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北朝鮮ミサイル発射実験に思う

2012.04.15(13:35) 144

 「あれと較べればまだ…」
 そう思われた方が多いかもしれません。かつて詩人のボードレールは、母国フランスを罵倒してやみませんでしたが、ベルギーへの旅行滞在後、祖国に対していくらか“寛大”になったと伝えられています(彼は「哀れなベルギー」と題した罵詈雑言集を残した)。

 日本政府も、「北朝鮮見学ツアー」でも企画して、国内の不平不満分子をそれに招待するといいかも知れません。異常な官僚機構、きちがいじみた軍部、システムと化した密告、疲弊しきった農村、飢えに苦しむ多くの国民の姿、等々を目の当たりにすると、「何のかんのといっても日本はまだいい国ではないか…」と多くの人が思うようになるかも知れません(江戸時代の「下見て暮らせ」みたいな情けない方策ですが)。

 例の「ミサイル発射」に関しては、日本政府も大童(おおわらわ)でした。自衛隊の迎撃ミサイル部隊を各所に配置し、「何だってそこまで物々しいことをしているのだ?」と多くの人は不思議に思ったほどです。僕自身は「迎撃(でうまく相手を撃ち落す)なんてほんとにできるのかな?」と疑っていた(今でも疑っている)ので、ああいうのは気休めの儀式みたいなものなのだろうと思いましたが、それでもやらないと「危機管理がなっていない!」なんて叱られるので、余分な出費が相当かかるとしても、やむを得ないのだろうなといくぶん同情的に見ていました。そしたら、「ミサイル発射後の国民への報告が迅速でなかった!」と、また叱られていましたが…。

 何でも、あれは前みたいに日本海側に落ちるのではなく、南の方向に向けられていたという話です。だから、沖縄の宮古島あたりが危ないと警戒されていたようでしたが、僕なんか軍事の素人は、北朝鮮のミサイルはどこに飛んでしまうかわからないと、何よりそれを心配していて、そっちに向いているのなら、北朝鮮の技術では宮古島あたりまで届くことはまずない(そのあたりが目標地点ならなおさら)として、方向が東寄りにズレて、もっとずっと手近の玄海原発あたりに誤って落ちてしまったらエラいことになると、よけいな心配までしたものです。この前の福島原発の事故の後、あらためて思ったのですが、今はそもそも核兵器なんて必要ありません。核爆弾と同じかそれ以上の被害をもたらしたいのなら、原発めがけてふつうのミサイルをぶち込めば、たちまちにして言語を絶する惨害が生じてしまうからです。わが国には今や54基の原発があるそうですが、そのうちの二つか三つを攻撃すれば、日本は滅亡、僕らは皆あの世行きです。

 第二次世界大戦時には、もとより世界に原発なんてものは一つも存在しなかった。だから核兵器開発も“有用”だと思われ、アメリカは日本をその実験対象にえらんだわけですが、今はただ原発を爆撃の標的にすればいいだけだから、そんな手間はいらなくなってしまったのです。恐ろしい…。

 それはともかく、新・偉大な将軍様、キム・ジョンウンの第一書記就任と、その祖父キム・イルソン(超偉大な建国の祖)の生誕100周年を祝賀し、「強盛大国の門を開く」ことをデモンストレーションすべく、外国人記者まで招いて大々的に行なわれた、自称衛星打ち上げことミサイル発射実験は、僅か81秒の飛行後、空中爆発して失敗に終わったというのだから、目も当てられません。遠くまで飛ばすどころの騒ぎではなく、下手したら現場で直接「指導」にお当たりになっていた、栄光に耀く第一書記の頭上に破片が落下してきかねない。あわてて「喜び組」の美女たちが待つ詰所にお戻りになったのかどうかは知りませんが…。

 それでも北朝鮮は、今回は失敗を、四時間半近くたってからだとはいえ、公式に認めたそうです。この正直者! 海外メディアまで呼んで大々的に宣伝していたものだから、さすがに国民にもごまかしはきかないと“苦渋の決断”をしたのでしょうが、それでなくとも発射宣言でアメリカには食糧援助を白紙撤回されていた矢先、面目は丸潰れで、「正雲」の前には早くも「暗雲」がたちこめてしまったかたちです。

 それで、これに要した費用が日本円にして690億ぐらいと見積もられるとか…。81秒間の美しくもない花火代としてはいくら何でも高すぎますが、中央日報はそれを社説で、「北朝鮮住民の1年間の食糧不足分を確保できる資金が消えた」と評しています。最悪国家の最低元首と言ってしまえばそれまでですが、何ともはや…です。民の幸福もへったくれもない。

 しかし、これに懲りるどころか、“汚名挽回”のために、今度は核実験を強行するだろうという観測も一部にあるようで、一体どうしたらああいう“超KY”で傍迷惑なことをやめさせることができるのでしょう? 食糧援助を打ち切れば、国民が飢える。さりとて、周りの国が各種支援を続ければ、従来どおり、追加援助が必要になるたびテポドンを発射したり、核実験を行なったりして、威嚇するのです。「それしか知らんのか?」と言いたくなるほどのワンパターン(父親のジョンイルも有効な経済政策、発展政策などほとんど取れませんでした)。軍を弱体化させて、民主的な政体を作り出すしかうまく行く方法はないように思えますが、祖父イルソンの代から反対勢力は片っ端から政治収容所に送り込んで“粛清”してきたようなので、下からの革命は難しそうに見えます。国家官僚や軍の中に民主化勢力が出てきて、彼らがクーデタを起すしかない? あるいはジュンウン氏自身がうまく軍部を押え込んで、自ら民主化と開放政策を取る(残念なことに、お坊ちゃまの彼にそんな覚悟や能力は共になさそうに見えますが)。

 軍隊というのは両刃(もろは)の剣です。その国の国民を守るはずが、武力を背景に唯我独尊の一面的な暴走を始め、逆に人々に塗炭の苦しみをなめさせて、国家を破滅の瀬戸際に追い込むことも珍しくない。それはわが国も戦前戦中に経験した苦い教訓です。その愚かしく悲惨なドラマの繰り返しだけは見たくないものです。

 僕がかねて気持ち悪いの極致だと思っているのは、兵士たちが一糸乱さず硬直しきった姿勢でピョンピョン歩きをする、あの軍事パレードの映像です。人間が正気かどうかは、ああいうものをどう感じるかという、その感性にかかっているように思われます。それを「威容」とではなく「異様」と感じる人間が、北朝鮮の政府部内にどれだけいるかです(わが国の学校教師にも、そういうのが好きでたまらない変質的な人が相当数いるようなので、子供たちにおかしな“芸”を仕込まないでくださいね)。

祝子川通信 Hourigawa Tsushin


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2012年04月
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