文大統領、韓流論理の「意味わからん」

2017.12.30.15:22

 ようやく正月休みとなったので、書きかけのブログを完成させておくことにしますが、この「意味わからん」という言葉は、小学生ぐらいの子供がよく使う言葉です。たとえば、母親に何かで叱られたとき、「おかあさんは意味わからん!」と言って、反論するのです。前回はこう言った、さらに前々回はこうで、今回はまた別のことを言っている。それらは相互に矛盾していて、一貫性というものがまるでないと、ロジカルに指摘するのです。

 痛いところを衝かれた母親は逆上して、「まあ、この子はなんて恐ろしい、性格の悪い子なんでしょう! そんな大昔のことまで覚えているなんて!」と言うのですが、それはそんなに「大昔」のことではない、前々回のことでさえ、僅か三ヵ月前にすぎなかったりするのです。しかし、子育てに奮闘中の母親としては、だんだん知恵がついてきて、言うことを素直に聞かなくなったわが子をもて余して、とにかくけしからんというので叱るうちに、前に言ったこととは矛盾したこともつい言ってしまうわけです。

 父親はそのやりとりを笑いながら聞いていて、「まあまあお二人さん…」と、そろそろ仲裁に入ろうかと思っていた矢先、突然火の粉がわが身に降りかかってきたのに驚きます。子供とのやりとりがヒートアップする中で、母親がこう叫ぶのです。「どうしてこの子は親の言うことが素直に聞けないのかしらね。そうよ、そういう素直でない邪悪なところは、おとうさんに似たのよ!」絵が上手だとか、人に親切だとかいったよいところは全部自分からの遺伝によるものだが、悪いところはすべて父親の劣等遺伝子のしわざなのです。だから早めに争いを収束させないと、いつもとばっちりを食うことになる。

 こういうのはどこの家庭にもある、笑い話で済むことですが、国家間の合意といったレベルの話になると、もはや笑いごとでは済まされない。「ゴールポストが動く」というのは韓国との交渉事では少しも珍しい話ではなく、今回も「またか…」という感じで受け止められているのですが、例の「最終的かつ不可逆的」と明文で謳われた例の慰安婦問題をめぐる合意が、実は少しも「最終的かつ不可逆的」ではなかったことが、韓国側によって高らかに宣言されたのです。あれは刑務所に収監された前大統領(そういう展開も韓国ではありふれたことですが)が「民意を無視して勝手にやったこと」なので、「正しい現政権」からすればそれは容認しがたく、従って「破棄、再交渉」するのが当然の権利であるという話になってしまうのです。国家間の合意であっても、内輪の論理がつねに優先する。だから韓国という国を相手にする場合には、骨を折って合意や契約に達し、正式に文書を取り交わしても、トップが変わればそれはいつ破棄されるかわからないので、少しも安心はできないのです。

 どういうわけでそうなるのか、今回の経過を新聞記事で少し見てみましょう。以下は日経新聞電子版12/27のものです。

【ソウル=鈴木壮太郎】韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相直属の作業部会は27日、従軍慰安婦問題をめぐる2015年の日韓合意の検証結果の報告書を発表した。「被害者の意見を十分聴かないまま合意した」と指摘。「被害者が受け入れないかぎり、政府間で慰安婦問題の最終的・不可逆的解決を宣言しても、問題は再燃されるほかない」と結論づけた。
 国家間で取り交わした合意の交渉経緯を一方的に検証、暴露するのは国際的にも異例。韓国政府が合意を見直せば、日韓関係への悪影響は避けられない。康氏は同日の記者会見で検証結果を「真摯かつ謙虚に受け止める」と言明。「韓日関係に及ぼす影響も考慮しながら、政府の立場を慎重に決めたい」とも語った。
 一方、河野太郎外相は同日「日韓両政府の正当な交渉を経ており、合意に至る過程に問題があったとは考えられない」とする談話を発表した。「報告書に基づいて合意を変更しようとするのであれば日韓関係がマネージ不能となり、断じて受け入れられない」と合意の履行を求めた。
 報告書は朴槿恵(パク・クネ)前大統領が当初「慰安婦問題が進展しなければ首脳会談はしない」と慰安婦問題と日韓関係全般を連携づけたことが「韓日関係を悪化させた」と強調。その後、一転して15年内の交渉終結をめざしたことで「政策の混乱を招いた」と批判した。
 日本との交渉は元駐日大使の李丙琪(イ・ビョンギ)大統領秘書室長(当時)が主導したが「高官級協議は終始一貫して秘密交渉で進んだ」と指摘。在韓日本大使館前に設置された慰安婦を象徴する少女像の移転問題など「韓国に負担となる内容が公開されなかった」と問題視した。外務省は交渉の過程で「脇役にとどまり、核心争点について意見を十分に反映できなかった」とも指摘した。
 報告書は合意の経緯の分析に力点が置かれ、政府への合意見直しの勧告はなかった。韓国政府は報告書を踏まえ、元慰安婦らへの聞き取りもする予定。政府としての対処方針の決定は18年2月の平昌五輪後まで先送りされる見通しだ。


 うーん。「在韓日本大使館前に設置された慰安婦を象徴する少女像の移転問題など『韓国に負担となる内容が公開されなかった』と問題視した」とありますが、「外国公館前での侮辱行為を禁じたウィーン条約に違反している」として日本側が切に求めるあの「少女像の移転」は、たしか今も果たされていないはずで、「民間のやったこと(挺対協が2011年に設置)だから、政府がとやかくは言えません」ということで、そのままのはずです。十億円は受け取って、それを元慰安婦の女性たちに配布し始めた(過半数はすでに受け取った)が、挺対協などの愛国左翼団体(ベクトルは反対だが、そのご都合主義的な歴史歪曲において、日本の極右団体やネトウヨと同レベルの悪質なものと僕は理解しています)は、あれを反日政治運動のシンボルとして利用していて、文政権はそういう連中の「熱い支持」のもと誕生し、世論もそれに引っ張られているので、それをおもんぱかって「合意に沿った努力」は何もしていないのです。

