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中国習近平政権の意味不明~真の脅威は三峡ダム?

2020.06.30(15:53) 734

 こういう記事が読売電子版に出ていました。

政権批判への「いいね」、中国が禁止を通達…エリート党員に絶対服従求める?

 今日30日、例の「国家安全法」、より正確には「香港国家安全維持法案」が全人代で“全会一致で”可決されたそうで、世界中からあれだけ批判を浴びて、よくやるなと呆れますが、習近平というのは独裁者特有の不安と猜疑心にとりつかれ始めているからこそ、そういう強引なことをやり、上の記事のようなマンガじみた過剰な統制にも走るのでしょうか。周囲の幹部たちの盗聴もやっているのかもしれません。毛沢東やスターリンそっくりになってきた。

 しかし、そんなことより、彼はうち続く大雨による洪水被害や、例の「三峡ダム」の決壊の方を心配した方がいいかもしれません。被災者はすでに1300万人を超え、倒壊家屋は1万棟、死者・行方不明者も80人を超えたと報じられています。むろん、中国の情報だから、どの数字も表面に出てきているものだけで、ほんとはもっとずっと多いのでしょうが、これで三峡ダムが決壊するような事態になれば、コロナ被害どころの話ではなくなり、経済も壊滅的な打撃を受けて、習近平は大旦那風なんか吹かせていられる状況ではなくなってしまうでしょう。

 この洪水の件でも、SNSに被害状況を伝える映像を流した個人を逮捕するなんて姑息なことをやっているようですが、それを見て「政府は何をやっているのだ!」という非難の声が国民の間に広がるのを恐れているのでしょう。武漢でウイルスが発生したときも隠蔽に走って、それで事態が悪化して、今見るような世界的なパンデミックに発展したのですが、「経済発展と共に政治も徐々に民主化に向かうだろう」という世界の期待は完全に裏切られ、ひたすら“北朝鮮化”しているのです。こういうのは習近平の性格も関係しているのではないかと、世界は疑うようになってきました。外国からの信頼も、国内からの信頼も、それでは両方損ねることになる。そこにあの三峡ダム決壊が重なれば、中国人民の怒りが爆発して、政権はジ・エンドになりかねない。今は愛国教育を熱心にやっているから、そうした“洗脳”の効果もあって、昔とはいくらか違うかもしれませんが、もともと中国の人民は“お上”を信用せず、王朝の興亡を醒めた目で眺めてきたところがあるので、今の共産党王朝もたやすく求心力を失ってしまうかもしれない。無意識にその恐怖があるから、規制の強化一辺倒になるのかもしれませんが、それでは逆効果になるでしょう。

 次のビデオニュースは、中国共産党を果敢に批判し続けている「大紀元」のものです。

三峡ダムは洪水を防げない。三峡ダム下流域は全てが壊滅の可能性、専門家 脱出ルートを見つけ洪水に備えよう

 日本語吹き替えの声がやけに淡々としていて、その内容の深刻さと釣り合わないほどなので、それがかえって妙な凄みを与える効果を生んでいますが、このダムの危険性は前から事あるたびに指摘されていたものです。次のニューズウイークの記事はちょうど3年前のものですが、熟読に値します。

中国「三峡ダム」危機――最悪の場合、上海の都市機能が麻痺する

 要するに、建設当初から問題だらけのダムだったということですが、文中に出てくる「建国間もない中国で黄河ダム建設の計画が進められたときに強く反対し、毛沢東から『右派』の烙印を押されて22年間の強制労働に追われた」、当然三峡ダムにも反対していたイリノイ大帰りの「著名な水利学者、清華大学の故・黄万里教授」は「10年ももたないだろう」と予言していたとのことですが、すでにその10年を経過しているのです。そこにこの連日の大雨(当局によれば「80年に一度」の大雨)で、放水をしながらしのいでいるものの、現場の関係者たちは寿命が縮まる思いでしょう。今回は持ち応えても、それで大きなダメージを受けているだろうから、いつ決壊するか、予断を許さない。

 中国にも良心的な偉い学者がいたのに、そういう人の言うことは聞かずに無理な「国家プロジェクト」を強行するからこういうことになってしまうわけで、地震大国の日本でやみくもに原発政策を推進したのに劣らない政府の愚劣さです。日本の場合、良心的な学者(あのフクイチ事故のとき有名になった小出裕章さんはその一人)の警告を無視して、無責任な原子力ムラの学者たちだけが幅を利かせ、それが東北大震災の際の津波で福島第一原発のメルトダウン惨事を招いた。今度は中国の番かもしれないということです。

 権力の維持と支配の拡大に明け暮れている習近平は、そうなったらどうするのか? その惨害は、影響地域の広さと人的被害の大きさ、復興までの道のりで原発事故に劣らぬものになりかねないと思われますが、彼にとってそれは「考えたくもない悪夢」なのでしょう。しかし、それは「今そこにある危機」なので、カウントダウンはすでに始まっているのです。


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祝子川通信 Hourigawa Tsushin


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文政権「愛の不時着」から「愛の遭難」へ

2020.06.17(18:04) 731

 6・15南北共同宣言20周年から一夜明けたばかりの16日、北朝鮮が開城の南北共同連絡事務所ビルを爆破した。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は前日、6・15宣言20周年に合わせて「南北が共に突破口を見いだしていく時期になった」として、北朝鮮に対話を求めた。しかし文大統領の「ラブコール」のすぐ翌日、北朝鮮は2018年に南北首脳間でまとまった「4・27板門店宣言」の象徴である連絡事務所を爆破するという形で答えた。(6/17 朝鮮日報「文大統領が「突破口を見いだそう」と言った翌日…北はこれ見よがしに爆破」より)

 韓流ドラマにはハラハラドキドキの「先の読めない展開」が不可欠なので、その伝で行くとまだわからないことになりますが、この現実の南北政治ドラマは見たところ、ハッピーエンドには向かっていないようです。というのも、北の脱北者団体散布のビラに激しい非難を浴びせかけた北朝鮮に対して、韓国文政権は「禁止します」とすばやく応じたものの、かつての自民のあの豊田議員みたいに「ち・が・う・だ・ろ!」と罵倒を返して、韓国側が17億円かけて建設したという南北連絡事務所の建物の爆破をもって応じたからです。

