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香港の若者

2019.11.19.16:14

 李栄薫編著『反日種族主義』日本語版を買って読み、「確かにこれはいい本だ」と感銘を受けたので、それについて書くつもりだったのですが、先にこちらを書いておきます。

「妊婦に催涙スプレー」「出歩くだけで逮捕」荒れ狂う香港で若者に広がるある言葉

 一読するだけでそのすさまじさがわかり、逮捕者もすでに3400人に達している(大半が若者)という話ですが、記事の見出しにある「ある言葉」というのも尋常ではない。

「国際的な支援を求めてはいますが、香港は大国間のせめぎあいのゲームの駒にされているようで、過度な期待はしていません。とはいえ、ツイッターなどSNSを使って香港の状況をより多くの世界の人々に伝える努力はこれまで以上に重ねます。いつの日か、警察や官僚が、今犯している人道、国家犯罪に関して、国際法廷で裁かれる日を夢見ながら」

 そういった厳しい状況の中、若者たちのなかで広がりつつあるのが「攬炒(ラムチャオ)」(死なばもろとも)という覚悟だ。

 これは、警官を巻き込んで死んでやるといった意味ではない。習氏が香港人の「自由と民主」を認めないなら、中国経済にとっても欠かせない香港の国際金融センター機能を麻痺(まひ)させ、失業、給与カットなど、たとえ自分たちが不利益を被ることになっても、香港内の親中的な富裕層や中国政府に多大な打撃を与えてやるという覚悟だ。


 中国共産党、習近平と刺し違えても「自由と民主」を守る覚悟だというのです。これはたんなる「血気にはやった行動」というのではないでしょう。彼らはあの天安門事件などもよく知っているはずだからです。中国共産党政府がどんなえげつない手を使う権力かということもよく承知した上での「覚悟」です。また、抗議活動は若者、大学生が中心でも、一般市民の厚い支持がある。

 習近平が人民解放軍(この名称はほとんどブラックジョークですが)を使えばかんたんに制圧できるが、世界注視の中、それをやったのでは国際的非難が一気に高まるだけでなく、中国の世界覇権戦略も大ダメージを受ける。あんな国の経済援助を受けたり、その資本を受け入れたりすると、後でどんな目に遭わされるかわかったものではないと、すでに「中国ファースト」的態度が露骨すぎて警戒されるようになっているのに、悪評は決定的なものとなる。米中経済戦争のさなか、それは痛すぎるダメージです。

 かといって譲歩すれば、中国本土内の民主派が勢いづき、これまで従順だった一般国民も政治的な自由を求める方向に動きかねない。一党独裁の“共産党王朝”が揺らぎかねないのです。独裁国家特有のメンタリティからしても、譲歩すればボスとしてのメンツが潰れて、習近平では駄目だ、という動きが共産党内部から出かねない。強権に頼ってきた“孤独な独裁者”は、KGB上がりのロシアのプーチンなども同じですが、コワモテをやめれば同時に失墜するという危険を抱えているのです。

 原因を作ったのは「一国二制度」の約束をなしくずし的に反故にしようとした“驕れる独裁者”習近平の方なので、彼に同情するいわれは全くありませんが、その愚かさを認めることはなおさら彼にはできないでしょう。心臓発作でも起こして死んでくれれば、後継者は自分のメンツを気にせずに、香港に大きな自治権を認めることができ、それで騒乱は終息するかもしれませんが、習近平が病気だという話は聞かないので、それは望み薄です。

 結局はケチくさいエゴとメンツの問題で、家庭や学校、職場でも、それが原因で自分の非を認めることができず、トラブルが発生するのは日常茶飯ですが、こういう問題でもそれは同じなのです。韓国の文在寅なども、GSOMIAの破棄でアメリカを怒らせてしまい、これはまずいことになってしまったと内心狼狽しながら、しかし、それを引っ込めたのでは面目が丸潰れになるので、先に貿易規制を仕掛けてきた日本政府がけしからんのだから、それを撤回すれば考え直してやってもいいとカッコをつけて見せるのです。その前に自分がやらかした国際常識に照らして自己チューかつ非常識きわまりないことはきれいに棚上げして、とにかく自分のメンツを保とうとする。一国の外交より、自分のメンツが大事なのです。ここでうかつに譲歩すれば支持率が下がって、今度の選挙で負けてしまうということなのでしょうが、それもたんなる「自己都合」にすぎません。彼の場合、何ら明確な先の見通しもなく悪手を打ち続けるという点で、とくに頭が悪いとは言えるでしょうが、大本の問題はエゴなのです。

 中国の場合、今のあれはそもそも共産主義でも何でもありませんが、元からあの面妖なシステムには無理があるので、どこかで政治的・思想的自由を認めて一党独裁をやめる方向に舵を切らねばなりません。中国のゴルバチョフがいつか出現する必要があるのです(尤も、あれはその後がエリツィン、プーチンと来て、よろしくなかったのですが)。しかし、そんな気配は全くなさそうなので、今回の香港騒乱は軌道修正のきっかけになりうるものですが、かえって中国共産党幹部たちの恐怖心を強めてしまったようです。それゆえに彼らは身動きが取れなくなっている。とくに習近平は根が小心な人であるように思われるので、ここで折れると先々何が起きるかわからないという恐怖心を強くもっているのでしょう。

 これから先どうなるのか、僕のような素人にはわかりませんが、中国共産党政府は人民解放軍(抑圧軍と名前を変えた方がよさそうですが)を入れて正面から制圧することはできないので、今後も汚い手を次々繰り出して反対派の疲弊、解体をはかろうとするでしょう。元が巨大国家権力を相手の戦いなのだから、抵抗派に勝ち目は薄い。しかし、ここまで長引いているということ自体、中国共産党には大きなダメージで、印象戦では勝利に近いでしょう。

 翻って、今の日本は平和で、若者もおとなしい。例の「桜を見る会」がけしからんといった程度の話だけで、大学生たちはシューカツにいそしみ、受験生たちはセンターまであと二ヶ月で、他のことどころではありません。塾教師の僕も、眠そうな顔をしている生徒に、「ちゃんと寝ろよ。寝不足では頭が働かず、勉強の能率が上がらない」なんて言っているのですが、同じ惑星上に生きていても、所違えば意識もやっていることもまるで違うのです。

 これはいい、悪いの問題ではありませんが、これからやってくるであろう激動の時代、無風状態の中で、内向きの意識の中、十代、二十代を過ごした彼らがそれにどう対処するのか、できるのか、いくらか心配になることはあるのです。今の日本の若者は「安全意識」が発達していて、将来の生活設計なども怠りない一方、広い文脈でものを考えることが苦手で、思考の幅が狭すぎると感じることが少なくないので、せめて視野を広くもって、あれこれ考えながら、自分の勉強の意味づけをしてくれればいいのですが。

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慰安婦財団を勝手に解散しておいて、残った分を徴用工用補償に回すとは…