 しかし、そもそもそういう「韓国に負担になる」話は“不正”に秘密裏に行われたものだから、無効なのだと、その作業部会なるものは言っているのです。「外務省は交渉の過程で『脇役にとどまり、核心争点について意見を十分に反映できなかった』」とあるのは、国家間の交渉だったはずなのに、外務省はつんぼ桟敷に置かれて、対等な交渉にならなかった、それは不当なことなので、その意味でも合意は無効とみなされるべきだ、そんな含みで言われていることなのでしょう。そういうのはこちらのあずかり知らないことで、たんなる韓国の国内事情によるものではないのかと言いたくなりますが、そうは全然思わないらしいところがいかにも“韓流”なのです。

 ともかくこれであの合意が「不正」なものだったのがわかった。日本人よ、わかったかということで、文大統領はそれを受けて次のように語ったとのこと。こちらは朝鮮日報日本版の記事(12/29 9:53配信)です。

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領は28日、外交部(省に相当)長官直属の「韓日従軍慰安婦被害者問題合意検討タスクフォース(TF=作業部会)」が前日発表した報告書と関連して、2015年12月の韓日慰安婦合意を認めることはできないという見解を正式発表した。文大統領が発表した声明文は、事実上、合意を白紙化するという内容だ。しかし、外交消息筋は「韓日慰安婦合意がもたらす外交的影響を考慮し、合意破棄や再交渉要求は正式にはしないだろう」として、政府が「第3の案」を模索していることを示唆した。
 文大統領は同日、大統領府の朴洙賢(パク・スヒョン)報道官を通じて発表した声明文で、「この合意は両国首脳の追認を経た政府間の公式の約束だという負担にもかかわらず、私は大統領として、国民と共にこの合意で慰安婦問題は解決できないことをあらためてはっきりと述べる」と言った。韓日慰安婦合意文には「この問題(慰安婦問題)が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」とある。文大統領の声明文は、これを認められないということになるため、「合意無効化宣言」という見方も出ている。大統領府関係者は記者らに「破棄や再交渉といった用語は適切ではない。後続措置を来月初めまでに用意する」と言ったが、隣にいた別の関係者は「白紙化」と言った。


「意味わからん」とはまさにこのことです。「文大統領が発表した声明文は、事実上、合意を白紙化するという内容」であるにもかかわらず、「外交消息筋は『韓日慰安婦合意がもたらす外交的影響を考慮し、合意破棄や再交渉要求は正式にはしないだろう』として、政府が『第3の案』を模索していることを示唆した」というのですから。

 要するに、それはこういうことなのでしょう。あの「合意」に基づく日本側の「十億円拠出」などは是とするが、大使館前やあちこちの慰安婦少女像の撤去などは「もってのほかの不当な要求」なので、それはそのまま放置し、その無限増殖(アメリカはもとより、世界中に拡散中)も許す。そして「謝罪」もこれまでのものではとうてい十分とは言えないので、「より深い、徹底した謝罪」を日本側から引き出す。それは実質的には「合意破棄・再交渉要求」ですが、そんなことをすると日本が怒るにきまっているから、表向きはそうせず、「後続措置」なるものを検討する、というのです。

 でも、どうやって? そんな名案はないので、日本側は合意は一方的に破棄されたとして、十億円の返還を要求し、最悪の場合は、「おまえらみたいな奴に誰が謝罪するか!」となって、そちらも撤回することになるでしょう。一昔前なら、間違いなく戦争になる。

 別の毎日電子版12/28 20:24記事によれば、

 文氏は声明で「被害者中心の解決と、国民とともにある外交という原則に基づき、早期に後続措置を検討」することを指示した。同時に対日関係を悪化させる意図はないと強調。歴史問題と他の協力案件は切り離す「2トラック外交」を推進していく考えを示した。

 というのですが、この慰安婦合意はたんなる「歴史問題」ではない。国家間で交わした正式な合意なのです。そちらを一方的に反故にしておいて、「あの件とは別に、友好的な日韓関係を構築しましょう」なんて屁理屈は韓国以外では絶対に通らないでしょう。

 要するに、英語ではお月様(Moon)になる文大統領は、相手国は無視した自分にだけ好都合なやり方を「2トラック外交」と称しているだけなのです。lunar(月の)から派生した名詞(形容詞の用法もある)に lunatic というのがあって、これは「愚か者・少々頭のいかれた人」の意味ですが、ルナティック大統領と呼ばれても仕方がない。僕は今後そう呼ぶつもりです。

 文大統領は先頃中国を訪問し、習近平のご機嫌を取り結ぼうとして失敗し、けんもほろろの扱いを受けて、韓国メディアは「中国の傲慢」を揃って非難したそうですが、何の効果もなかったとはいえ、文大統領がその際迎合手段に用いたのは「反日共感のアピール」でした。北朝鮮のミサイル危機のさなか、トランプが訪韓した際は、「独島エビ」なるものをメニューに入れ、元慰安婦のおばあちゃんをトランプに抱きつかせる演出までした(トランプは相手が何者なのか、知らなかったようですが)。THAAD配備をめぐって韓国はアメリカと中国の板挟みになり、どちらにも逆らえないのが辛いところですが、前任者の朴槿恵大統領の「言いつけ外交」と同じで、日本の悪口を言ってさえいれば立場がよくなるかのごとく錯覚しているのです。国内向けにはそれが有効だというのなら、韓国人というのはつける薬のない馬鹿の集まりだということになるでしょう。

