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女子高生お言葉集3

2012.07.27(14:01) 163

 予選とはいえ、サッカー男子が初戦で優勝候補のスペインを1-0で下し、日本中が沸きました。コスモポリタン(世界市民)を自称する僕は日頃「愛国心がない」と非難されていますが、こういうときだけは手に汗握って中継を見て、にわか愛国者になります。こういうのは罪がなくていい。選手たちはさぞや嬉しかったでしょうね。

 さて、このブログもそろそろ「夏休み」に入りたいのですが(今年は九州地方は梅雨に雨が降りすぎて、お楽しみの鮎たちの生育状況が、石苔が十分ついていなくて芳しくないのではないかと心配です)、その前に「いい加減に続きを書け」と言われていたこのシリーズの続編を書いておくことにします。尤も、真面目な読者からは「アホなこと書くな!」と叱られているので、これは「ナンセンス・コーナー」の読者にしか喜んでもらえないと思いますが。

 それで、オリンピックも始まることであるし、今回はスポーツ用語に由来する「お言葉」を二つ取り上げます。実に、心憎い演出ではありませんか? こういうおしゃれなことは、フツーのオヤジには決してできないことです。あの有害無益な本を沢山出しているツチヤ教授などと僕が全く違うところも、このような歴然たるセンスの差にあります。



お言葉4:アウェイ(away)

【語義説明】
 元々はサッカーなどで「ホーム」に対する「アウェイ」として用いられるもので、「遠征地」「敵地」の意味。そこから、「孤立した」「場違いな」状況を指すものとして広く用いられるようになった。元々英語の前置詞awayには時間的・空間的に「離れて」という意味があり、「不在」状況を指すのにも使われるので、「疎外」のニュアンスをもつものとして用いられるのは「場違い」ではない。世のオヤジ族にはこの言葉を、「あへえー(困ったときのため息)」がナマったものだと思い込んでいる向きもあるが、それは間違いである。
【用例】
 たとえば、このようなときに用いられる。3年女子が部活の引退間際、部室でふと気づくと、ひとりで1・2年の後輩たちに囲まれており、彼女たちのキャーピー、キャーピー騒がしいおしゃべりを耳にするうちに、自分が“年をとった”ことを突然実感し、寂寥感と苛立ちに襲われるときなどである。それで、「静かにしなさい!」と怒鳴って、いっせいに不満げな白い目を向けられる。このような状況を「アウェイ」と呼び、後で同級生たちに、「あのときはひどいアウェーでマイった」と愚痴をこぼして共感を求める。
 また、このようなときにも用いられる。友達と五人でおしゃべりに興じていて(このときは「キャーピー、キャーピー」だという自覚はない)、ある男子のことが話題にのぼり、大喜びでその「気取り屋でケーハクな性格」をこきおろしていたら、何だかヘンな雰囲気になってしまい、実はその中の友達一人がその“腐れ男子”のことが好きで、他の三人はそのことを知っていた、というようなときである。小気味よく罵倒する喜びがにわかに気まずさに変わり、「まあ、蓼食う虫も好き好きだから」などと、自分でフォローしたつもりが事態をよけいにまずいものにしてしまい、ドツボにはまってしまったようなときに、「ホームだと思っていたらアウェーだった」と言う。
【対策】
 ありがちなことである。このうち深刻なのは二番目の例だが、筆者は類似の経験が非常に豊富である。たとえば、「寿司屋のぼったくり」をこきおろしていたら、相手が寿司屋の息子だったとか、坊主を「堕落したあくどい葬式業者」だと罵倒していたら、相手が大きなお寺の住職の娘だったとか、学校教師にはヘンタイしかいないと言っていたら、相手の職業が中学教諭だったとか、等々。中には女性に向かってその交際相手を(むろん、そうとは知らないまま)「あの馬鹿は…」などと散々こきおろしてしまい、後で結婚式の招待状が届いて初めてそれに気づくということさえあった(恐ろしいことに、これらはすべて事実あったものばかりである!)。これは、周囲の者が事前にそのような重要情報を与えないのが悪いのであるが、鈍感にならずに自らも情報収集に努めて、そのようなアウェイ状況を招いてしまわないよう気をつけなければならない。でないと、心おきなく悪口を言う快感と楽しみが失われてしまう(但し、ネットに匿名で友達の中傷を書き込む、などという恥ずべき行為はしてはならない。このブログの読者にそんな人はいないと思うが)。


お言葉5:ラブゲーム(love game)

【語義説明】
 これは「恋愛ゲーム」のことではなく、テニスで使われる「ラブゲーム」の転用である。テニスのそれは、相手に得点を全く許さないままゲームに勝つことを言うが、圧倒的に有利なまま事を進めて、「完勝」するような状況を指して用いられる。
【用例】
 たとえば、こういうときに用いられる。苦手な国語の授業で、居眠りの最中、突然指名され、「この箇所に窺われる主人公の心情はどういうものですか?」ときかれる。即座に「私は主人公ではないのでわかりません」と答える(15-0)。「主人公でなくても、読解力があればわかるはずです」と畳み込まれると、「本人がはっきり言わないのに、邪推するのはよくないと思います」と答える(30-0)。むっとした教師が、「何が邪推ですか! 読書でも人と接するときでも、相手の心情理解は大切なことです」と言うと、「先生は今の私の心情がおわかりになるんですか?」と切り返す(40-0)。怒った教師が「何ですって! そんなものわかるはずないでしょ!」とうっかり叫ぶと、「それと同じです。私は今、トイレに行きたかったんです」と言ってスタスタと教室を出てゆく。教師や他の生徒たちは唖然呆然。こういうのを「ラブゲーム・キープ」という。
 あるいは、このようなときにも用いられる。今の学校には「容儀検査」なるものがあるが、その際、粗探しの能力に長けた生活指導担当のオヤジ教諭が、「眉がこんなに細いのは、毛抜きをしているからではないか?」と言うと、「私本来の自然な美しさです」と澄まして答える(15-0)。続いて、「前髪が目にかかっているのは、校則違反ではないか?」と言われると、「私はふだんは上にあげています。さっき別の先生にピン止めも外せと言われたので、こうなっているだけです」と答える(30-0――実はそのピン止めが校則違反のど派手なキャラクターものだった)。「スカートの丈にも問題があるのではないか?」と言われると、「最近身長が急に伸びて足が長くなってしまったために、ちょっと短めになっただけです」と誇らしげに答える(40-0)。最後に持物検査に移り、バック、キーホルダーから下敷きにいたるまでクマモン(熊本県のご当地キャラクター)だらけになっていることを咎められると、「宮崎県にはまだ適切なキャラクターがないので、お隣の熊本県のもので代用しています。これは私の『郷土を愛する心』の表われです」と答える。そうして、諦めて教師が去ると、シャラポワを真似て(但し声は抑え気味に)「カモン!」と叫んで、ガッツポーズを決める。
【注意点】 
 ラブゲーム・キープは喜ばしいことだが、あまりやりすぎるとモンスター・スチューデント扱いされかねないので、先生たちのプライドにも配慮して、たまにはわざと失点してみせることも大切。
【追記】
 ここの例の場合、相手の攻撃が先にあることから、「ラブゲーム・キープ」ではなく「ラブゲーム・ブレイク」が適切だと批判する人もいるだろうが、そのような非本質的な細かいことを気にするようでは、将来立派なオトナにはなれない。おおらかな心を忘れないように。
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