2019.11.06.22:41

 韓国の文喜相・国会議長が早大で講演して、新たな「思いつき発言」をしたとか。次は韓国・聯合ニュース日本版の記事です。

徴用賠償問題で韓国国会議長が新たな提案 「韓日企業+国民」からの寄付で支援

 この議長は、慰安婦問題とからめ、米ブルームバーグ通信とのインタビューで、次のように語ったと報じられた人物です。

「(謝罪をするのは)日本を代表する天皇がされるのが望ましいと思う。その方はまもなく退位すると言われるから。その方は戦争犯罪の主犯の息子ではないか。だから、その方がおばあさんの手を握り、本当に申し訳なかったと一言言えば、すべて問題は解消されるだろう」

 お粗末だったのは、ブルームバーグがこれを記事にして、日本側の反発が報じられると、ご本人は「戦争犯罪の主犯の息子」という発言はしていないと否定し、「げんに言ってるではないか!」と同通信がその箇所の音声を公開して、嘘がバレてしまったことです(上の訳は朝日新聞記事のもの)。そうでなければ、「日本は人の発言を曲解してインネンをつけてくる。反省もなく、盗人猛々しい!」とまた日本攻撃に利用されていたことでしょう。

 当時、文政権は「反日」イケイケドンドンで、政府が率先してそれを煽りまくっていたので、それに乗せられて国内向けの人気取りでそう言ったのでしょうが、この御仁は「ソウル大学法学部卒」の肩書をもつにもかかわらず、明治憲法下での日本の天皇の地位がかつての西洋的な絶対君主のそれとは大いに異なっていたことすら知らなかった、あるいは知っていても韓国の国内世論に迎合するためにそれを歪曲したのだろうと、いかにも韓国の政治家らしいご都合主義に苦笑させられたものです。「文」と名のつく人にはとりわけ問題が多そうだなと。

 彼のこの、「強制徴用被害者への賠償問題の解決法として、韓日の企業と両国国民の自発的な寄付を募り、被害者へ支援することを柱とする『1プラス1プラスアルファ』案」なるものは日本政府に全く相手にされていませんが、それもそのはずで、元弁護士の文在寅もこの文喜相も同じですが、リーガル・マインドというものを全く身につけずに卒業したらしく、順序を踏んだ思考ができていない。それで法学部を卒業できるとは、韓国の大学はよほどレベルが低いとしか思えないので、この講演の中でも彼は、

 韓国大法院(最高裁)の判決について、「韓国大統領や国会は現行法上、判決にともなう強制執行を中断させたり延期させたりする権限がない」と説明した

 そうですが、それなら、日本側の同意なしの日韓請求権協定の実質的な破棄は国際法上許されるのか、という問題になるので、前にも書きましたが、こういう判決が出てしまった場合、大統領としては「ちょっと待ってくれ」と言わねばならないのです。国家としての信用がかかっているので、国家間合意を一方的に破棄することはできない。日本と再交渉して方途を探るから、相手側の合意なしに一方的に日本企業の資産を差し押さえなどすると、「あの国は条約でも何でも自己都合で平気で反故にする」ということで国際的な信用を失ってしまう、そこはわかってもらわないと困ると、自国民を説得しなければならないのです。朴槿恵政権は最高裁でそういう判決が出ると困ったことになると、判決を遅らせるよう画策していたと言われ、文政権はそれはけしからんと、その関係者も処罰しようとしたのですが、そこには国際法的な配慮が働いていたのであり、感覚的には文政権よりよほどまともだったのです。

 しかし、彼にはそんな配慮はまるでなかった。「国内でこういう判決が出てしまったから、再交渉してもらう必要が出てきた。それに応じてもらえないだろうか」と日本政府に言ってきたというのならまだわかります。ところが、彼はそんなことは全くしなかったのです。「韓国は三権分立の国(外部からはそうは見えない)だから、それに口出しはできない」で終わりで、実質的な一方的破棄を当然のように見なしたのです。

 日本政府が十億円を拠出した慰安婦財団を勝手に解散してしまったのも全く同じです。心情的には、あれは朴槿恵政権の功績だったから是が非でも否定しなければならないというのがあったのでしょうが、そんな個人的・党派的な感情、都合のために、ここでも平気で国家間合意を踏みにじったのです。夜郎自大という言葉は文政権のためにこそある。

 しかし、あの解散は一体どういう名目で行われたのか? 次はそれに関する昨年11月24日付のレコード・チャイナの記事です。これは「香港メディアの文匯報」の記事の紹介なので、日本のものではない。日中戦争を戦った中国側の視点から見てそれがどう映ったかという点でも興味深いものです。

なぜ韓国は突然、慰安婦財団を解散したのか―香港メディア

 これを見ると、文政権が言うことをコロコロ変えていたことがよくわかりますが、後半部をそのまま引用(但し、〔〕は引用者の補い)すると、

 ところが21日に突然、韓国女性家族部が解散を発表したと記事は紹介。その理由について、「国民と世論の反応を考慮したからだ」と〔この記事は〕分析した。実際、「韓国国民の多くが不満と反対を表明しており、日韓の合意で慰安婦問題を最終的かつ不可逆的に解決したというのは、感情的に受け入れがたいものだった」と〔韓国政府は〕している。また、「被害者及び関係団体からの強い抗議」や、「合意に至るまでの秘密協議の状況が暴露され〔実際は韓国政府が進んで暴露した〕、日韓の政治協議が正常に行えなくなったこと」も原因として挙げている。

 記事は、日韓慰安婦合意には確かに重大な欠陥があるとしつつも、「朴槿恵(パク・クネ)政権と安倍政権との間での合意であり、これを破棄しないことは文政権にとっていくつかの利点がある」と指摘。それは、「国家としての威信を保てること」、「責任を全て朴元大統領に押し付けられること」、「金で慰安婦問題を解決しようとした安倍政権に責任を要求できること」、「この先日本政府に対し再び慰安婦問題を提出する余地ができたこと」だという。

 しかし記事は、問題の本質は「和解・癒やし財団」の解散が事実上、「日韓慰安婦合意」の破棄と同等の意味を持つことにあると指摘。「和解・癒やし財団」の解散で、日韓の「攻守」の立場が逆転し、日本政府は強制徴用問題や竹島問題について「攻勢」をより強め、国際社会において韓国政府の道徳や信用度を攻撃してくる可能性があると分析した。また、朝鮮半島の和平や核問題でも米国からの圧力を受けるようになるだろうとしている。

 結びに記事は、「韓国政府は『日韓慰安婦合意』に重大な欠陥があると考えているなら、日本政府に対し正式に再協議を要求すべきで、日本を説得し続けることが問題解決の王道だと思う」と主張した。


 最後の結論部は、全く道理にかなった話で、徴用工の問題でも慰安婦問題でも、それを日本政府が呑むかどうかは別として、「重大な欠陥があると考えているなら、日本政府に対し正式に再協議を要求すべき」だったのです。それで日本側が頭ごなし拒絶すれば、逆に日本政府が国際的非難の矢面に立たされることもありえたでしょう。しかし、繰り返しますが、驕った文在寅はそのような努力は何もしなかった。