 実際、こうした韓国政府の無思慮な対応はかつてないほど日本人の嫌韓感情を高め、右翼の世論浸透力を増大させた。根は嫌韓の安倍政権のサポートにもしっかりなっている。アメリカ政府も内心アホではないかと思っているのはたしかで、中国は日韓が不仲の方がいいから「もっとやれ」と煽るでしょうが、腹の中には侮蔑心しかない。それで韓国に何か得をすることがあるのか? 李氏朝鮮の昔から、かの国は「事大主義」外交にこれ努め、それは要するに日和見外交でしかなかったわけですが、中国に日和ったり、日本に日和ったり、ロシアに日和ったり、とにかく節操も何もなかった。無駄にプライドだけ高いのは今と同じですが、それで信用が得られることはなく、その事大先も冷徹な現実認識に基づくものではなかったため、かえって自国の安全を害する結果になったのです。公の観念はどこへやらの、両班たちの私利私欲に基づくいじましい権力闘争と民衆搾取もひどかった。昔両班、今政治家・国家官僚と財閥で、基本的にそのあたり何も変わっていないように思われます。今はそのお粗末を糊塗するために反日感情を煽っているだけなのではありませんか。

 個人間でも、企業間でも、国家間でも、交渉事というものは相互の譲り合いなくしてはまとまりません。一方的な自己主張を双方が続けたのでは子供の喧嘩にしかならない。韓国の場合には、「こちらの言い分を全部呑め」と言っているのと同じで、それが客観的に正しいのならまだしも、札付きの愛国左翼団体が主張する史実無視の嘘まで受け入れろと言うのだから、それはどだい無理な話なのです。

 僕が「あの国はもう駄目だな…」と思ったのは、『帝国の慰安婦』の著者、朴裕河教授に対する執拗な訴訟です。民事だけでは飽き足らず、刑事告訴までした。その内容が百%正しいかどうかは知りませんが、あれは僕に判断できるかぎりでは実に良心的な本です。どこに慰安婦の心を深く傷つけるような内容があるのかさっぱりわからない。あれは慰安婦の女性たちの人間性に対する敬意に満ちていると、僕には感じられました。その言葉尻を文脈抜きに捉えての論難は、いちじるしくイデオロギー的なもので、文学的な感受性がまるで欠けているからああいう難癖になるのではないかとしか思えないものです。

 朴裕河さんのようなアプローチですら許されないという国と国民相手に、どうやって和解しろと言うのでしょうか? 天皇陛下を元慰安婦女性たちの前で土下座させるまでしないと、彼らは許さないかもしれません。いや、それでもまだ日本にかつての植民地支配を正当化するような主張をする人間がいるかぎり許さないと言うでしょう。他でもない、挺対協のような異常な団体の執拗な反日プロパガンダのおかげで、日本ではそういう人が増えてしまったのですが。

 文政権は平昌五輪に合わせて安倍首相の訪韓を要請しているようですが、今回の件でそれに応じない決心をしたことは確実でしょう。首相が誰でも、これでは行くはずがない。再交渉に日本政府が応じるはずもない。これまた、誰が首相でも同じです。

 韓国政府は今後、どうするつもりなのか? 先ほどの朝鮮日報記事はこう続けています。

 しかし、合意破棄を要求する関連団体の考えと「対日外交」のはざまで代案を見いだすのは容易でない。作業部会が検討結果報告書で「非公開部分」として記述した事項に対する見解をどう整理するかで、ジレンマに陥っているという。
 作業部会の発表によると、朴槿恵(パク・クネ)政権は韓日慰安婦合意時、「第三国における慰安婦関連の像・碑設置」について「このような動きを支援しない」と言ったという。また、「韓国政府は今後、『性奴隷』という言葉を使用しないでほしい」という日本の要請にも「韓国政府の公式名称は『日本軍慰安婦被害者問題』だけ」と答えていたとされる。慰安婦関連団体などはこれを「裏合意」と規定し、政府もこれを積極的には否定していない。そうならば、文在寅政権としては海外での少女像設置を支援し、「性奴隷」という表現も使わなければならないことになる。しかし、それでは国際社会に対して「合意破棄」という負担を抱えることになる。
 政府が「『非公開内容』は両国間の『合意』ではなく、前政権が発表した『政府見解』に過ぎない」という論理を持ち出してくる可能性もある。これなら「見解変更」をしても合意破棄ではないと主張することができる。だが、そうすれば、「朴槿恵政権が裏合意をした」と批判する余地がなくなる。「政府は今後『性奴隷』という言葉を使い、国際社会において第三国での慰安婦関連像・碑の設置を支援するのか」という質問に、魯圭悳(ノ・ギュドク)外交部報道官ははっきりとは答えず、「政府措置内容にこうした内容も含まれると思う」とだけ言った。
 大統領府は「作業部会の報告書発表後に文大統領と安倍晋三首相の電話会談は行われておらず、今後も予定はない」と明らかにした。しかし、政府は韓日関係の悪化が韓米関係に及ぼす影響を考慮し、報告書の内容と今後の政府方針について米国とは意見を交わしたとのことだ。


 全くもって面妖な「意味わからん」議論ですが、要するに、近代国家にはあるまじき整合性のない対応を、どう正当化するかに文政権はこれから腐心することになるということです。どんな理屈をこじつけたところで、それは所詮屁理屈でしかない。わが国としてはそうした「本末転倒の李氏朝鮮的形式論理」にお付き合いする必要は毛頭ないわけで、韓国は自らを窮地に陥れるだけになるでしょう。

 そうすると、韓国はまた自らを被害者として日本を悪しざまに言うかもしれませんが、そういうのはもうほっとけばいい。ただ、またぞろ嘘を言い散らかされては困るので、外国に向けては辛抱強く、どうしてこうなったかという経緯をきちんと説明し続けなければならないでしょう。

 これで北朝鮮問題に対する協力関係の構築も一段と難しくなるでしょうが、それは致し方のないことなので、独自の情報網の確立など、韓国を当てにしなくてもすむように、そこらへんはできるかぎりの対応を取ってもらいたいものです。日韓が不仲では困ると、あの慰安婦合意もアメリカのプッシュがあって成ったもののようでしたが、文政権でまたそれは白紙化したのです。アメリカも「またか…」と顔をしかめているでしょうが、「これが韓国なのだ」という認識を新たに、先に進むしかありません。文大統領は親北朝鮮で有名ですが、北朝鮮と韓国のどちらが日本にとっては面倒な国なのか、わからないと言う他はありません。僕にはこれは「彼我の歴史認識の差」というより、精神病理学的な問題の側面の方が強いように思われます。「恨(ハン)の文化」と言いますが、この種の他罰主義の権化みたいな一方的な執拗さは「文化」というより「病理」の範疇に入るでしょう。

