、同党の大畠章宏幹事長は「首相の責任問題もある」として、臨時国会召集の前倒しを求める考えを示した。
 これに対し、菅義偉官房長官は会見で「タンクからの汚染水漏えいなど個々の事象は発生しているとの認識で(コントロールできていないと)発言した」と指摘。汚染水は港湾の外には出ていないとして、首相の発言通り「コントロールできている」と主張した。
 東電は夕方、急きょコメントを発表。「コントロールできていない」としたのは、「港湾内への流出や、敷地内の貯水タンクからの漏えいなどのトラブルが発しているとの認識に基づいたものだった」「首相と同じ認識」と火消しに追われた。ただ東電は12日にも、首相発言と食い違う内容の見解を示しており、東電と首相の認識の「矛盾」が、ジワジワ広がっている。
 五輪招致プレゼンでの首相発言は、「国際公約」と受け止められており、国際的な波紋も避けられない。そんな中、首相は19日、福島第1原発を視察する方向で調整に入った。招致決定から時間を置かずに訪問し、責任感をアピールする狙いもありそうだ。昨年12月29日に訪れた際は敷地内を約1時間、バスで視察したが、今回は防護服を着て原発施設内に入ることも検討している。】[9月14日8時38分 日刊スポーツ]

 民主党その他の野党がこれを「政争の具」にしても、国民の反発を招いて支持を減らすだけだと思いますが、菅義偉官房長官の「汚染水は港湾の外には出ていないとして、首相の発言通り『コントロールできている』と主張した」というのには無理がありすぎます。タンクの水漏れ以前に、前からずっとそれは海に流れ込んでいるはずで、大体、ああやってタンクをどんどん増やしていったあとその汚染水をどうするのか、その目算もまるで立っていないわけでしょう。一応の濾過,「除染」をして、今よりは「低濃度」にして海に流すしかもう方法はないのではありませんか? それはむろん「望ましい」ことではありませんが、そういう選択をしなければならないほど、あれは悲惨な事故で、いったん起きてしまったら、under control(制御下に置く)なんて到底望み得ないのが、原発事故というものなのです。
 そもそもの話、「汚染水漏れ」は問題の一部でしかありません。事が順調に運んだ場合でも、一応の「収束」と言える状態を見るまでに、これから先まだ何十年もの作業が必要だと言われているので、たったの二年半でunder controlもヘチマもないのです。

 七年後の東京オリンピックの頃はどうなっているのか? 「国際公約」だそうなので、安倍首相には少しでもunder controlに近づくよう、頑張っていただくしかありませんが、被曝許容量の問題もあるので、現場作業員の人手の確保だけでも大変で、放射能に妨げられて作業を加速化させることも難しいだろうから、自分の言葉に責任をもつのは容易なことではないでしょう。「現実はきれいさっぱり無視して、人を安心させるために使う決まり文句」というunder controlのAbe usage(アベ用法)なんてのが英語辞典に載る日が来ないことを祈りたいと思います。そうした新用法ができれば、この言葉は世界中の政治家たちに愛用されること疑いなしだと思われますが…。
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