 この慰安婦財団ではとくに、多くの元慰安婦の人たちがその賠償金を受け取った。問題はあのとことん難癖つける挺対協改め正義連で、僕はそれを「札付きの反日左翼市民団体」と呼んでいますが、慰安婦問題を政治利用してきたこの政治団体及び左翼労組などが文政権の支持母体なので、それを「韓国国民の多く」とみなして、それを正当化したのです。

 しかし、「最終的かつ不可逆的」という文言まで織り込んだあれを一方的に破棄することはいくら何でも近代国家としてはまずすぎる。それで「韓国外交部は日本や国際社会からの批判を避けるため、「慰安婦合意を破棄しないこと、日本政府に慰安婦問題の再交渉を求めないこと、『和解・癒やし財団』を解散しないこと」にしていた」のですが、文政権はそのあたりをどうするかも考えず、「突然、…解散を発表」してしまったのです。支離滅裂と言う他はない。朴槿恵、安倍憎しで凝り固まっていたのかもしれませんが、論理も順序もへったくれもないのです。

 解散はしたものの、日本政府は依然としてあれは有効だという立場に立っているから、残金の受け取りも拒んだ。そこで話はこの韓国国会議長センセイの講演に戻りますが、「あの残金も使おう!」という話になるのです。

 文議長は「両国企業の寄付金とするものの、責任のある企業だけでなくそのほかの企業を含め自発的にする寄付金形式」とし、「両国国民の民間寄付の形式を加える」と説明した。

 また、旧日本軍の慰安婦問題を巡る2015年末の韓日合意に基づき設立された「和解・癒やし財団」の残りの財源60億ウォン(約5億6000万円)を含めるとし、「このような基金を運用する財団に韓国政府が拠出できる根拠となる条項を作らなければならない」と説明した。


 全くもって支離滅裂な話で、あれは元慰安婦及びその遺族に渡されるべきおカネなのです。それをかの国政府はこちらに何の相談もなく勝手に「解散」してしまった。昔、請求権協定で徴用工の人たちに渡すべき分を韓国政府は勝手に使い込んでしまったのと同じで、慰安婦財団は解散してしまって残金が浮いているから、今度はそれを元徴用工補償に回せば「資金の有効活用」になる、素晴らしいアイディアではありませんかと、唖然とするようなことを平気でのたまうのです。

 国会議長ともなると、「超論理」を自在に使い分ける能力が必要とされるのかもしれませんが、行き当たりばったり適当なことを言って、行き詰まれば前後の脈絡なしにまた別のことを言い出すのです。なのに「韓国は理の国」だと自慢するので、意味がさっぱりわかりませんが、その言葉は紙のように軽く、国家間の合意や協定でさえ、「あれは前の政権が国民感情を無視してやったことなので、関知しない」とそれらを反故にすることに何のためらいも見せないのです。そういう国と国民に、どうやって対処すればいいのでしょう?

 今回の文政権の対応ぶりではっきりわかったのは、韓国は「自己都合」だけの国だということです。国と国との交渉事は、利害が対立するものならなおさら、双方の妥協と歩み寄りがなければ成立しません。100%自分の主張が通らなければイヤというのは幼児の特徴で、小学生同士のおもちゃなどの物々交換ですら、お互いの譲歩が必要だということはわかっている。それが「社会性」というものですが、今の韓国政府にはそれが全くない。前に結んだ約束に対する不満が大きくなったというなら、一方的に破棄するのではなく、相手に再交渉を申し出なければならない。それが理にかなったものなら、相手も譲歩してくれるかもしれない(してくれなくても仕方がない)。しかし、そんな努力は何もせずに一方的に破棄して、相手が怒ると、「賊反荷杖(賊が居直ることで、盗人猛々しいと訳された原語)」と逆ギレするのです。幼稚園児が国の舵取りをしているようなもので、とてもつきあいきれない。

 それで文政権は日韓関係を「最悪」と言われるような事態にまで追い込んだ。最近風向きが変わってきたのは、あのGSOMIAの破棄にアメリカが怒っているからです。元はといえば、慰安婦合意もアメリカの後押しがあってまとまった(僕もあれには驚いたほどで、安倍政権にしては最大限の譲歩でした)。文政権はそれをどちらもチャラにしてしまったのです。加えて、文政権は「大本営発表」を続けていますが、失策続きで経済の落ち込みぶりがひどい。一方的にラブコールを送っている北朝鮮の金正恩には事あるごとに罵倒されるだけ。トランプと来た日には「何であんな人が大統領になったのか」と世界の首脳が居並ぶ席で発言するほどです。また、ヨーロッパ諸国首脳に文は北朝鮮に対する規制緩和を説いて回って、「金正恩の代理人」と冷笑された。まともに相手にしてくれる人間は、外部に誰もいないのです。

 要するに、最近出てきた「対話姿勢」も全部、旗色が悪くなった彼の「自己都合」なのです。ところが、「親日派」を弾劾・追放してしまったために、政権関係者で日本とまともに交渉できる人間が誰もいない。それで、「天皇は戦争犯罪の主犯の息子」発言の国会議長まで駆り出さねばならなくなっているわけで、そのしょーもない御仁の「解決案」というのがこれなのです。「話にならない」と日本政府関係者に一蹴されるのも無理はない。

 にしても、「慰安婦財団の残金も徴用工補償に」という案など、荒唐無稽の域に属するので、「同じ日帝支配の犠牲者だから」という屁理屈で無理に正当化するつもりなのかもしれないが、通る理屈ではないので、そんなものを韓国国会の審議にかけても賛同を得られるわけはないでしょう。それが通るようなら、なおさら韓国は信用できないと、日本人は思うだけです。仮にそれが成立して再合意したところで、100%、問題はまた蒸し返される。

 だから無意味な話なのですが、早稲田でのその珍講演を、学生たちはどんな顔で聴いていたのでしょう。右翼の夕刊フジの記事によれば、「講演会場では、『上皇陛下に謝れ!』などとヤジが飛ぶなど、終始緊迫した雰囲気だった」そうですが、そんなことを言うのは右翼の活動家だろうから、右でも左でもないふつうの学生はこれをどう受け止めたのか。ネットで検索してみても、2ちゃんねるのネトウヨの罵詈雑言はあっても、その様子がわかるようなものは見つかりませんでした。今はあの大学の学生もお行儀がよくなっているので、そこに突っ込みを入れるというようなことはなかったのかもしれません。紳士的に「どういうロジックでそういうことになるのか、ご説明いただけますか?」と質問すれば面白いことになったでしょうが、質疑応答の時間は設けられなかったのか、そういう展開にはならなかったようです。大声でわめくより、そちらの方がずっとインパクトはあったでしょうが。