 尚、挺対協その他の団体は、あの一方的な誇張された主張と共に、今後も世界中に「従軍慰安婦像」をばらまく「運動」を続けるでしょう。それに対しては、慰安婦問題に関するできるだけ公正・客観的な英文資料(それはネトウヨ的な好都合な主張を並べただけのものであってはなりません。それでは彼らと同じレベルになる)を作成し、日本人に対してもその和訳を公開した上で、世界中の政治家、文化人、歴史研究者たちに国費で無料配布するなど、それに応じた措置を取るべきだと思います。ヒステリックにではなく、あくまで冷静にそうするのです。聡明で行動力もある河野外相に期待します。

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「もり・かけ・スパ」の3点セットと政治の無気力

2017.12.09.15:00

 次は昨日の時事通信の記事です。

 立憲民主党の辻元清美国対委員長は8日午前、森友・加計学園問題に加え、スーパーコンピューター開発会社による詐欺事件についても政府を追及していく考えを記者団に示した。辻元氏は「もりそばと、かけそばだけだと思っていたら、スパゲティまで出てきた。もり・かけ・スパだ」と語った。
 また、辻元氏は次期通常国会に向け、民進、希望、共産、自由、社民5党国対委員長と構成する「野党国対連絡会」を設置する方針を明らかにした。従来の不定期に集まる会談形式ではなく、定例会議の場として連携強化を図る。


「麺類ばかりでは健康によくない」と思う人が多いでしょうが、この食えたものではない「もり・かけ・スパ」の3点セットと共に安倍は「総裁3選」に進もうというわけです。客たちの間では「いい加減、シェフを変えてもらいたい」という意見の方が多いのに、「競合店がないおかげでこれでももつから、当分はこのままでいいや」というのが自民和洋麺レストランの方針らしくて、一体何なのかよくわからない立ち位置の、「影のマネージャー」の二階何とかという人相の悪いじさまがいて、「シェフ3選」を後押ししているという話です。おまえ、客のニーズなんか何も考えてないだろ、と言っても無駄で、売り出し予定の「アベ改憲鍋」はそこそこ売れるだろうと、勝手に「想定」しているのです。客はネトウヨと日本会議関係者しかいないと思っているのか、それとも北朝鮮相手に「打つ手なし」なのがそれで変わるとでも思っているのでしょうか? 万事に一面的で、多様な選択肢を考えられない無能な安倍政権のままではどうしようもない、というのが実情なのですが、愚かな国民はそれには気づいていないから、それを利用して改憲に持ち込めればもっけの幸い、ということなのかもしれません。

 この「スパコン疑惑」については、今週号の新潮が「『麻生』もお友達だった『スパコン長者』の危険な人脈」と題したまとまった記事を載せています。それによれば、この「12月5日に東京地検特捜部に逮捕されたのは都内のベンチャー企業『ペジーコンピューティング』の斉藤元章代表(49)」で、経産省所管のNEDOから受け取った助成金を騙し取ったというもので、金額は4億3100万円(その後の捜査の進展によっては額がさらに膨らむ可能性もある)。手口は、その選定事業で、実際にかかった額より多く水増し請求して、それをネコババしたというものです。興味深いのはこの社長は、あの「詩織さんレイプ事件」の犯人にして、『総理』など二冊の安倍ヨイショ本の著者、元TBSワシントン支局長・山口敬之のスポンサーでもあるということで、山口はこの社長が借りた「都心の超高級ホテル(『ザ・キャピタルホテル東急』)の一室に自宅兼事務所を構えましたが、この元々の借主が斉藤社長」だとされていることです(家賃がべらぼうに高いので、山口に支払えるはずがない)。要するに、これまた「安倍人脈」なのです。「総理のご意向」で獣医学部新設にこぎつけた加計学園は「建設費水増し疑惑」ももたれていますが、こちらはモロ「詐取」で、それが安倍絶賛本の著者であるレイプ犯ともつながっていたというのだから、「安倍人脈」の素晴らしさがあらためて強く印象づけられるのです(時代錯誤の「教育勅語暗唱教育」に「感動」した「オカルト右翼女房」アッキーの、森友小学校新設のための“力添え”については、今さら付け加えるまでもありません)。

 これには、しかし、もう一人の「大物」が絡んでいる。それが「麻生副総理兼財務大臣」だというのですから、この政権の「ドブ池」ぶりがよくわかろうというもので、今後の東京地検特捜部の活躍が期待されるところです。またもや「総理のご意向」が働いて、途中でポシャるなんてことはないように願いたいものです。

 ふつうなら「もり・かけ」問題で政権は倒れていますが、新たに「スパ」まで登場して、それでも「安倍3選」が揺るがないのだとすれば、この国はほんとに危険なアパシー状態に落ち込んでいると見なければならないでしょう。アパシー(apathy)というのは、「感情鈍麻・無感動・無関心・冷淡」の意味ですが、根本には「何を言っても、何をやっても無駄だ」という思いがあって、現実に目を閉ざして、無気力をかこつようになる症状です。そういう病的状態になった人間は、そこにある問題を指摘し、声を上げる人たちを疎ましく思い、「そんなことは大した問題ではない」と言う。何もしない自分の状態を無意識に正当化しようとしてそうなるのですが、そちらの自覚はないのです(前々回も指摘したように、それは元はといえば安倍の「平気で嘘をつく性格」によって真相解明が止まってしまったために生じた事態ですが)。

