「健全な野党」への期待

2013.07.23.16:52

 今回の参院選、大方の予想どおり、自民は大勝し、民主は大敗しましたが、昨年末の衆院選に、先の都議選も含めれば、自民党はこれで「三連覇」です。日本の政治はどこに向かうのか?

 僕は日曜午後8時からテレビで選挙の特番を、おつゆに刻みみょうがを入れたそうめんと、鮎の塩焼き(昼間、親子で川に行ってきた)を食べながら見ましたが、開票ゼロパーセントでいきなり、自民60、公明10の「当確」が出たので、かなりシラけました。テレビでは、タブーになっているのかそんな話は出ませんが、公明の票は宗教団体・創価学会の組織票(選挙が近づくと知り合いの創価学会員が電話をかけて寄越すというのは大方の人が経験していることでしょう)がベースなので、それが読みやすいのはわかるが、いきなり自民60とは!

 最終的な結果は皆さんご存じのとおりなので繰り返しませんが、「これで憲法改正も現実味を帯びてきた」とテレビでも繰り返し言われていました。発議に必要な3分の2には、自民だけでは届きませんが、また、そんなことになったら事実上自民の「一党独裁」になってしまうのでおおごとですが、改正に賛成の維新、みんなの党、相次ぐ惨敗で分解寸前にまで追い込まれている民主の右派を取り込み、連立相手の公明が賛成すれば、それは可能になったのです。

 公明党は「加憲」であって、「平和憲法護持」の立場だからそうはならないだろう、と言う人もいるでしょうが、一度権力の味をしめれば、それを手放したくない一心でどう変わるか、わかったものではないというのが人間です。1994年の自社さきがけ政権のときの社会党(現社民党)みたいなものです。持ち上げられて首相になった村山富市はそれまでの党の方針を180度転換、周りをびっくりさせましたが、あれで革新政党としての社会党は実質的に終わってしまったのです(今の社民党は見る影もない)。公明党は母体が創価学会だから終わらないでしょうが、政党としてのアイデンティティを失っておかしくなってしまうのは避けられないでしょう。仲良くするそぶりを見せつつ、そうやって難敵を「自壊」に導くので、自民党はそのあたり、実にしたたかな政党なのです。

 「圧勝」の自民党ですが、その支持率はどれくらいなのか? 選挙区の場合は、所属政党だけでなく、候補者個人の魅力が相当モノを言うので、いちがいに○○党だったから勝った、とは言えません。宮崎県の場合など、民主と共産の候補には全く魅力がなかった(失礼!)ので、自民の候補者(前都城市長.あとでネットで調べてみると、「学歴詐称」疑惑で市議会が空転したこともあるといういわくつきの人のようですが)が7割を超える得票率で圧勝しました。僕が面白いと思ったのは、しかし、「県第三の人口規模」を誇るわが延岡市では、他は3~5倍の開きがある地域が大半なのに、自民と民主の候補者の得票数は2倍未満にとどまったことです。つまり、延岡市は県内で最も“リベラル”な市なのです(僕がその一人であることは言うまでもありません)。だから、仮に野党候補を一本化し、かつそれを個人的な魅力のある人にしていれば、それはあくまで延岡にかぎった話ですが、自民に勝てる可能性があった。それが民主と共産に分かれ、その候補がどちらもくすんだ印象の、存在感に乏しい候補なら、まだ四十代前半で、割とイケメンの自民候補に勝てるわけがないのです。

 共産党が十何年ぶりに東京の選挙区で議席を獲得したのだって、あれはその女性候補の個人的魅力の力が相当大きかったでしょう(僕が東京都民なら、その女性か山本太郎君のどちらかに投票していたでしょう)。

 話を戻して、政党別の支持率を見るには、比例の政党別得票数を見るのが一番手っ取り早い。今回のそれは、多い順に自民34.7%、公明14.2%、民主13.4%、維新11.9%、共産9.7%、みんなの党8.9%でした。
 自公合わせると48.9%となり、与党が半数近い支持を集めたことになります。昨年末の衆院選との比較では、野党の場合、民主が16.0%→13.4%、維新が20・4%→11.9%、みんなの党は8.7%→8.9%、共産が6.1%→9.7%となっており、民主の場合は2009年衆院選では42.4%だったのだから、その凋落ぶりはすさまじく、維新もわずか半年余りで支持を半減させたことになる。みんなの党はほとんど変わらず、「増えた」と言えるのは共産党のみです。