 何にせよ、文政権は日本での信用を完全に失った。日韓関係改善の糸口は文政権の退陣の他にはない。韓国内の保守派に対しても、日本に対しても、今後は「融和策」を取ってくるかもしれませんが、時すでに遅しで、朴大統領に対する弾劾のろうそくデモ以上の大規模デモが彼を待ち受けているかもしれません。権力を握った野心家が復讐心と功名心に駆られ、夜郎自大なふるまいに陥って自ら墓穴を掘るなど、韓流歴史王朝ドラマを見せられているようですが、それを地で行ったのがあの政権であり、文在寅だと言えるでしょう。あの非常識としか言いようのないチョ・グク事件なども、ドラマの一エピソードとしてはそれにふさわしいものです。

ユニクロの間の悪さと、韓国人の神経症的全体主義

2019.10.22.16:19

 先の日本製品不買運動の際、ユニクロの役員(岡崎CFO)が今の韓国社会の恐ろしさを知らないまま、「不買運動は長続きしない」と発言して、謝罪に追い込まれたことは記憶に新しいところですが、ここに来てまた「やらかした」ようで、続きがまたあるかもしれません。次の記事は第三者的な視点から見たAFP電の記事です。

ユニクロCM、韓国で取り下げ 慰安婦暗示・歴史修正と猛反発受け

 これに関する韓国メディアの記事は大量にありますが、「いくら何でもそれは被害妄想が過ぎるのではないか?」と疑問を呈したり、批判するようなものはほとんどないようです。いくつか例を挙げましょう。

韓国の大学生、「慰安婦」への冒涜で議論になったユニクロ広告のパロディ映像を制作(ハンギョレ)

保坂祐二氏「ユニクロ広告は嘲弄…日本人、韓国は自尊心ないと話す」(中央日報)

ユニクロの広告に…韓国中小ベンチャー企業長官「非常に腹立たしい」(同上)

 先には、

 2020年東京パラリンピックに参加する各国・地域のパラリンピック委員会(NPC)の代表らが集まる選手団長会議が12日、東京都内であり、韓国代表団は東京パラリンピックのメダルが旭日(きょくじつ)旗を想起させるとして、メダルのデザイン変更を大会組織委員会に要望した。国際パラリンピック委員会(IPC)のパーソンズ会長が明らかにした。
 パーソンズ会長は「伝統的な日本文化を扇で表現しているデザインで全く問題はない。組織委に対してデザインの見直しを指示するつもりもない」と語った。組織委の布村幸彦・副事務総長は「旭日旗を連想するという指摘は当たっていない」と述べ、韓国側にも個別会談で見解を伝えたとしている(朝日新聞)


 なんて事件もありましたが、それより前には、「米ロサンゼルス市のコリア・タウンにある公立学校の外壁に描かれた壁画が『旭日旗』を連想させるとして地元の韓国系コミュニティーが消去を求めていたことに関連し、冬休み中に実施される予定だった壁画の消去作業が(アメリカ人の反対を受けて)当面の間保留されることになった」(その後どうなったのかは知りませんが、壁画の製作者は「無関係」だと反論)などという珍事件まで起きているのです。

 こういうふうに何でも都合よくこじつけて被害妄想を募らせるのはある種の神経症の典型的な症状です。同じ韓国人でもまともな人たちは「何を言っているのだ?」と呆れているでしょうが、同調圧力が異常に強い社会なので、うかつに批判などすると袋叩きにされてしまう。だからマスコミも政治家たちも全部これに乗っかるわけで、まさに「反日種族主義」です。韓国は、この前のチョ・グク問題でも国論が真っ二つに割れましたが、「反日」でだけは国論をまとめることができる。内輪揉めが激しくなるとなおさら、「外部の共通の敵」にその分裂の収拾の糸口を見つけようとするのです。「反日」のときだけは内部の不和を一時的に忘れることができるから、それに中毒してしまうわけです。

 たまにはそのダシに使われる日本のことも考えてみろと言いたくなりますが、原因が自分の病的な精神構造にあるということを頑として認めようとしないのもこの手の人たちの特徴(そういう他罰的・責任転嫁的な逃避性向を自ら直視しないと、こういう病気は決して治せないのですが)で、「日本人でも良識のある人たちはこのように言っている」と、日本国内ではほとんど影響力をもたず、ほとんど賛同は得られないであろうような特殊な人たちの特殊な意見のみを引用して、「やはり問題は日本側にあるのだ」と、自分たちの思い込みを正当化しようとするのです。

 上の③の保坂何とやら氏の妄言は論外ですが、前にここにも書いた山口二郎氏や和田春樹氏といったかなり特殊な人たちや、挙句は日本では全く無名の統一教会信者まで担ぎ出しておかしなことを言わせるのには感心させられるので、先頃はこんな記事も出ていました。

日本社会に横たわる韓中への嫉妬、韓日関係を難しくする」

 これは文政権御用新聞のハンギョレの記事ですが、「進藤榮一・筑波大学名誉教授」が新たに登場して、こうのたまうのです。

 まず、冷え切った韓日関係はどう解決すべきか。進藤教授は最近のハンギョレとの電子メールでのインタビューで、安倍晋三首相をはじめとする保守政権だけでなく、日本社会全般に広がっている「潜在的嫉妬」感情が韓日関係を悪化させると説明した。進藤教授は「日本のバブル崩壊後、急速な経済発展に成功した中国と韓国に対する『潜在的嫉妬』が日本社会にある」と指摘する。同氏は「韓国、中国の経済発展と日本の長期低迷期間が重なる。『ジャパン・アズ・ナンバーワン(世界一の日本)』が終わりをむかえたことで、政府、財界、メディア、一般国民の間で中国、韓国に反発する感情が高まり始めた」という。日本社会の世代変化も影響したと分析する。日本の植民地支配など「戦争を知らない世代」が日本社会の主流となり、「日本が犯した歴史の過ちを忘れて狭い意味での『愛国主義』に閉じ込もっている。従軍慰安婦(性奴隷)、強制徴用問題などを解決しない日本を見る時、アウシュビッツの歴史的誤りをいまも謝罪し続けているドイツとは対照的」と指摘する。そして、進藤教授は「本当に心配だ。日本がアジアと世界の信頼を失うことになるだろう。困難であっても韓日の知識人、報道関係者、政治家、経済人が活発に交流し、連帯できる仕組みを作らなければならない」と強調した。

 その議論のステレオタイプぶりには驚きますが、最近の「嫌韓」というより「反韓」は、「潜在的嫉妬」などによるものでは全くない。従来のネトウヨの増加には日本の斜陽化がかなり関係していたでしょう。未熟な個しかもたない人間は集団的なものに自己同一化することによってしか自己肯定感を維持できないものであり、それ自体かなり馬鹿げたものであった「ジャパン・アズ・ナンバーワン」的な空虚な妄想にすがろうとしていた人間は近年の日本の衰退ぶりにショックを受け、排外的なナショナリズムや過去の歴史の美化に魅かれやすくなったとは言えるでしょう。しかし、それで今の日本人全般の韓国に対する不快感が説明できるわけではない。度の過ぎた韓国の独善性と、上に見たような病気としか言いようのない被害妄想的攻撃性に日本人はうんざりしているのです。