 僕の見るところ、これは国民の側にも、自民党内部にも両方ある。それで惰性で現状維持を続けようとするので、問題を言い立てる方も、そういう多数派のアパシーに妨げられていつまでも解明が先に進まないと、やがて同じように「この国では何を言っても、何をやっても無駄だ」と感じるようになってしまうでしょう。安倍政権はそういう内外両方のアパシーに支えられて成立している。それが「積極的支持はないのにまだ政権支持率が5割前後ある」という不思議な結果をもたらしているのです。何より問題なのは、こうした状態が異常なことであることに気づかないことでしょう。

「緑のたぬき」に救われた「もり・かけ」安倍のお粗末

2017.10.24.15:51

 衆院選、議席がどうやら確定したようですが、安倍政権は選挙直前でも支持より不支持率の方が高かったのにこの結果で、オウンゴールの「小池サマサマ」が本音のところでしょう。自民大勝の「陰の功労者」が小池百合子であったことは間違いありません。まあ、彼女の「(民進議員を丸ごと)受け入れるつもりはさらさらない」「排除いたします」発言のおかげで、立ち位置の明確な立憲民主党が誕生し、大躍進を遂げたことはめでたいので、僕は別に怒ってはいないのですが、あそこまで嫌われなければ同じ右翼政党として自民票をもっと食って、自民の議席をあと五十ぐらい減らせていただろうにと、それは残念です。そうなると自民内部からも安倍の責任を問う声が高まり、彼の「3選」は完全に消えた可能性が高いのです。

 この点、安倍晋三の「悪運の強さ」は認めざるを得ないでしょう。敵と味方という違いはあるが、金正恩とトランプ(オバマと違って安倍と相性がいいというのはよくわかる)という、ロクでもない海外の二人の政治指導者に助けられ、今度は「もり・かけ」のピンチを新たな「悪党」、「緑のたぬき」こと小池おばさんに救われることになったのです。憎悪、バッシングの対象も、すっかり小池百合子に移った観がある。「初の女性首相」どころの話ではないので、都政運営も多難が予想され、何とかその任期を務め終えたところで、政治家としてはジ・エンドになってしまいそうです。最初のあの颯爽たる登場ぶりからは考えられない急転直下の落ち込みぶりで、諸行無常の鐘の音、ですかね。お遍路姿になって四国八十八ヶ所巡りをする小池氏の「密着取材」番組を、僕らはいずれテレビで目にすることになるかも知れません(民進の菅直人元首相も、そんなことしてませんでしたっけ? 彼が今回当選できたというのは僕には驚きでしたが、立憲民主党の災いとなるおそれがあるので、いい加減軽挙妄動は慎んでもらいたいものです)。

 今や「絶望の党」と化した「希望の党」が今後どうなるかは知りませんが、「小池のせいで負けた」という怨嗟の声が関係者の間には広がっているようなので、それも元をただせば「小池人気にあやかりたい」という浅慮からくっついたにすぎなかったのだから、現金なものですが、「小池党首」が売りになるどころかマイナスにしかならないとなれば、「小池外し」に動いたり、党を解体して別の党を作るなどの動きが出てくるでしょう。どのみち「プチ自民」にすぎないのだから、どうとでも好きにして下さいという感じですが、内紛が続いてニュースになることが多くなれば、選挙後も安倍自民を利することにしかならない。だからそれもほどほどにしてもらいたいと思います。

 大躍進で55の議席を獲得した立憲民主党は、山尾志桜里など無所属で当選した議員も取り込んで、60には達するでしょう。それはかなりのプレゼンスなので、共産・社民などとも協力しつつ、かつ世論にうまくアピールすれば、安保法制見直し、安倍自民の戦前回帰的憲法改正反対の世論を強化することができるでしょう。安倍は、「今年5月に『2020年の改正憲法施行を目指す』と発言したことについては『議論を活発化させるためだった』と説明(嘘つくな!)。『スケジュールありきではない』と語り、丁寧に議論を進める姿勢を示した」(毎日新聞)そうですが、これまでのようにロクな議論もないまま強行採決に突っ込むというようなことは断じて許すべきではないので、憲法改正問題でもしそれをやったら、安倍政権だけではなく、自民党自体が吹っ飛ぶ結果になるでしょう。今の日本はネトウヨや日本会議の天下ではないということを今回の立憲民主の躍進は示したと見ることができるので、彼らの活躍に僕は期待しています。

 一時「緑のたぬき」が話題を独占したとはいえ、「もり・かけ」問題も全然片づいていない。「アベの内輪鍋」や「ネトウヨ改憲そば」など食えたものではないということを、一般有権者によくわからせるような国会論戦をやり、マスコミもそのあたり、きちんと掘り下げた記事を書いてもらいたいものです。

田原総一朗のデタラメ会見

2017.10.14.14:52

 かねてから無責任なたわごとの多いじさまだとは思っていましたが、何考えてこんな時期にこんな会見したのかと、読んでしんから呆れました。

ジャーナリストの田原総一朗氏が会見(全文1)全党がリベラル、保守党がない

 これ、続けて読んでゆくと、(2)の表示が出てくるので、それをクリックすれば全部読めますが、記者も大した質問はしていないし、全体に杜撰が服を着て歩いているような漫談(昔から彼はそうなのですが)です。彼はだいぶ前に、安倍に「政治生命を賭けた冒険をしてみないか?」とある秘策(※)を授けたようなことを言って世を騒がせましたが、結局何も起こらなかったので、これはその人騒がせの続きのようなものかも知れません。

※ 具体的には、トランプ米大統領と会談し、6カ国協議復活の条件を聞き出し、中国やロシア首脳とも協議。その上で、関係各国の了承が得られれば首相は訪朝し、金正恩朝鮮労働党委員長に伝えてはどうかという提案をした。「首相は『ぜひやりたい』と答えた」という。(産経9.8記事より)

 少し順番に見ていきましょう。この中で田原氏は、安倍は北朝鮮問題に対処するために解散したのだと言っていますが、別に解散しなくてもそれはできるはずです。むしろこの時期に政治的空白を作る方が危ない。「年末から年明けにかけてアメリカが武力行使をする可能性がある。日本としてはそのために態勢をつくらなきゃいけない」というのですが、何で総選挙をやった後でないとその「態勢」がつくれないのか?