 これに先立って、文政権関係者は「北朝鮮への思いやり」を様々に示していました。その周到な配慮たるや、日本にもその十分の一ぐらいは示していただきたいものだと思われるほどのもので、朝鮮日報(6/16「北に侮辱された韓国与党勢力『米国のせい』『北朝鮮も首を押さえ付けられ息ができない』」)にはこうあります。

 韓国与党・共に民主党の執行部と議員らは15日、最近になって立て続けに軍事挑発を予告した北朝鮮について「その立場を理解する」という趣旨の主張を始めた。文在寅(ムン・ジェイン)大統領を何度も冒とくし、韓半島を緊張状態に追いやろうとする北朝鮮に対して厳しい姿勢で警告するのではなく、韓国と米国の責任論を提起し、北朝鮮向けビラ散布の禁止に加え、「韓米合同軍事演習の中断」まで主張し始めたのだ。「米国に言うべきことは言わねばならない」との主張まで出た。(中略)

 北朝鮮は今月4日の金与正(キム・ヨジョン)労働党第1副部長の談話以降、10日以上にわたり韓国政府と文大統領を激しく誹謗(ひぼう)してきた。しかし与党・共に民主党は北朝鮮によるこれら一連の行動について「脱北民団体による北朝鮮向けビラ散布が原因」と主張している。同党の金太年(キム・テニョン)院内代表はこの日開催された党の会議で北朝鮮へのビラ散布問題を取り上げ「南北間の武力衝突をも起こしかねない心理戦であり、境界地域住民の安全を危険にさらす平和犯罪行為だ」と指摘した。青瓦台(韓国大統領府)国政企画状況室長を務めた尹建永(ユン・ゴンヨン)議員はあるラジオ番組で「(北朝鮮向けビラ散布を阻止しなかったことは、政府の)職務遺棄だ」と主張した。

 共に民主党6・15南北共同宣言特別委員会の委員長を務める金漢正(キム・ハンジョン)議員もラジオ番組で、北朝鮮が最近になって連日のように挑発のレベルを高めていることについて「根本的には経済制裁が解除されないことが原因だ」と主張した。金議員は「今、北朝鮮は非常に困難な状況にある。今も継続する制裁によって経済が大変で、コロナまで重なった。南北関係においても大きな期待はできないし、対米交渉は中断あるいはほぼ無効化した」「北朝鮮はその挫折感と失望を極端な形で表現している」との見方を示した。この日、国会外交統一委員長に選出された宋永吉(ソン・ヨンギル)議員も「2年前に文大統領が平壌を訪問した際に北朝鮮は平壌宣言を行い、白頭山にまで案内し、5・1競技場では文大統領にマイクを提供するなど彼らなりに配慮したが、何も返ってくるものがなかったため、耐えられない状況になった」と主張した。宋議員は北朝鮮における経済の現状について「(米国で警察官に首を押さえ付けられ死亡した)ジョージ・フロイド氏は息ができないと言った。それと同じような状況ではないかと思う」との見方も示した。

 与党議員らはこれらの問題に対する解決策として「米国が北朝鮮に対する制裁を解除すべきだ」と主張した。金太年・院内代表は「制裁と圧迫一辺倒の対北強硬政策は、北朝鮮の非核化も達成できないし、東北アジアで新冷戦秩序を強化するだけだ」「開城工業団地と金剛山観光が早期に再開できるよう、米国には制裁の例外を認めるよう求める」と述べた。洪翼杓(ホン・イクピョ)議員はラジオで「韓米合同軍事演習などさまざまな形の軍事訓練は、実際のところ北朝鮮の立場に配慮していない」として「強い覚悟でこの問題を再検討すべきときになった」と指摘した。韓米合同軍事演習を事実上やめようという主張だ。

 南北関係発展と北朝鮮非核化を並行して進展させるため立ち上げられた韓米ワーキンググループについて、与党では「南北関係改善を妨害する『大きなくぎ』」とする見方も浮上している。洪翼杓・議員は「北朝鮮との実質的な経済協力、南北首脳間の合意事項、さらには当局間の合意内容を実行に移そうとする際にはいつも韓米ワーキンググループが全て妨害してきた」「屋上屋(無駄なもの)となっているワーキンググループの構造を今後は整理すべきときになった」と主張した。丁世鉉(チョン・セヒョン)民主平和統一諮問会議首席副議長はこの日ラジオで「わが国政府が北朝鮮からこれほどの侮辱とあざけりを受けるようにしたのは、実際は米国だった」「米国に対して言うべきことは言わねばならない」と指摘した。


 あえて長々と引用したのは、「これは“北朝鮮寄り”というより、“北朝鮮そのもの”ではないか?」とあらためて驚いたからです。金正恩の部下がそこにいるので、韓国はもはや独立した国家ではない。ところがそこに、連絡事務所爆破をもって応じられたので、文政権は周章狼狽、ホンネではけしからんと思わなくても、そういうポーズは取らないと韓国民を怒らせてしまうので、次のようなコメントを発したというのです。冒頭の朝鮮日報記事の続き。

 文大統領は前日、青瓦台(韓国大統領府)の会議で「これ以上条件の好転を待つばかりでいることはできない時まできた」として「韓半島の運命の主人にふさわしく、南と北が自ら決定して推進できる事業を積極的に探し出して実践していくことを望む」と語った。6・15宣言20周年記念式典の祝辞でも「南北が自主的にできる事業も明らかにある」としつつ「北朝鮮にも、対話の窓を閉ざさないことを要請する」と発言した。

 南北協力事業の意志まで表明していた青瓦台は、16日の連絡事務所爆破のニュースに当惑を隠せなかった。青瓦台内部からも「文在寅政権の任期中ずっと推進してきた『韓半島平和プロセス』が最大の危機的局面を迎えた」という懸念が示された。与党関係者も「北側が事実上、板門店宣言を破棄したものとみられる」とし「9・19軍事合意(2018年)破棄など後続の軍事措置までついてきた場合、最悪の南北関係が予想される」と指摘した。