 ネトウヨ嫌い、安倍嫌いで周囲にはよく知られている僕のような人間まで韓国に強い嫌悪感をもつようになった背景には、あの『帝国の慰安婦』の著者、朴裕河さんに対する一連の裁判があります。あのあたりから「何だって!」という思いが本格的になったので、まともな民主主義国家であんな馬鹿な裁判は成立しえない。その後、朴槿恵政権のとき、日本政府が10億円を出して慰安婦財団を作ったときは、「あの安倍政権が?」とちょっと驚きましたが、今度は民間ではなく、政府が出資したもので、元慰安婦の人たちに“正式に”賠償できる道が開かれて、よかったなと素直に喜んだのです。ところが、文政権はそれをあっさり解散してしまった。慰安婦問題を政治利用してきたあの悪質な左翼市民団体、挺対協(現正義連)の言いなりです。彼らには「和解」を求める気などはさらさらない。対立を煽って攻撃を続けることこそが彼らの存在理由であり、目的なのです(その代表は旭日旗に反対するアジ演説などもぶっている)。モンスター・クレイマーの最たるものがあれなので、あんなものが大きな顔をして社会の前面に出てくるような国とまともにつきあえるわけがない。彼らの身勝手な史実歪曲と攻撃的な活動には驚くべきものがあって、文政権はそれを抑えるどころか、それに乗っかって日本非難をしているのです(日韓請求権協定破棄の何が問題なのかについては、すでにこのブログで何度も触れたので繰り返しません)。

 要するに、今の日本人の多くの「嫌韓」は安倍政権支持か否かとはほとんど関係がない次元から出ているということです。「潜在的嫉妬」とも何の関係もない。げんに今の韓国には経済を見ても政治を見ても、ノーベル賞は何十年たっても無理だろうという科学研究の内情を見ても、嫉妬の対象になるようなものは何もないのです。チョ・グク問題に見られた「入試の沙汰も親次第」といった不正ぶりに関してもそうです。どこに「潜在的嫉妬」を誘発するようなものがあるのか、よく考えてからものを言うがいい。

 こういう客観的に見て何の説得力もなさそうな議論を、「日本の良心の発言」として取り上げて報道するのは驚くべきナルシシズムですが、その規模と度合いは「日本スゴイ!」の今の一部日本人の風潮を楽に凌ぐものです。笑えるのは、ここで話はめでたく冒頭に戻るのですが、ユニクロの柳井会長の「暴言」が肯定的文脈で韓国メディアに次のように紹介されていたりすることです。

ユニクロ会長「日本は最悪、韓国が反日なのは分かる」…安倍政権に苦言

 16日、日経ビジネスによると、柳井氏は今月9日付に掲載されたインタビューで、日本が韓国を敵対視しているのは異常で、日本が韓国に反感を持つようになったのは日本人が劣化した証拠だという趣旨で主張した。
 柳井氏は「韓国にみんな(=日本)がけんか腰なのも異常。日本人は本来、冷静だったのが全部ヒステリー現象に変わっている」と話した。また「ああいう国民性だから、韓国の人が反日なのは分かる」としつつ「今、日本は最悪」と評価した。


 失礼ながら、柳井氏は商売に忙しすぎて、その経緯をご存じないのではありませんかね? ニワトリが先かタマゴが先かという議論があって、僕は若い頃、これを論理学の問題として考えて、「タマゴが先」という結論に達しましたが、その次のニワトリのところから因果関係を考え始めると、「柳井説」になることもあるかもしれないというだけの話です。

 この「日本最悪」の柳井発言に関しては、文春オンラインにえらく屈折した調子の次のような批判が出ていました。サブの「そこはかとなく感じる『お前が言うな』感の正体」というのがすべてを物語っているのですが…。

脱「ブラック企業」を掲げるユニクロ柳井正さんが喝破した「最悪な日本」とは

 これと重なるようにして今回のCM問題は起きたので、柳井氏がそれをどう考えておられるか、ご意見をお伺いしたいものですが、「こういうふうな無理なこじつけがなされるのも、全部今の日本人の態度が仕向けたことなので、韓国の人たちには申し訳なさでいっぱいです」というようなコメントが発表されるのでしょうか? それは韓国人の「けんか腰」で真の意味での自己肯定感に乏しい、「集団ヒステリー」的な側面が露わになったものと僕には見えるのですが、日本人にはそういうことを言っても、せいぜい上の山本一郎氏の皮肉ぐらいしか出てこなくて、「不買運動」に発展することもないので安心ですが、今の韓国でそんなことを言えば、「永久不買運動」が宣言されて、韓国ユニクロは今度こそ潰れることになりかねない。

 僕が言いたいのは、そんな国のどこにまともさがあるのかということなのです。戦前戦中のわが国の「鬼畜米英」スローガンと言論統制、ジャズや野球なんかも「適性音楽・スポーツ」として認められなくなったあの時代が想起されます。当時、洗脳された国民は進んでそうしたことに異を唱える人間を「非国民」として告発したのです。文政権の「すべてはうまく行っている」という繰り返される政府発表も、あの「大本営発表」に似ている。韓国は今ではすっかり「民主化」されたそうですが、それが日本の戦前戦中の全体主義にそっくりなのは、どうしてなのですかね? 北朝鮮との統一を前提に、それに国民を慣らせようとしている最中なのでしょうか?


正気の韓国と狂気の韓国

2019.10.14.16:36

 時期遅れの大型台風が東日本を直撃して大きな被害が出たようですが、自然には勝てないとしても、事前の準備や連絡で被害は最小限に食い止められたようで、50年も前なら、死者・行方不明者はたぶん数倍に達していたでしょう。河川の氾濫で水没した田畑や家屋は今後の後始末が大変だし、農家はせっかく育てた作物の全滅に胸を痛めているでしょうが、事前の対応が奏功して多くの人命が助かったことは喜ばしいことです。

 お話変わって、またもや韓国問題です。もういい加減に他のことにしたいのですが、次の記事は「なるほど」と腑に落ちるものだったので、根本認識としてそう了解して、後は黙って見ていればいいかと、区切りの記事としてこれを書くことにしました。

「本質は韓国の共産化」文在寅を暴走させた社会に潜む学生運動家、チョ・グクは枝、根本は…… 元韓国陸軍中将インタビュー

 冒頭の映像の演説は韓国人らしい派手なものですが、インタビューの中で語られていることはいたって冷静で、文政権に対する見方は僕のと大体同じです。トランプ政権が問題の一つを作り出していることにも触れられている。末尾の、

 最後に日本国民にお話ししたいのは、いま皆さんの前には2つの韓国があるということです。ひとつは、日本との友好関係を築き、同じ自由民主主義という価値観を信じて市場経済で発展してきた「これまでの韓国」。もうひとつは、韓国国旗を掲げながら、実態は北朝鮮化する「文在寅の韓国」です。
 文在寅政権が倒れれば、また日本やアメリカと同じ価値観にたつ、これまでの韓国が戻ってきます。大多数の国民は元の韓国に戻すべく頑張っています。もう少しの間、愛情を持って待っていてください。