「もり・かけ問題」で野党から攻めまくられるから? じゃあ、選挙で小池流に言えば「リセット」すれば、「もり・かけ問題」は完全終了したということになって、心安んじて北朝鮮問題に「集中」できるということになるのか? 今のままでは政府に対応能力はないと。そう解釈するより他はありません。

 全体、田原氏の「安倍評」は、床屋政談レベルのものでしかありません。「もり・かけ問題」も僕は全然違う見方をしているので、森友学園の深刻さは、ここで言われている八億円の値引きもさることながら、ああいう時代錯誤の教育勅語教育に妻のアッキーが「熱烈感動」して設立認可に介入し、安倍もその思想に共鳴していた、というところにあるので、日本会議はじめ、安倍の応援団の異常な体質、それを彼らと共有している彼の「戦前回帰」感情、ネトウヨ性にあります。そういう男の「憲法改正」に危険なにおいを感じとるのはあたりまえの話なのです(安倍は「妻は騙された」と言っていますが、あの幼稚園でのアッキー講演の録画など見れば、そんな言い訳が通用しないのは明白です)。

 このじさまは昔から問題を何でも妙に矮小化してしまう悪癖があって、読み進むと(2)にこういう箇所が出てきます。

田原:小池さんの希望の党が憲法改正に賛成なので、私は憲法改正に手を付けると思う。ここで1つ大事なことを申し上げる。実は去年9月に安倍さんに会った。もちろん〓イ***イッテネ 00:56:08〓。そのときに、衆議院は与党で3分の2を取る。この間の選挙で参議院も3分の2を取った。いよいよ憲法改正だねと言いました。もう言ってもいいと思いますが、実はそのとき安倍さんが、実は田原さん、大きな声じゃ言えないけど、憲法改正する必要がまったくなくなりましたって言われた。なぜと聞きました。
 そしたら、実は集団的自衛権の行使を決めるまで、アメリカがやいのやいのとうるさい。アーミテージやなんかが声高に叫んでいます。日本でも岡崎久彦、北岡伸一、中西寛たちが集団的自衛権をやるべきだとさかんに言ってました。読売新聞や産経新聞もさかんに言ってました。ところが、集団的自衛権の行使を決めたらアメリカはまったく何も言わなくなった。満足したのでしょう。だから憲法改正をする必要はない。ただ、このあとがいい。ただ日本の憲法学者の7割近く、実は63%が、自衛隊は憲法違反だと言う。だから、憲法に自衛隊の存在を明記したいと思う。


 これだと、「アメリカがうるさいから憲法改正しなけりゃと思ってたけど、実はアメリカが言わなくなったから、自衛隊明記だけでよくなったんです」と安倍が本心から言ってるみたいで、それ以前に、安倍がやけに大人びた現実的政治家みたいな扱いです。

 ともちん(稲田)の防衛相起用一つ見てもわかりますが、安倍はそういう男ではない。ともちんの「色香」に彼が迷ったというのなら話はまた別ですが、彼には強いネトウヨ傾性があって、ともちんもそこが同じで、安倍応援団が熱烈に彼を支持するのも、そのためなのです。それは僕の偏見ではないので、それを証拠づける資料はいくらでも見つかるでしょう。安倍の「美しい国」の中身がどんなものなのか、少しは考えてからものを言ってくれ。百田尚樹あたりは正直にそれを語っていますが、安倍の「国家思想」も似たようなものなのです。

 要するに、安倍はこのじさまにはそういう対応をしたというだけの話でしょう(先の「政治生命を賭けた冒険」の話といい、「もう言ってもいいと思いますが」なんて勿体づけはこの人のお得意ですが、全体が田原氏の純然たる「主観」の産物という疑いもある)。自衛隊を明記して、それではい、おしまいというような話ですむはずがない。その次の、

 私は安倍さん、それは誤解だよ。実は憲法学者の63%、確かに朝日新聞の調査で自衛隊は憲法違反と言っている。しかし、だから憲法改正をしようと言っているんではなくて、逆です。今の自衛隊は軍事力世界第7位。当然ながら交戦力も戦力もある。だから今の自衛隊は憲法違反。だから軍縮をすべきだっていうのが憲法学者の意見、という話をしました。

 にいたっては、完全に意味不明です。要するに、その63%の憲法学者たちの大部分は、自衛隊は違憲だと言いながら、事実上それを黙認している。それはロジカルに考えればおかしな話で、ずるいと批判する人がいるわけですが、改憲して自衛隊を合法的存在にすると、それが「蟻の一穴(いっけつ)」みたいになって、ことに総理大臣が安倍みたいなネトウヨだと、なし崩しに軍国化の方向に行ってしまう恐れがあると考え、だから「違憲」状態の今のままの方が好ましいと思っているのです。少なくともそれがホンネでしょう。

 対外的にもその方がやりやすいと、従来は自民の政治家たちの多くも考えていた。軍を派遣しろというアメリカの要請にも「いやー、うちにはおたくからいただいたあの平和憲法というのがあって、あれがあるからどうにもならんのですよ」と言いつつ、のらりくらりとその要請を拒否できるというメリットがあったのです。現実政治家としては、そちらの方が賢いと、僕は思いますが。安倍はその口実を自ら捨て去って、「もちろん、出しますとも。ボクは男です!」と言えるようにしたいわけで、戦地に行くのはむろん、安倍ではなくて自衛隊員ですが、彼の呆れるほどのアメリカ追従ぶりを見ると、アメリカの要請を「毅然として断る」なんてできるわけがないので、いずれ確実にそうなるわけです(ついでに言うと、「親日派」と呼ばれているあのアミテージなんて、最悪です)。