 青瓦台と韓国政府は16日午後、対北強硬メッセージを打ち出した。青瓦台は16日、北朝鮮が連絡事務所ビルを爆破してから2時間16分後の午後5時5分、鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長主催で国家安全保障会議(NSC)を招集した。さらに午後6時40分、「2018年の『板門店宣言』によって開設した南北共同連絡事務所ビルを北側が一方的に爆破したことに対し、強い遺憾を表明する」と発表した。

 NSC事務処長の金有根(キム・ユグン)安保室第1次長はブリーフィングで「北の南北共同連絡事務所破壊は南北関係の発展と韓半島の平和定着を望む全ての人の期待に背いてしまう行為」だとしつつ「これにより発生するあらゆる事態の責任は全て北側にあるということをはっきりさせておく」と発言した。その上で金次長は「北側が引き続き状況を悪化させる措置を取る場合、われわれはそれに強く対応するであろうことを厳重に警告する」と語った。これまで北朝鮮の反発を意識して、南北合意を強調しつつ北朝鮮に対し批判は行わなかった青瓦台が、異例のメッセージを発信したのだ。この日北朝鮮を批判した金有根・第1次長は、11日の時点では対北ビラについて「今後対北ビラおよび物品の散布行為を徹底して取り締まり、違反時には法に基づいて厳正に対応する」と発言していた。青瓦台の中心的関係者は「北朝鮮がしばらく状況を悪化させないことを望んでいたが、そういう期待を正面から破られたようで残念」と語った。それほどに開城連絡事務所爆破を深刻な事案として受け止めたという意味だ。国防部(省に相当)も青瓦台の発表後、「わが軍は現在の安保状況に関連し、北朝鮮軍の動向を24時間綿密に監視しつつ確固たる軍事的備えの態勢を維持している」とし「北朝鮮が軍事的挑発行為を敢行したら、わが軍はこれに強く対応する」とコメントした。

 統一部も、青瓦台のNSC会議後に「きょう午後3時40分ごろ、連絡事務所に対する電気の供給を中断した」と発表した。徐虎(ソ・ホ)統一部次官は「南北関係において前例を見いだし得ない非常識的な、あってはならない行為であって、これに深い遺憾を表し、強く抗議する」とし「北側は今回の行動について応分の責任を負わなければならない」と発言した。

 さらに徐次官は「2018年板門店宣言に違反し、南北共同連絡事務所の構成・運営に関する合意書の一方的な破棄」だとして「これまでの北側の荒っぽい発言や一方的な通信遮断に続く南北共同連絡事務所破壊は、わが国民だけでなく世界を驚愕(きょうがく)させた」「6・15共同宣言20周年の翌日に繰り広げられたこうした行為は、韓半島の平和を望む全ての人の念願に背くもの」と主張した。


 やっと「ノーマル」な対応に変わりかけたわけですが、爆破は予告されていたのであり、「これは脅しではない」と北朝鮮は言っていたのだから、読みが恐ろしく甘いわけです。そして先の与党議員の数々の迎合発言からも、一貫した対応が文政権にとれるのかどうかは疑わしい。北朝鮮側は相手が弱腰の文政権だから連絡事務所爆破ぐらいでは軍事衝突につながることはないと安心して、それを強行したので、多くの論説が主張しているように、「四の五の言わずに、アメリカの制裁に加担せず、気前のいい経済援助を寄越せ」というのが最大のメッセージでしょう。このままでは確実に餓死者が出る。金正恩としてはそれはかまわないが、平壌ですら配給が滞り、体制を支えるクラスの不満も大きくなっているので、早く手を打たないと何より大事な金王朝が崩壊する。それは何としても避けねばならず、南朝鮮の“子分”ども(その筆頭が文在寅)に最大限の支援をさせる必要がある、ということで、こうなったのでしょう。

 文政権が見誤っていたのは、「北朝鮮の困窮の度合い」で、「経済制裁の上にあのコロナで、悠長に『今後の協力』がどうのと言っている場合ではないのだ。早くカネと援助物資を寄越せ!」ということなのだろうと思われるのです。ビラの件はきっかけにすぎない。この前の選挙で文政権は大勝したので、政権基盤も安定してすぐにも援助に向かうだろうと思っていたら、一向その動きがないので、ブチ切れたのです。韓国も「西側の基準」では経済的に逼迫しているのですが、それは北朝鮮とは全くレベルが違う。なのに、そのあたり鈍感だから、「口だけでなく、カネとモノで“愛の証”を示せ!」と言っているのです。パラグライダーで南の財閥令嬢が飛んでくるのならまだしも、「北は悪い国、金正恩は悪い奴です」という悪口を書いた風船もどきが大量に飛んでくるのだから、折も折、「我慢も限界に達した」ということだったのでしょう。カネもないのに無理してミサイルを飛ばしまくっても、アメリカは無反応で、それをなだめるために経済制裁の緩和を考える気配もないし、いつもの瀬戸際外交が機能していないので、こうなったら“属国”的性格を強める南朝鮮を責め立てるしかない。そういうことなのだろうと僕は解釈します。

 気になるのは中国の動向で、報道官は「(爆破の件は)把握していない」というそっけないコメントをしたそうですが、戦争になっては困るものの、「北主導の朝鮮半島統一」は共産党一党独裁の中国の国益にかなうので、韓国が北朝鮮に譲歩し続けて、アメリカとの距離を広げることも、むしろ歓迎すべきことと考えているのでしょう。

 次の記事は中国事情に詳しい近藤大介氏のものです。

中国の北朝鮮ウォッチャーが読み解く金正恩体制の今

 いまからちょうど2年前、6月12日にシンガポールで、ドナルド・トランプ大統領と金正恩委員長の歴史的な米朝首脳会談が実現したが、その最大の立役者は文在寅大統領だった。その後も文大統領は金委員長に、「トランプは、『(朝鮮)半島の問題は全部あなたに任せる』と言ってくれているので、何も心配はいらない」「トランプが考えているのは自分の再選だけだから、そのためには何でも妥協する」などと説き続けたという。