 という言葉は、そのまま受け取るべきでしょう。イデオロギー先行の反日歴史教育が続く以上、日本人には受け入れがたい性質の「反日」勢力は生産され続けるでしょうが、今の文政権の「反日」ほどきちがいじみたものではなくなる。そうすると日韓関係改善の糸口も見つかるでしょう。前にも書いたようにおかしなファンタジーにとりつかれた「左翼過激派」が政権を取るなんてことになったから、ここまでこじれたのです。ここはそれを「中道」に戻す、韓国民の良識に期待したいと思います。

 もう一つ、同じ文春オンラインには、前に「二人の文」と書きましたが、文在寅の思想的“師匠”、文正仁・統一外交安保特別補佐官(68)へのインタビューのさわりも出ています(詳しくは文芸春秋11月号を見なさいということ)。

文在寅大統領の特別補佐官が大反論! 「日本は韓国に8億ドルを支払い、6800億ドルの利益を得た」

 僕はこの男を「諸悪の根源の一人」と見なしていますが、2ページ目にこういう話が出てきます。

 さらに文氏は、日本は請求権協定によって韓国に支払った8億ドルよりもはるかに多い金額を韓国から稼いできたことを指摘した。
「率直に言いますと、1965年から2018年まで50年以上もの間、韓国は一度も日本に対して貿易黒字になったことがないのです。逆に日本が韓国から稼いだ貿易黒字は6800億ドル。単純計算して、韓国に供与したお金の850倍の利益を日本が得たということです。インフレ率を考慮しても、100倍以上にはなります。私たちはずっと日本企業を信頼してきた。なのに日本政府がこんな政治的判断をしてしまったので、韓国は本当に怒っているのです」


 その前の「『補償』と『賠償』は別モノ」という屁理屈も問題なので、「六五年体制の基本枠組み」自体、「植民地支配の不法性」についての両国の解釈の違いを棚上げして結ばれたものです。国家間の取り決めは、国内世論を納得させるために双方が都合のいいことを言える「玉虫色」の部分を残すのがむしろふつうです。それをあの判決は否定した。自分の言い分だけが絶対的に正しいと言い出し、前の「補償」は当然のものとして受け取るが、新たに「不法性についての賠償」を要求するのは当然だというわけです。それは「当然」ではない。それならあらためて国家間で交渉をやり直さなければならないが、文在寅は「それは民間企業に賠償を求めただけなのだから、国家は関与しない」として、無責任にもほったらかしにしたのです。どこの世界にそんな無責任、勝手な政治指導者がいるか。それでは相手国が怒るのはあたりまえだということをこの独善家は全く理解していない。左翼過激派にはよく見られる自己絶対視の表われでしかない。それは「師匠直伝」の愚かさなのです。

 次に、上記の引用箇所ですが、これはトランプの言い分などとも似ている。トランプは貿易して赤字になれば、それはイコール「不当なディール」だと解釈するのです。経済学の基礎知識さえあれば、それはそんなに単純なものではないとわかるはずですが、馬鹿だからわからないのか、わかりたくないからわからないふりをしているだけなのかはともかく、この「もう一人の文」も同じようなことを言っているわけです。日本相手の貿易が赤字になっているのは、「不当な搾取」が続いてきたからだとでも言いたげなニュアンスです。

 わかりやすいたとえをしてみると、たとえば僕があなたと取引して、僕はあなたにAというものしか売らないが、あなたはBとCを僕に売ったとして、それが似たような値段のもので個数も同じなら、僕はあなたに対して大きな「貿易赤字」になります。しかし、それは僕があなたに搾取されている証拠にはならないので、僕は自分に必要だからBとCを買っただけで、それ自体としては不当でも何でもないのです。別の人とは関係が逆になって、「黒字」になることもある。貿易や売買というのはそういうものです。韓国がアメリカや中国相手には黒字になっていたとしても、それはアメリカや中国が日本と違って“善良”だからそうなっているというわけではないのです。

 そもそもの話、賠償と貿易という別の問題を一つにつなげるということ自体、無理がありすぎるので、再びたとえを用いると、僕があなたの車にはねられて多額の賠償金を得たとします。それを元手に僕は商売を始めて、あなたとも取引したが、あなた相手の取引では売るより買う方がずっと多く、慢性的な赤字になって、何十年かするとその累積額が元の賠償金額の10倍になってしまった。それで僕が「これは不当なことで、あのときの事故の追加賠償しろ」とあなたに要求すれば、あなたは僕は頭がおかしいと思うでしょう。なぜなら、それとこれとは別の話で、別にあなたが僕相手にアンフェアな商売をしたわけではないからです。

 韓国の場合、あの日韓請求権協定での賠償金が「漢江の奇跡」と呼ばれる韓国の爆発的な経済成長につながった(その際、韓国政府は個人補償に回すべきものもネコババしたのですが)ことは、「二人の文」には気に入らないかもしれないが、事実です(カネだけでなく、民間の技術支援もあった)。その後も韓国は得になるから日本と貿易したので、もはや「植民地」ではないのだから、朝貢貿易を強いられたわけではないのです。それは上のたとえ話と同じです。だから、日本の貿易黒字を持ち出してとやかく言うこと自体が筋違いです。この左翼の詭弁家はそんなことには知らんぷりして、無知な人間は数値だけ出せば「科学的な議論」だと錯覚するだろうからというので、こんな奇怪な屁理屈をこねる。頭が悪いのか、人間が腐っているのか、そのいずれかです。

 こういう手合いを“師匠”にして、その珍説に従って勝手な文句ばかり言っていれば、関係が悪くなる一方なのはわかりきった話で、やはり「文政権が退陣するのを待つしかない」といういつもの結論になってしまうわけです。ほんとに呆れた連中です。

【追記】「チョ・グク電撃辞任」というニュースが入りました。上の文春記事はそれに合わせてタイトルを変えたようですが、アドレスは同じなので、そのままにしておきます(あんなもの、そもそも法相に任命する方がどうかしていたわけです)。

日韓対立に尽力する在韓お困り日本人学者の特殊性

2019.10.03.14:05

 またもや「韓国ネタ」ですが、日韓対立はエスカレートしこそすれ、緩和の方向に向かう兆しはありません。日本もテレビではおかしなことを言うコメンテーターが「嫌韓」を煽っていると批判されていて、もっと考えてものを言ってくれと僕も思いますが、韓国は輪をかけてひどいようなので、前にここでも「もっと公平な議論をしろ」と、ハンギョレに寄稿文を書いた法政大教授・山口二郎氏を批判したことがありますが、例の「韓国は敵なのか」という意味不明サイト(その声明文の支離滅裂についてもコメントした)を作った中心人物の和田春樹・東大名誉教授など、ああいう論点のズレたことを言う日本人しか、韓国の新聞には登場しないのです。そして日本人一般の姿として、排外主義的なネトウヨでいっぱいになっているかのような憶測をもたせるようなことばかり書いて「反日」を煽り続けている。ことに最悪なのは文政権御用新聞のハンギョレですが、新たにこういう「日本人研究者」へのインタビュー(9/30)が出ていました。