 他は、自分が司会を務めていたあのつまらない八百長じみた『朝生』と、「私は3人総理大臣を失脚させてます」(ホントかよ)というたわいもない空自慢の類で、コメントする価値もない。こういう御仁に「ジャーナリストを目指す人々に対してアドバイスをお願いしたい」なんて、きく方が間違いでしょう。

「日本をどうこうする問題ではなくて、実につまらない問題」だという「もり・かけ問題」に話を戻すと、「かけ問題」は田原氏によれば、こうです。

 加計の問題も安倍さんは賄賂も何ももらっていない。あんなものは簡単で、委員たちに加計孝太郎は40年来の友人である。だけど友人だからといって、甘くするなと。きつく審査しろと一言言えばこれで全部オーケーだから。彼は神経がたるんで、めんどくさいと思った。だからまったく知らなかったと言う。この間閉会中審査で、初めて知ったのは今年の1月20日だと言った。去年だけでも7回加計孝太郎と飯を食い、ゴルフをしている。これを知らなかったというのを信じろというのは無理です。

 他の漫談と同じで論理の体をなしていませんが、誰も安倍が「賄賂をもらった」とは言っていない。「加計孝太郎は40年来の友人である。だけど友人だからといって、甘くするなと。きつく審査しろと一言言えばこれで全部オーケーだから」と言うのですが、逆に「友人だから甘くしろ」と言ったと疑われているわけで、だから通ってしまった。

 安倍はかねてからその度の過ぎた「お友達人事」が問題視されているわけですが、「神経がたるんで、めんどくさいと思った」で全部片づけてすむような話か、ということなのです。「めんどくさい」割には、彼はそのあたり、妙に“積極的”だからです。

 質問で取り上げられている「メディアへの圧力」に関しても、安倍官邸は驚くべきマメさを発揮してきた。気に入らないものには何でも「偏向報道だ!」と難癖をつける。そのため異様なまでに「自主規制」が進んでしまったわけで、上がフヌケすぎるというのはその通りですが、ここまでメディア規制に熱心な政権はこれまでなかったことも事実なのです。それは「小さな問題」ではない。戦前戦中の「翼賛メディア」に近づけようとしているのです。

 この人の話は万事この調子で、支離滅裂な語りで事を妙に矮小化してしまうのですが、それでも彼は「大御所」扱いされているのだから、こういうタイミングで、こういう無責任なことを言ってもらっては困る。全体として見ると「野党はつまらない『もり・かけ問題』を追及するしか能がない。北朝鮮問題が喫緊の大事で、安倍政権はそれに真剣に取り組もうとしている」みたいなトーンになっているので、自民の援護射撃を頼まれもしないのに自ら買って出ているのと同じになっているのです。

 こういうのに騙される人もいるだろうから、彼の話が実にいい加減なものであるということを説明しておきたくなったのですが、最後に会見冒頭の「政治家としての安倍の特徴」についての話に、一言コメントしておきましょう。田原のじさまはこう述べる。

 歴代首相は、政治家はそうなんですが、政治家になるときになんのために政治家になるのかということを考え、そして政治家になる決意をしました。彼はそういう決意をまったくしていない。おじいさんもお父さんも政治家だった。だから彼は家業を継ぐように政治家になった。そのことが彼の良さでもあります。割に誰の言うことでもちゃんと聞きます。普通の人です。

 最後の三文以外は、僕も大体同意します。祖父は岸信介、大叔父は佐藤栄作、父親はかつて「自民のプリンス」と呼ばれた安倍晋太郎。いずれも東大卒で、ことに岸信介などは学生時代、有名な民法学者の我妻栄と競い合うほどの大秀才だった。しかし、シンゾー君はどうにも出来が悪かった。東大生の家庭教師を雇っても、どうにもならない。努力も嫌いで、エスカレーター式で進学した大学でも全然勉強しなかった。そこらへんは妻のアッキー(こちらはふつうなら上がれるはずの付属先の大学にすら上がれず、専門学校になった)とも共通していますが、典型的な「毛並みがいいだけのボンボン」だったのです。

 それで、家業の政治家を継いでみたものの、自信はなく、コンプレックスに苦しめられた。別に学歴がなくても、自分なりに努力して何か自信をつけられるようなものがつかめればよかったのですが、そういうのが何もなかったのです。それで、アッキーが途中で「自分探し」に出て、妙な国粋主義とごっちゃになったオカルトにはまったのと同じで、辛抱強い勉強は不要な「わかりやすい」ネトウヨ思想(これは自然な自己肯定感に乏しい人たちにはしばしばアピールする)にはまってしまい、「戦後の左翼的自虐思想でダメになった日本を救おうとする国士」に、いつのまにかなってしまったのです。それが日本会議を初めとする「左翼全盛時代に恨みをもつ」右翼団体や、戦前回帰のメンタリティを強烈にもつ人々の目には「ダメになった日本を変えてくれる希望の星」として映り、「熱い支援」を集めることにつながったわけです(あの籠池理事長などもそうした安倍ファンの典型でした)。

 だから「危ない奴」だと僕は見ているので、そこらへんが田原のじさまあたりとは全く見方が違う。憲法改正も、彼はあの「偉大な祖父」もなしえなかったそれをやって歴史に名を残したいのだろうと思うので、外部的な事情がどうのというのは付け足しなのです。心理学でいう「コンプレックスの補償」が、彼の憲法改正実現願望の背後にはある。僕はそこに彼のもう一つの病的な「公私混同」を見るので、動機がそれではロクなことにはならないと懸念しているのです。

 田原氏には、しかし、こういうのは全然問題にならないわけです。そもそもそういう問題意識は初めからない。彼は一種のニヒリストです。思想などというものは信じず、ただ政治に駆け引きと打算のせめぎ合いだけを見る。だから歴史の転換点で思想や心性が果たす働きの恐ろしさというものも過小評価してしまうのですが、あまり物事を深く考えない人には、彼のそうした言説が現実的で、大人びたものに見えることもあるのでしょう。