 文在寅大統領はその一方で、トランプ大統領に対しても、「金正恩委員長は私の言うことは何でも聞くから、私に任せてほしい」「北朝鮮は、国連の経済制裁解除を目の前にぶら下げてやりさえすれば、何でもやる」などと、やはり調子のいいことを進言してきたと、北朝鮮の幹部たちは言う。

 ところが、文大統領の強い後押しを受けて昨年2月、ハノイでの2度目の米朝首脳会談に臨んだら、トランプ大統領は金委員長に対して、文大統領が言っていたこととは全然違うことを要求した。すなわち、古い寧辺(ニョンビョン)の核施設さえ破棄すれば、国連の経済制裁を解くということだったのに、他のあらゆる関連施設もすべて破棄するよう求めてきたというのだ。

 金正恩委員長はハノイで、「文在寅に騙された」と、怒り心頭になった。それで帰国後、文在寅政権に「責任を取って何とか収拾しろ」と迫ったが、文政権は1年以上経っても何も手を打てないでいる。アメリカを説得できないどころか、韓国から北朝鮮を非難するビラを撒いたりして、自国の統制すらもできない。それで北朝鮮は、堪忍袋の緒が切れて爆破行為に及んだのだ。

――今回、金正恩委員長の妹である金与正(キム・ヨジョン)第一副部長が、爆破の3日前に声明を出し、「(韓国と)決別する時が来たようだ。遠からず無用となった北南共同連絡事務所が跡形もなく崩壊する悲惨な光景を目にすることになるだろう」と予告していた。こうした点をどう見ているか?

 昨年2月のハノイ会談の前、「文在寅大統領は信じられる人間だ」と言って、2度目の米朝首脳会談に消極的な兄(金委員長)を強く説得したのが、金与正副部長だった。ところが結果は、ノーディール。それで与正副部長の国内での立場が悪化し、政治局員候補を辞任。昨年末まで謹慎状態を余儀なくされた。こうしたことから、与正副部長の文在寅大統領に対する怒りも、兄に劣らず強烈だと聞いている。


 この説によれば、根は文大統領がその仲介役を自慢しまくった「歴史的な米朝首脳会談」のお粗末な結果にあったという話です。それで北の「最高尊厳」と「第二尊厳」の金兄妹は、「文は無責任で、役に立たない」と怒りを募らせた。「恥をかかされただけだ」と思ったのです。哀れな文大統領は、西側先進諸国の首脳にも「制裁解除」を説いて回って、「金正恩の使い走り」扱いされ、全く相手にされなかったのですが、そうした「愛の献身」も北朝鮮には何ら評価されなかったのです。

 ふうむ…。あの韓流ドラマ『愛の不時着』ではすぐに愛が目覚め、実はその愛はすでにその何年か前のスイスでの出会いに遡る“運命的”なものであったことが判明するのですが、文大統領版『愛の不時着』では逆に、2年前の「不実な対応」が今回の「ビラでブチ切れ」反応の伏線になっていたというのです。あれから北朝鮮の事態はさらに深刻になっているのに、あのときと同様、リップサービスばかりで助けるようなことは何もしない。「愛を囁きながら、あいつは一体何をやっているのだ!」と、文側の募る愛とは裏腹に、金兄妹は怒りを爆発させたのです。それが公正に見て妥当なものかどうかとは関係がない。

 これだと「愛の遭難」ではないのか、ということで、タイトルにその言葉を使ったのですが、こういうのは片思いではありがちなことで、そういえば自分も若い頃一度…と昔のことを思い出したのですが、文さんにはお気の毒ながら、決してうまく行かない定めなのです。そういうのは片務的なものになってしまうからで、相手はこちらの好意に気づいているから、いくら悪態ついても、約束を破っても怒らないと思って、じっさい情けないことにそうなってしまうのですが、何かしてもらっても、それは当然だと思っているから、感謝されることはなく、逆に期待したものが得られないと、それには腹を立てる。そもそもの話、そういう言いなりの対応をする相手に、人は恋情なんか抱かないものなのです。

 だから韓国文政権は、もういい加減目を覚ました方がいい。でないと北朝鮮は今後も際限もなく降り回しを続けて、朝鮮半島情勢は混迷を極め、不安定きわまりなかった李氏朝鮮の昔と同じで、周辺諸国には大きな迷惑になる。個人の恋愛と違って、影響が広範囲に及ぶのです。そもそもの話、彼には相手の正体がわかっていない。文政権は日本にはいくらひどいことを言っても許されると思い込んでいるが、それは甘えで、日本を“性悪女”扱いしつつ、実はそうでないことを無意識に知っているからでしょう。しかし、「恋は盲目」だからわかっていないのでしょうが、北朝鮮は正真正銘の“性悪女”なのです。歴史に学べば、それは歴然としている。それが見抜けないというのは哀れと言う他ありません。金王朝は崩壊の危機に立たされているわけですが、あんな時代錯誤の恐怖政治の源泉、倒れるのが正解なので、いっとき混乱はあるでしょうが、長い目で見れば、それは北朝鮮・韓国人民双方にとってプラスになるので、統一を可能にする最大の条件も実はそれなのです(中国は喜ばないでしょうが、あの独裁国家自体がもう一つの問題です)。賢くそちらに誘導していくのが先見の明ある政治家というもので、三手先も読めないヘボ将棋をいつまで続けるのか、無能な文政権ではそれは打開できないので、次か次の次の政権に期待するしかありませんが、結末が見えた「愛の遭難」ドラマをいつまでも続けるのは愚かすぎるというものです。


祝子川通信 Hourigawa Tsushin


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日韓破断と「愛の不時着」のノーテンキぶり

2020.06.10(16:41) 729

 読売新聞電子版に、次のような短い記事(2020/06/08 22:24)が出ていました。

・日韓関係「悪い」、韓国91%で過去最悪…読売・韓国日報世論調査

 読売新聞社と韓国日報社が5月22~24日に実施した共同世論調査で、現在の日韓関係が「悪い」との回答は日本で84%(前回2019年調査83%)となり、調査を始めた1995年以降計16回の調査で、2014年の87%、15年の85%に次いで3番目に高かった。韓国では「悪い」が91%(同82%)に上昇し、15年の89%を上回って過去最悪となった。