『反日種族主義』批判の日本人学者「朝鮮人が貧しくなったのに収奪・搾取なかった?」

 それ以前の朝鮮は豊かだったという話は聞いたことがない(両班による常習的な「収奪・搾取」に庶民はあえいでいたことに、この手の人は決して触れない)ので、この見出しそのものがミスリーディングではないかと思いながら読みましたが、一通り全部読んだ後、この鳥海豊博士(57)なる人物を僕は知らなかったので、グーグルで検索してみました。

「それでも少しずつ変化する部分が確実にある。日本の右派と多くの論争をして、そうなることを感じた。彼らが日帝の朝鮮支配は良いことだったとか言う時、それに対して私がそうではないと言えば、非常に強い反発が噴出する。これについて彼らの話を聞き込み、一つ一つ反論していく。もちろん彼らの中の70~80%は、変わることなく自分の意見に固執するが、側にいる人は「あなたのおかげで考えが大きく変わった、そんな観点でも見ることができるということを知った」という話をしてきた。それを見て、相手が悪いと言って敵として扱い無視するのではなく、彼らと話し合い、粘り強く少しずつ進まなければならないということを知った。あまり難しく重々しく考えると耐えられないので、少しずつ歩んでいかなければならない」

 最後がこう結ばれているので、僕が知らないだけで、その筋ではかなりの有名人だろうと思ったからです。しかし、予想外の結果が出た。僅かしかヒットしないので、これならまだ僕の方がマシなくらいです(笑)。「日本の右派と多くの論争をして」いるのなら、こんな結果はあり得ないので、それは嘘なのです(右翼と論争すれば、有難くないことにネトウヨの攻撃記事も一気に増えてしまうから、それとわかる)。

 ところが、その検索で意外なことがわかった。最初に出てくるのはアマゾンの記事で、『証言「脱会屋」の全て―監禁250日』(光言社 1994)という本が著書として出てきます(この段階では同一人物とは断定できない)。その内容紹介にはこうあります。

 強制的な改宗・脱会を職業的に行う宮村峻らの「脱会屋グループ」らによって250日にも渡る拉致・監禁の拘束を受けた著者の、信仰を賭けた闘いの総てを再現した魂のドキュメント。

 さらに見ていくと、次の記事が出てきて、これを覗くと、ハンギョレ記事の写真と、この「全国 拉致監禁・強制改宗被害者の会」というサイトに出ている写真が同一人物のものらしいのに気づきます(後者は2012/1/8のもの)。一番下に(講師紹介)が出ていて、生年からしても現在57歳というハンギョレの記述と一致する。同時に、上の「信仰を賭けた戦い」の「信仰」が何だったのかもわかるのです。

鳥海豊氏による拉致監禁対策講座を開講

●鳥海豊(とりうみ・ゆたか)
1962年、東京生まれ。早大在学中、原理研究会に入会。大学卒業後、合同結婚式に参加。1991年4月宮村峻らの強制改宗グループにより拉致監禁され強制棄教を迫られる。8か月間にわたる説得を受けながらも自力で脱出した。


 つまり、ハンギョレ記事の人物はあの文鮮明によって創設されたカルト、統一教会の筋金入り信者なのです(原理研はその下部機関で、学生サークルの装いを取る)。僕も学生の頃、高田馬場の駅前で、見知らぬ青年に「宗教と科学を統一する究極的な真理」に興味はないかとたずねられ、「ある」と答えると隅っこの方に連れて行かれて、レクチャーされたことがあります。何でも彼はその「究極原理」を知っているのだという。それは凄いと、僕は真面目にその話を聞こうとしましたが、話は妄想じみて支離滅裂としか思えず、この人は科学や宗教の基本的な知識すらないのではないのかとがっかりしました。しかし、根が親切な人間なので、逆にレクチャーしてあげることにして、近代科学それ自体がキリスト教と無関係ではなかったので、たとえばニュートンのあの『プリンキピア』は、ニュートンとしては「神の存在証明」のつもりだったのだというところから始めて、デカルトの神の存在証明が失敗に終わらざるを得なかったのはなぜなのか、そして当時文系学生でも関心をもって読むことが多かったシュレディンガー(波動方程式で有名)の生命論や、ハイゼンベルクの不確定性原理などに言及し、話がこれから佳境に入るというところで、「もういいです!」と叫んで、その男は雑踏の中に姿を消しました。とても「究極的な真理」に関心をもつ人間の態度とは思えない。後で友達に話したら、それは原理研だよ、という話で、おまえみたいなのをつかまえるとは、そいつも人を見る目がないなと笑っていましたが、そのとき初めて僕はそういう団体が存在するのを知ったのです。

 統一教会の信者だからといって言うことが出鱈目と決めつけるのはよくないでしょうが、ハンギョレの記事がそういうことに全く触れないのはどう見てもフェアではない。彼らが熱烈な文鮮明信仰=それと結びついた親韓の強烈なバイアスをもっているのは確実なので、当然それは資料の扱いや解釈にも影響するでしょう。この人物が日本で日韓関係の歴史の研究家としてほとんど認められていないことにも、ハンギョレは当然触れません。記事の最後の彼の言葉を見ると、あたかも日本国内で右翼を相手に堂々の論陣を張っているかのようですが、そんな事実は全くないと見られるのです(記事の彼の著書だという『日本人学者が見た植民地近代化論』なる本も、韓国で出版されたハングル版しかない。とうの昔に絶版になっている『東大生に語った韓国史』という韓国人著者の訳本が一冊あるだけです)。

 どうせなら、『統一教会信者である特殊な日本人学者が見た植民地近代化論』としてもらいたいが、韓国の人たちはそういうことは全く知らないまま、この記事を読むわけです(韓国内ですら統一教会信者と聞くと「何?」と思う人は多いでしょう)。「東京で生まれ育った鳥海豊博士は、日本の早稲田大学経済学科を卒業(1986年)後、職場生活を過ごし、2000年に一歩遅れて韓国史に関する勉強を始めた」とは書いても、「在学中、原理研究会に入会。大学卒業後、合同結婚式に参加」という事実は伏せるのです。せっかく「日本人研究者にもこう言う人がいる(だからハンギョレの反日史観は正しい!)」と印象づけようとしているのに、そんな余計な情報を入れたのでは逆効果になる。そういうことなのでしょう。ついでに言うと、統一教会が「霊感商法」の名を有名にした問題カルトであることは有名ですが、これから分派した「摂理」という強姦教祖のお粗末カルトまである。次は「日本脱カルト協会」のそれに対する注意喚起記事です。

・キリスト教福音宣教会(摂理)に関する声明と注意喚起

 韓国発のロクでもないカルトに日本は迷惑をこうむっていると言えば、「ヘイト発言だ!」と叱られるかもしれませんが、カルト規制の甘い日本は、韓国発カルトにとっては資金を吸い上げるのにもってこいの、便利な「植民地」みたいなものなのです(他にも韓国人が日本で始めたカルトを僕は知っていますが、知人に教祖の著書を一冊読まされてその無内容な愚劣さには呆れたものの、べつだん目立った被害はまだ出ていないようなので、名前は出さないでおきます)。