 今回の投票率は全国平均で52.61%、これは「過去3番目に低い投票率」だそうですが、投票に行かなかった有権者も含めて自民の支持率を再計算すると、18.25%となります。しかし、それは棄権組の支持率をゼロと計算した上での話で、自民支持者でも結果がわかっているから投票に行かなかった、という人はいるでしょう。そのあたりは調べようがないのでわかりませんが、25~30%近い支持はあったと見るのが公平かも知れません(ちなみに、宮崎県の投票率は50%を切りました。僕も選挙区は自分の票が死票になるのは明白だったので、投票に行くのが馬鹿馬鹿しく感じられましたが、比例は一票としての意味はもつので、そのために出かけました)。

 ここで今見た野党4党の比例支持率を合計すれば43.9%になって、維新の橋下共同代表などは、選挙の特番で早くも「野党再編」を口にしていましたが、それは難しいでしょう。維新のもう一人の共同代表は「太陽」から合流した石原御大ですが、彼など自民よりもっと“右”で、それに一番近いのは宗教団体・幸福の科学の「幸福実現党」の主張だと言ってよいくらいです(「霊言」の乱発は別として)。維新のケチのつきはじめは、まず石原新党との合流、次は橋下「従軍慰安婦・風俗活用」発言です。彼はいまだに「マスコミの誤報だ」と言い張っているようですが、どう見てもそうは思えないので、その後の彼の論点すり替えの三百代言的な対応は、「人格に対する深刻な疑義」を招いたのです。

 それでも、日本人の宿痾(しゅくあ)のような「健忘症」からして、彼が再び熱烈な支持を集めることはありえないことではありません(ヒトラーも、政権をとる以前は「異常人格を疑わせる、あんな粗野なデマゴーグが大きな力などもつはずがない」と良識あるドイツ人のほとんどには思われていたのです。しかし、世界恐慌下の異常な社会の空気は理性を吹き飛ばし、その「ありえない」ことを可能にした。共産党も大きな支持を集めていたが、ナチスはそれをでっち上げの「国会放火事件」の犯人に仕立てて葬り去り、独裁体制を敷くのに成功したのです)。

 こう言えば、橋下氏は「ヒトラーなんかと一緒にするな!」と怒り出すでしょうが、学校に日の丸・君が代を強制して、口パクまでチェックさせ、教職員がそれに従うのは「公務員としての当然の義務」だなどと言うのは、彼がおかしな国家主義者の体質を濃厚にもっていることを示しています(昭和天皇はそのようなことには反対の意向を示していました)。公務員の仕事は民主主義を守り、国民に奉仕することであって、国家主義に奉仕することではないのです。このあたり、彼は自民の安倍・石破あたりと同じメンタリティの持主です。

 だから、維新が合流または連携する相手は自民党であって、他の野党ではない。僕はこの時代錯誤の「国家主義」はどんどんおかしくなっていく保守政党と、「健全な野党」を分かつ大きなポイントになると考えていますが、「野党再編」はそれに反対する勢力の結集によってなされるでしょう。

 共産党も、今は「共産党の一党独裁によるユートピア」など妄想していないだろうし、民主党の左派や、今や風前の灯の社民党、リベラルな無所属議員などと連携して、新党を作る構想を進めたらどうでしょうかね。小党乱立の今の状況では、票が割れるだけで、自民党を利するだけの結果に終わります。政治家にはそれでなくても「オレが、私が」という人が多いようで、鼻つまみになっている民主の菅さんなんかはその典型ですが、ああいう自意識肥大型のスタンドプレー専門のおかしな人は相手にしないようにして、まずは統一会派でも作って、議論を詰めてゆくのです。

 有権者の間には、ことに僕らの世代や上の団塊の世代には、おかしな「愛国・国家主義」の拡大を憂慮する人が多い。保守化が進んでいると言われる若い世代にも、僕は塾で高校生の相手をしていて、ある程度わかっているのですが、おかしな愛国主義にかぶれているような子はめったにいないので、大半は理性的にものを考えようとしているのです。

 その受け皿となるものを野党の人たちには作ってもらいたい。そう願います。
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