 現状に照らして、「悪い」が圧倒的なのはあたりまえと思われますが、それでも日本の方が低いのはどうしてなのでしょう? むしろ日本の方が「悪い」の回答が多くなるだろうと思っていた僕には不思議だったのですが、こういうのは韓流ドラマのファンが日本には結構いて、その人たちの“好韓”が一定数あるからなのかもしれません。最近はとくに韓国の財閥令嬢がパラグライダーで北朝鮮に飛ばされてしまい、そこのイケメン長身の若い軍人と恋に落ちるという、いかにも韓国ドラマらしい荒唐無稽さが光る、Netflixの『愛の不時着』(このタイトルを見たときは思わず笑ってしまいました)が大人気で、そういうのも関係しているのかもしれません。このドラマについては、次のような記事が出ています。これは「後編」の方ですが。

都合よく歴史を忘れる韓国のプロパガンダ恋愛ドラマ

 筆者の「在米ジャーナリスト」の岩田太郎氏は別にネトウヨではありません。その証拠に、大規模デモの発端になったこの前のアメリカの白人警官による黒人男性圧殺事件についても、すぐれた記事を書いていて、読んで僕は感心したのですが、人権感覚の鋭い人です。

 北朝鮮が韓国に対してどんなことを行なってきたかは直接本文をお読みいただくとして、文在寅大統領の「歴史修正主義」丸出しの「反日強化」と、その逆ベクトルの「北への親和」は理性的な人間には到底理解しえないもので、筆者の結論には同感せざるを得ません。

 韓国は、北朝鮮の核王朝体制の枠組みの中に「愛の不時着」を敢行しているが、大変に危険な賭けである。その背景には、南北朝鮮の統一機運を覇権的な「中国夢」で後押しする中国共産党の影がちらつく。

 統一後の朝鮮半島における国内情勢は、分派好きで事大の国民性によってかえって不安定化し、同族同士で殺し合う歴史が繰り返されるような気がしてならない。その時に、ロマコメ「愛の不時着」の罪深さが改めて認識されるであろう。


「ロマコメ」というのは、言わずと知れた「ロマンティック・コメディ」のことで、僕もちょっと見てみましたが、たしかにコメディ仕立てです。とくにイケメン中隊長の部下たちの弛緩ぶりが凄い。監視部屋の部下などは勤務中、かなり昔の韓国恋愛ドラマ『天国の階段』に夢中になっていて、ヒロインが北朝鮮領土内に侵入するのを許してしまったのですが、バレるとまずいとは言うものの、緊張感はゼロで、ヒロインに主演女優のサインをもらってやると言われて大喜びしたりするのです。折しも、こういう記事が出ています。

「韓国のビラ見た国民を処刑」金正恩妹の“対敵活動”が始動か

「今月初め、清津(チョンジン)市をはじめとする道内の社会安全部(警察)幹部らを対象に、南朝鮮(韓国)からの敵宣物の危険性に関する講演が行われた。講演では敵宣物によって思想が変質し、南朝鮮への憧れを露骨に表現し、国家を非難したある男性を処刑したとの言及があった」という。

 つまり、ああいうのだと北朝鮮では即銃殺されて終わり、となるわけです。気になったのでちょっと調べてみたのですが、最初の出会いの撮影地はスイス、平壌駅はモンゴルのウランバートル駅なのだそうで、ドラマに出てくる北朝鮮風景で、実際の北朝鮮はゼロなのです。北朝鮮にとっては「敵宣物」以外の何ものでもない、韓流恋愛ドラマのロケなど許されるわけがない。そのこと自体がこうした展開の「ありえなさ」をよく物語っているのですが、あのドラマに登場する北朝鮮人はすべて韓国人が演じているのは当然として、メンタリティそのものが「韓国人」なのです。悪役も韓流ドラマ特有のそれです。

 韓流ドラマというのは、歴史上の人物が出てくる王朝ドラマなどでもほとんどが根も葉もない作り話(その巧みな作話能力には感心させられますが)で、ファンタジーを楽しんでいるだけなのだから野暮なこと言いなさんな、と叱られるかもしれませんが、「南北融和」一辺倒の文政権下の韓国で進む何とも言いようのない精神の弛緩があのドラマにはよく表われているような気がして、そこが僕にはいくらか不気味だったのです。韓国自身が受けた被害だけではない、金王朝がこれまでどれほど多くの自国民を殺してきたのか、知らないのでしょうか? 公然の秘密ながら、あそこにはいまだに強制収容所(複数)があるのです。お気楽なラブコメの舞台にはなりえない。

 主人公がセレブの財閥令嬢というのも、異常に自殺者が多い「ヘル朝鮮」の悲惨な韓国格差社会の現実から目を背けるもので、その意味でも虚偽は二重三重になっていると言えば、野暮の三乗になるかも知れませんが、裏でそれを非難しながら、見栄張りの韓国人は強い憧れを抱いているようなので、ドラマの舞台装置にはよくそれが使われるのです。

 これがたとえば相手がイケメンの日本男子で、韓国言うところの「戦犯企業」の社長の息子だったという設定なら、どうなるでしょう? そういうことは日本に留学している女子学生の場合ならありえないことではありませんが、その恋をきっかけに、双方が日韓の過去の不幸な交渉史について学び、より客観的で公正な歴史の真実に目覚め、恋の成就と「歴史的な和解」が同時に成立するというようなドラマだと、大いに啓発的・建設的でよいと僕には思われますが、「許しがたい親日だ!」というので、韓国では大バッシングに遭ってしまうでしょう。それだと韓国が学校で教えている歴史も否定することになってしまうので、なおさら具合が悪いのです。しかし、相手が北朝鮮人だと、過去において北朝鮮という国家が韓国にどんな悪辣非道なことをしていても、そこで現在も同じ民族がひどい圧政に喘いでいても、あっさりそのようなことは忘れることができるわけで、その意味で文政権時代ぴったりの「お幸せなドラマ」と言えます。