 幸いもうお年なので、しばらく我慢していれば、この人のやたら穿ったように見えて平板すぎる支離滅裂な思いつき話も、聞かなくてすむようになるだろうと思いますが、結構まだ影響力はあって、有害に思われるので、「世のため人のため、そろそろ引退をお考えになってはいかがでしょう?」と申し上げたくなるのです。

戦略的投票のすすめ

2017.10.12.14:33

 マスコミ各社の世論調査結果が出ていますが、全部大体同じで、安倍自民はほとんど議席を減らさず、楽々「単独過半数」を確保する情勢のようです。希望の党は不評に沈み、よくて60前後(公示前、議席をもっていた候補者は57)、野党で一番勢いがありそうなのは希望の党に「排除」された議員が集まった立憲民進党だというのだから、皮肉な話です。

 日本人はこうした「排除」のような言葉に敏感です。都議選の時、安倍は例の「こんな人たち」発言で不評の上塗りをして、「歴史的大敗」に追い込まれたわけですが、小池百合子もやってしまったわけで、元々民進党のリベラルとあの「別の自民」の希望の党が政策的に合致するわけはないから、丸呑みすると正体不明になってしまうので、僕は当然だろうと思いましたが、「言葉を間違えた」のです。

 おまけに、将来抱き込みを図りたい公明党の候補や自民のお友達議員のところには対抗馬を立てず、立憲民進党候補には必ず刺客を送る、なんて不可解なことをし始めたものだから、「一体この新党というのは何なんですか?」ということになったわけです。安倍自公政権の暴走にストップをかけるのかと思いきや、そちらは置いといて、野党潰しの方に熱心では、「安倍のお友達」の一人でしかないことになってしまう。そこらへん、ただの「頭の悪いおばさん」でしかないのではないかと疑われてしまったので、「小池旋風」なんて吹くはずがない。何でそのかんたんなことに気づかなかったのでしょう?

 とにかくこれで「希望の党」なるものは完全に終わってしまったので、「保守票を食って自民の大幅議席減を実現してくれるかも」という僕の期待はあっさりしぼみました。今回の小池騒動の唯一の評価できる点は、立ち位置の明確なリベラルの立憲民主党を誕生させたということだけでしょう。前に「民進のリベラル派は新党を作ればいい」と書いた僕としては、その点にだけは満足です。

 にしても、「希望の党と立憲民主の票の食い合い」なんてマスコミが書いているのは、あれは何なのでしょう。そういうことをすると自民が「漁夫の利」を得ることになるわけですが、希望の党は保守なので、その中身からして「自民との票の奪い合い」になるのがロジカルな帰結でしょう。希望の党を「リベラル」だの「革新」だのと勘違いする人が誰かいるのか? 初めから支持層は違うはずなので、この二つを並べた場合、「どちらにするか迷う」のが本来おかしいのです。

 こうも不人気ではもはやその期待はできませんが、僕は希望が自民の票を食って議席を激減させてくれることを期待していました。そうすると自公政権は変わらずとも、安倍は確実に退陣に追い込まれる。総裁3選の目は完全に消え、拙速な憲法改正も阻止できる。彼の「お友達優遇」の韓国並情実政治の拡大にも、これ以上つき合わされなくて済むのです。現段階では、それは望みうる最良の結果です。

 しかし、小池新党、希望の党が野党のリベラル勢力相手に戦い、混乱した有権者の票を二分して、組織票で固めた自民候補の当選を容易にするということになると、不人気な安倍政権の延命を手助けすることにしかならないわけで、「衰弱した安倍政権への助け舟」以外の何ものでもなくなってしまうのです。よっぽど頭が悪いか、小池=安倍の密約でも裏にあるのか、そのどちらかでしょう。

 こういうのは好意的に見ても「合成の誤謬」でしかありませんが、それ以前に希望の党が戦略を間違えたのは明らかで、「私たちは保守だが、今の腐った安倍自公政権とは違うので、それと正面から戦う。必要ならそのために野党とも連携する」と宣言して、自民との対決の構図を鮮明にすれば、こうはならなかったでしょう。ところが、そこが逆だったのです。「敵は本能寺」とばかり、自民ではなく、いちいち立憲民主の候補には刺客を送って、この世から左派やリベラルは撲滅しましょう、なんてことをやって何とする。

 結局、安倍政権の暴走を止めたい有権者はどうすればいいのか? 自民、希望の党、立憲民主の三つ巴になっている選挙区では立憲民主に票を集中させて当選させる。自民と希望その他零細野党の構図のところでは、自民候補に一番勝てそうな候補者に投票する。自民の議席を減らすのが目的なのだから、希望の候補が勝てそうなら、リベラルの人でもそれに入れるのです。逆に保守派でも、安倍政権の存続を望まない人は立憲民主に入れて当選させるとか、戦略的に行動するのです。どのみち今回の選挙で自公政権そのものは存続するのだから、野党に政権が移ってしまうことはない。保守の人もそれは心配しなくていいのです。

 一番憂鬱なのは、僕がいる宮崎2区みたいに、野党の有力候補がゼロのところです。当地では選挙の公示の段階で、自民の2代目政治家に「当確」が出ている。国会での存在感は恐ろしく稀薄な御仁ですが、父親の代からの後援会組織がしっかりしていて、「腰が低い」と地元では評判がよいらしいので、僕は毎回死票を投じに投票所に出向いている始末です。これまでのところ、野党で「これは」という候補者が立ったことは一度もない。共産党も、年功序列か何か知らないが、こんな年寄りではなく、もっと若くて見栄えのする候補はいないのかといつも思うので、今回はこれに「幸福実現党」なる、例の「霊言教祖」率いる当選者ゼロの記録を更新し続けているカルト政党の候補者が加わるという恐ろしさです。比例の「清き一票」が何とか活かされたかと自分を慰めることしかできない。スーパーみたいに、僕のようによく考えて選挙に出向いている人間の票は「ポイント10倍」ということにしてくれませんか?

 以上、こんな国はアホらしくてやっとられんなと思いつつ、書いてみました。
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