 こういうおかしな「例外的日本人」が「反日」強化に韓国メディアで利用される。その特殊性は全く紹介されないままで。次のデイリー新潮の記事(9/29)の「日本人学者」もそれと似たようなものです。

安倍首相は第2のヒトラー…… 著書でこう主張する“韓国人”政治学者の正体

 僕は安倍とそのネトウヨの取り巻きを好みませんが、それとこういうのとは「別次元」の話なので、以下は「9月19日付韓国の『毎日経済』電子版」の、彼の新刊の内容を紹介した記事の「要約」だそうですが、その「極端さ」には唖然とさせられます。

〈韓日問題専門家の保坂祐二教授は、安倍政権が1945年以前の大日本帝国を復元するため、そのシナリオを進めていると主張する。安倍政権は、大日本帝国を復活させるために、「独裁」の道へ突入、残酷な侵略と戦争を起こす可能性があるという。保坂教授はこのような兆候を数年前から強く感じていた。嫌韓デモを主導する極右集団が現れ、安倍晋三という極右政治家が長年の間、総理の座に居座るという異常な現象が日本で日常化してしまった。そして、大日本帝国の復元を実現する第一段階として、韓国を脅かし始めていると主張する。ヒトラーがユダヤ人を敵と見なし、ドイツ人の怒りと不満の噴出口にしたように、安倍政権は韓国をいけにえにして日本国民の怒りと不満を噴出させようとしている。強制徴用工問題が解決されても、韓国を敵と見なす安倍政権の態度は簡単に変わらないだろうと保坂教授は見ている。日本の極右勢力にとって、大日本帝国を復活させるのに、安倍ほど適した人物はいない。安倍総理は、第2次世界大戦のA級戦犯として逮捕された日本極右派の元祖・岸信介の外孫だ……〉

 僕も安倍政権には「戦前回帰」志向が強く、言論統制に向かう危険な性格があると書いたことがあって、韓国の度の過ぎた「反日」がネトウヨを元気づけて、その追い風になっているので日本国民としては迷惑この上ないと言いましたが、「安倍政権は、大日本帝国を復活させるために、『独裁』の道へ突入、残酷な侵略と戦争を起こす可能性がある」「大日本帝国の復元を実現する第一段階として、韓国を脅かし始めている」「ヒトラーがユダヤ人を敵と見なし、ドイツ人の怒りと不満の噴出口にしたように、安倍政権は韓国をいけにえにして日本国民の怒りと不満を噴出させようとしている」となると明らかにふつうではない。精神病院に入ってもらわないと困るようなレベルと思われますが、文在寅自身が「安倍政権は政権維持のために嫌韓を煽っている」とズレすぎたことをかねて言っているので、それはこういう狂人を「ブレーン」にしているからではないかと、妙に納得してしまうのです。そうではない、今回のことは安倍政権がどうのという以前の問題なので、一般の日本人が怒っているのは、次から次へと韓国が国家間の信義を踏みにじるようなことを平然として、にもかかわらず、全部日本が悪いと言って日本非難をエスカレートさせるからだと説明しても、こういうお困り日本人学者が「日韓間で何かあるたびにテレビに呼ばれ」、「昨今の緊迫した日韓関係では、もう引っ張りだこ」という状況では、「日本の民意」が全く伝わらないのはあたりまえだ、ということになるでしょう。

 今の日韓関係の深刻な悪化は、日本の「右傾化」とは直接関係がない。山口二郎や和田春樹(ハンギョレが言うように別に「日本で尊敬」されてはいない)といった人たちが安倍政権と無理にからめておかしなことを言い、それに加えて、この手の、どう見てもまともとは思えない、日本では無名の「日本人研究者」の「反日言説」しか韓国のマスコミでは取り上げないので、彼ら自身の「正義」妄想が強化されるだけでなく、歪められた日本像しか伝わらなくなっているのです。

 僕自身は日本人としては標準的な史観(ネトウヨのそれではない)をもつ者だと思っていて、その史観は韓国の学校で教えられている歴史のそれよりはずっと「客観性」のあるものだと思っていますが、それにも間違いはあるだろうから、日韓でもっと研究が進むのは大歓迎です。しかし、今の文政権下の韓国でそれが進む気配はなく、その独善的「ファンタジー性」がさらに強化される方向への言説ばかりが称揚され、それにおかしな日本人学者が加担して事態をさらに悪化させるのでは困るなと思うのです(韓国のそうした「偏向」が極端すぎて、『反日種族主義』のような内部からの批判も出てきているわけですが)。

 ことに上に見た二人の「日本人歴史家」のような人たちは問題なので、「どうせ韓国のやることだから…」という態度を取らず、正面からそれを批判してくれる日本人歴史家が出てきてくれるのを僕は期待しています。そうすれば、彼らを担ぎ出す韓国メディアも次第にいい加減なことは言えなくなって、もう少しまともな対日報道が期待できるようになる。それとも、彼らの言うことは正しいので、反論できないのでしょうか? 真実を愛する僕はそれなら仕方がないと思いますが、そんなことはおそらくないでしょう。

 ハンギョレは日本語版があることからして、日本語ができるスタッフがいるのでしょう。それならブログで「鳥海豊氏は統一教会信者だが、その事実を伏せるのはどうしてなのか?」と疑問を呈している日本人がいるので、今度はそれに答える記事を書いたらどうかと、本社に伝えてくれませんかね? あらためてインタビューして、その「信仰」とこうした「歴史研究」の関係について聞いて、僕が疑っている「極端なバイアス」が存在しないことを明らかにする必要があるのです。ウィキペディアの「統一教会」の項にはこう書かれています。

 日本のセミナー等で、『原理講論』(註:これが根本経典とされる)で説かれる堕落の経緯と復帰の歴史を説明される際に、韓国はアダム国家、日本はエバ国家とされ、先に堕落したエバがアダムに侍(はべ)ることは当然であると説かれている。朝鮮を植民地支配し民族の尊厳を踏みにじった日本はエバと同じであり、韓国に贖罪しなければならないとされているのである。合同結婚式では、日本人女性・韓国人男性のカップルが多く生み出されており、結婚した日本人女性は韓国人の夫や家族に尽くすことが求められる。

『原理講論』それ自体、ロクな裏付けもない文鮮明の「壮大なファンタジー」の所産にすぎないのだろうと僕は思いますが、そういう「教え」が鳥海氏の心の中に核としてあって日韓史を書けば、結論は初めから決まっているのだから、中身がどんなものになるかは想像に難くない。歴史は信仰告白ではない。これは「日本は神国」だとする「史観」の逆ヴァージョンですが、そのどちらも困るのです。そういう「信仰」次元から歴史を云々していたのでは、永遠にまともな歴史理解に達することはないでしょう。当然、日韓の和解もないわけです。

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