 韓国では最近、挺対協(正義連)前代表、尹美香のかなり醜悪な「元慰安婦団体悪用スキャンダル」が話題になっていて、彼女はこの前の選挙で国会議員に当選したのですが、世論調査では韓国民の70%が「国会議員をやめるべきだ」と思っているという話です。僕もしばらく前に彼女はソシオパス(社会に深刻な害を及ぼす精神病質人格)だとここに書きましたが、その攻撃的で執拗な「反日」言動、汚い手も平気で使う「親日派」攻撃(朴裕河さんの『帝国の慰安婦』訴訟の黒幕も彼女)にはかねて目に余るものがありました。しかし、慰安婦問題は韓国では「聖域」になっていたため、挺対協もアンタッチャブル(不可侵)な存在で、元慰安婦の中心人物が批判の声を上げるまでわがもの顔でふるまい、誰も手が出せなかったわけです(日韓でベストセラーになった『反日種族主義』の著者たちは正面から批判していましたが)。亭主と義妹が北朝鮮スパイ事件で有罪判決を受けていた(その後、一部は無罪判決を受けた)ことからも、彼女の思想偏向は明らかでしたが、彼女とこの団体が日韓関係悪化にどれほど“貢献”してきたかははかり知れないほどです。彼女たちの目的は慰安婦問題の解決ではなく、それを利用した日韓対立の激化にあったと見るのはうがちすぎではない。「ハルモニ(元慰安婦のおばあさん)」はその政治運動のダシでしかなかったわけで、今頃韓国人がそれに気づくのはむしろおめでたいほどだと言ってよいくらいです。

 しかし、その「政治的悪意」の他に、彼女やその取り巻きが露骨な私腹肥しのためにこれほどえげつないことを重ねていたとは、告発した李容洙さん同様、僕も思わなかったので、ネトウヨならずとも「さすがは何でも金儲けの種にする韓国!」と皮肉の一つも言いたくなります。何かというと儒教的「名分」を振りかざして敵対する派閥を攻撃し、権力を握るとかんじんの国事はどこへやら、立場を悪用した私利私欲の蓄財に励むしか能のなかった李氏朝鮮時代の両班たちと同じです。当時はそのせいで民衆は疲弊し、経済は不振を極めて国は傾き、王とその取り巻きは事大先をコロコロ変えて、変事が起きるとすぐ逃亡を図って中国に保護を求めたり、ロシアに救援を求めたり(自分たちの政治的無能とあくどい搾取が原因で生じた自国の民衆暴動の鎮圧まで外国の軍隊に頼った)、無節操きわまりなく、それが東アジアの政治的不安定を招いた(日本に「併合」される羽目になったのも元々はそれが原因)のですが、学校でそのあたり、本当のことを教えていないからなおさらなのかも知れませんが、全く過去の歴史に学んでいない。

 慰安婦支援施設「ナヌムの家」を管理する坊さん理事たちが「累計10億円以上の寄付金を集めながら、被害者支援にはその5%以下しか使っていないことが分かった」件は前に紹介しましたが、例の「慰安婦少女像」制作の“芸術家”夫婦まで、いかんなく銭ゲバぶりを発揮していたらしいのは、次のような記事を見てもわかります。

校庭に少女像設置しようとしたら…正義連理事が著作権を盾に阻止

 もともとはこの少女像もおかっぱ頭でいすに座り、正面を向いていた。だが、除幕式まであと1週間だった2013年8月、金運成氏側が学校に電話をかけてきた。「著作権侵害なので設置してはならない」という話だった。当時瑞草高校の校長だったイ・デヨンさんは「教育目的で使うのに著作権を主張するケースはほとんどないので当惑した」と話す。学校側は圧力に耐えられず、600万ウォン(現在のレートで約54万円、以下同じ)かけて作った最初の少女像を廃棄した。金運成氏は少女像1体につき3300万ウォン(約300万円)を受け取る。イ・デヨンさんは「金運成氏の少女像はあまりにも高価で、学校の財政的には無理だった。生徒15人が歴史専門家の助けを借りて新たな図案を書き、1カ月で今の少女像を完成させた。費用は600万ウォンだった」と言った。この図案はその後、ソウル・舞鶴女子高校、釜山ハンオル高校(当時はプソン高校)などがそのまま使用した。もちろん著作権料はない。

 学校にまでこの「慰安婦少女像」は設置されているのかと、その「反日」教育の徹底ぶりにはあらためて驚かされますが、それはともかく、この「金運成氏」というのは、言わずと知れたあの彫刻家夫妻の夫の方で、挺対協が世界中に“普及”させようと目論んでいるあの像は何と一体が300万円もするのです! 上の記事を参考に、素材費が60万と多めに見積もっても、一体につき240万の製作料を受け取っていることになる。寄付金や国の補助金なども、かんじんの元慰安婦支援にはほとんど回らず、そういうことに気前良く使われていたのでしょう。そして、直接製作には携わらない場合でも、それとよく似た物は「著作権侵害」に当たるので、著作権料を支払わせるか、さもなければ破棄させなければならない。それが学校など、営利とは無関係なものではおかまいなし。実に素晴らしいではありませんか。日本の左派マスコミの中にはこの夫婦が「気高い理想」のために献身しているような記事を載せているのもありましたが、実態はこれなのです。

 この像は「現在国内外の95カ所以上に建てられている」そうなので、一体240万の製作費として単純計算すると、2億2千800万円をこのゲージュツカ夫婦は稼いだことになるわけです。他にも「金運成夫妻は高さ1.3メートルの標準タイプの少女像よりも小さい、高さ10‐50センチメートルの少女像も1万体近く売った」というのです。これもむろん有料なので、インターネットのクラウドファウンディングを利用して販売され、「クラウドファンディング販売と学校販売の少女像だけで少なくとも3億8000万ウォン(約3400万円)の売上げがあったという」計算になるとのこと。「だが、似たような大きさの少女像をこれよりもはるかに高い値段で学校に渡していた事例も確認されており、関連売上高はさらに多い可能性もある」として、記事はまだ続くのですが、最後はこう締めくくられています。

 金運成氏は2016年から「慰安婦被害者支援」などを掲げて活動している「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」(正義連)=旧「韓国挺身隊問題対策協議会」(挺対協)=の理事を務めている。

 要するに、完全な「慰安婦ビジネス」と化していたわけで、「正義」の看板の下、そこに群がって甘い汁を吸っている連中がたくさんいるということなのです。村山政権のときのアジア女性基金も、この前の「最終的かつ不可逆的に解決」することを目指した慰安婦合意の10億円も、挺対協は「受け取るな!」と妨害したのですが、この問題が「解決」しては困るわけで、引き延ばしていれば、日韓の対立を深められるだけでなく、国内の寄付金も政府の補助金もずっと得られ、それを私物化して儲け続けることができる仕掛けです。日本からの汚いカネは受け取るなと言い、それでも実際は受け取る人が多くいたのですが、それには極力触れないことにして、挺対協の言いなりに「受け取らなかった」元慰安婦を先頭に押し立て、「日本はまともな謝罪も賠償も何一つしない!」と盛んに宣伝して、マスコミはそれをそのまま流すから、多くの韓国人は本当のところを知らない。洗脳的な反日歴史教育を受けているから、若い世代はそれがおかしいとは気づかないのでしょう。気の毒なのは、挺対協にいいように操られてきた元慰安婦たちで、日本からのカネも受け取ることができず、彼女たちをダシに集められた寄付金や政府の補助金は大部分が、反日活動と関係団体の幹部たちが私腹を肥やすのに使われる。尹美香を告発した李容洙さんが「騙された!」と怒るのはあたりまえだということになるでしょう。

 元駐韓大使の武藤正敏氏の記事によれば、「正義連や挺対協出身者は、政権与党の枢要部に入り込んでいる。例えば、池銀姫(チ・ウンヒ)元女性部長官、李美卿(イ・ミギョン)元議員、シン・ミスク元青瓦台秘書官などだ。また、正義連事務総長は青瓦台広報企画秘書官の妻だ。朝鮮日報によれば、現政権の青瓦台首席秘書官や長官クラス経験者の中で、市民団体出身者は既に20人近くいるという。こうした政権の正義連、市民団体とのしがらみが、元慰安婦の中心的活動家よりも正義連を重視する姿勢となって来るのである」(JBpress「金与正の恫喝に屈服の韓国、いずれ南北で対日攻勢に」より)とあって、こういうズブズブのなれ合い関係が成立しているので、文政権がこの問題に消極的対応しかしないだろうことは明らかですが、これが今の韓国なのです。

 武藤氏のこの記事自体、先の高英起氏の記事もそれと関連したものですが、北朝鮮が脱北者のビラ散布にブチ切れ、韓国政府を激しく罵倒したのに対して、「対北ビラ散布禁止法案」を出しますと卑屈なまでにすばやく応じた件について書かれたものです。北朝鮮にどんなに口汚く罵られても文政権は決して怒らない。日本に対してすぐに食ってかかる態度とは180度違うわけですが、これも北朝鮮に対する盲目的な「愛ゆえに」なのです。先の岩田氏の秀逸な表現を借りれば、相手に何と言われようと、「北朝鮮の核王朝体制の枠組みの中に『愛の不時着』を敢行し」続けるのです。

 今後も政権交代が起きないかぎり、韓国の反日攻勢は続くでしょう。慰安婦問題も、徴用工問題も、「最終的解決」を謳ったはずの協定、合意を文政権は一方的に反故にしてしまった。先の日本によるホワイト国待遇外しの輸出管理強化の問題でも、韓国は「不当な敵対行為だ!」と自分たちのやっていることはきれいに棚上げして怒り狂ったのですが、一方的に通告した期限までに日本政府の動きがなかったということで、WTOに提訴すると息巻いている。韓国大法院の徴用工裁判に基づく日本企業資産差し押さえも、「行政府としては条約を破棄することになって、それは国際法違反だから、認められない」とは言わず、都合よく「三権分立」を理由に挙げて何もせず、いつ換金が実行されても不思議はないのです。他方、上に見たように、北朝鮮に対しては卑屈なまでの徹底した迎合政策を取っている。そこに働いているのは盲目的な憎悪と愛だけなので、通常の分別や理性は参加していない。国家レベルでこれだというのは、真に驚くべきことです。

 先の岩田氏の文にも「分派好きで事大の国民性」という言葉がありましたが、李氏朝鮮の昔から、両班たちは絶え間ない派閥抗争を繰り返してきました。今も「積弊清算」と称して、保守派には「親日」のレッテルを張り、これを徹底的に排除して、そのためには冤罪も辞さない。一方、チョ・グクでも尹美香の事件でも同じですが、身内の不正には極力目をつぶろうとする。そして今の事大先は北朝鮮であり、その背後にいる中国なのですが、その本質は「反米」(但し、わが子はアメリカに留学させたりする)ながら、それを露わにするとアメリカを怒らせ、政権転覆につながりかねないので、そこらへんはコウモリ的にならざるを得ないわけです。これが政権交代して権力が保守派に移れば、今度は逆の左派への復讐が行われる。事大先もアメリカに代わるが、中国を本気で怒らせてはまずいので、そのあたりは中途半端な対応を取る。いずれにしても、敵対する勢力に対する憎悪にはすさまじいものがあり、そのあたりは左右同じなのです。許すということを知らず、同胞同士でこれほど憎み合う民族も珍しい。それが「恨(ハン)の文化」なるものの実際の姿です。前にも書きましたが、そこには言葉の真の意味での「公」の観念は欠けている。

 国家間の合意でも協定でも平気で破棄するのを見て、日本人は「国家の体を成していない」と呆れますが、韓国人のウリ(我ら)というのは派閥であり、仲間集団なので、そのときどきに権力を握った側が「国家」を僭称しているだけなのです。だから、政権が変われば、国家も変わるということになって、そこに連続性がないことが深刻な問題だとは思わない。皮肉なことに、「反日」でだけは仲の悪い彼らも協調できる。もしもそれがなければ韓国人は最低限の統一感ももてなくなるだろうと指摘する人がいますが、それは正しいでしょう。

 だから「困ったときの反日頼み」で、代表的なのがあの大阪生まれの李明博大統領でした。彼は保守派でしたが、汚職で告発されることを恐れて、大統領退任の前年、人気取りのために竹島上陸を敢行し、講演で天皇の謝罪を要求するなどした。反日アピールによって韓国人の好感度を上げ、訴追を免れようとしたのですが、安心するのはまだ早かったので、大統領退任から5年後、文在寅が大統領になってから、師匠の廬武鉉(李明博政権下で逮捕されるのを恐れて自殺)の敵討ちで逮捕され、結局、懲役計17年、罰金130億ウォンなどの有罪判決を受ける羽目になった。前大統領朴槿恵と一緒に「積弊清算」の対象になったのです。文在寅一派の「恨」の執念はすさまじい。日韓併合時代にまで遡って「親日派リスト」を作り、親しまれている伝統ある校歌も、あれは親日派文化人が作ったものだから歌うな、と言い、「親日の木」と疑われたものは伐り倒されなければならないのです。

 話を少し戻して、そういうふうに「反日」は免罪符として、保守派にも利用されてきたので、そのあたりいい加減きわまりないのですが、それが免罪符として使えるというのも、韓国の反日教育のおかげなので、80年代の終わり以降の「民主化」のプロセスで、一貫してそれは強化され、日本人の側からすると、不都合な方向に歴史は歪曲され続けてきたのです。それは今の文政権下でほぼ完全な「反日歴史ファンタジー」に近づきつつある(あまり言う人がいませんが、こういう「自民族の歴史の自分の思い込みに合わせた過剰な改変と美化」は、自然な自己肯定感や愛に乏しい人間の心理的補償の一つとして行われるもので、それ自体が病理学的な現象なのです)。

 こういうの、一体どうすればいいのでしょう? 目下のところはどうしようもないので、文政権の北朝鮮への没理性的な「愛の不時着」がどういう結果をもたらし、日本やアメリカとの関係悪化がそこに重なるとどういうことになるか、しばらくは静観しているしか手はありません。ふつう、「民主派」というのなら、北朝鮮の独裁政権になびくのではなく、それに弾圧され、殺されたり、強制収容所送りにされた人々(正確なデータがないので推測ですが、それはおそらく累計で数百万に達する)の方に同情してよさそうなものですが、そういう普遍的な「民主」の政治理念は今の韓国の文政権にはないのです。香港の民主派運動家たちとは違う。おそらく「民主派」と呼ぶこと自体が間違いなので、げんに彼は言論や思想の自由を封殺するような動きばかり見せています。すでに一部の識者が指摘しているように、文在寅は体質的にも北朝鮮に近い、民族主義的全体主義者なのでしょう。彼の取り巻きの、挺対協改め正義連を含む市民団体の幹部たちも同じメンタリティをもっているのです。

 問題は、韓国の人たちがどの程度全体主義的なその体質の危険性に気づいているかということです。韓国の相次ぐ夜郎自大な横紙破りに大方の日本人は腹を立てていて、それは安倍政権支持か不支持かといったこととはほとんど無関係なのですが、今の韓国の人たちはそのあたりもよく理解していないようで、日本人のリベラル派は文政権に好意的だと思い込んでいるフシがある。だから政権が変われば日本人はまた折れてくると思っているようですが、それは明らかな間違いなので、それは僕のような人間を見てもわかるのです。日本政府はもう譲歩はしない。独善的な人間のつねとして、韓国はまたそれを見て憎悪を募らせるということになりかねませんが、それは自らまいた種なのです。

 そのとき、日本はどうすればいいのか? 同じ次元で憎み合うのは愚かなことですが、むやみな譲歩も攻撃もせず、証拠を挙げて嘘は嘘と指摘し、通らないものは通らないと明確に言い、相手を立ち止まらせて自問するよう仕向けるのが一番でしょう。挺対協が慰安婦問題でやってきたようなおかしなプロパガンダを海外に向かってするようなら、面倒がらずにその虚偽性を明らかにする説明を行なうなど、そういうことは努めてマメにやる。そうしていれば、韓国の良識派の意見が韓国内で力を得るということも今より容易になってくるはずです。そうすると、学校で教えている歴史教科書の虚偽に気づく若者も増え、従来の洗脳歴史教育も是正される可能性が出てくる。挺対協はすでに墓穴を掘った。文政権も、日本が冷静で明確な対応を取り続けていれば、いずれ同じことになるでしょう。そういうやり方でうまく行くようならどうぞおやり下さい、という精神的なゆとりをもつことが必要でしょう。

 こういうのは実は一番エネルギーを使うことなのですが、未熟で利己的な人間やモンスター・クレイマーなどの相手をするときは一番効果的なやり方です。こう言えば、韓国の人たちは怒るでしょうが、すでに見てきたように今の韓国はそうと評するしかないほど幼稚で身勝手なのです(他の国の人たちは事情をよく知らないからで、知れば同じことを言うでしょう)。こちらとしては同じレベルの幼稚な感情的対応ではなく、大人の醒めた対応をして、相手が成長するよう促すしかない。でないと日本は永遠に幼稚な隣国に悩まされ続けることになる。韓国の人たちにとっても、それは不幸な未来を作り出すことにしかつながらないでしょう。「愛の不時着」的ノーテンキはドラマの中だけにしていただきたいものです。



祝子川通信 Hourigawa Tsushin


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安倍政権という欺瞞ウイルスの破壊力

2020.05.24(21:38) 726

 グーグルのニュースサイトに次のような記事、というよりYoutubeのニュース映像が出ていました。TBSは最近ここを利用するようになったようです。

【サンデーモーニング】2020年5月24日放送 黒板解説「黒川検事長 定年延長問題」解説:青木理

 わかりやすく、話はよくまとまっている。「これは森友問題の構図と全く同じだな」と思いながら見ていたら、後半でちゃんとその話もして、用意周到です。

 この黒川、森友問題に限らず、あの桜を見る会の問題にしても、意図不明のいい加減きわまりない憲法改正案にしても、いわゆる出口戦略の全くない「異次元の金融緩和」をベースとするアベノミクスにしても、東北大震災、福島原発事故への対応に注力すべきだという反対を押し切って招致した東京オリンピックにしても、彼が“提唱”または進めようとしたものでまともなものが何かあったのかと考えてみると、ほとんど何もなかったことに今さらながら驚かされます。彼はアベノミクスの成果を強調するために、お仲間と組み、役人に命じてデータの粉飾や組替えも好き勝手にやったのですが、実質的には景気は全くよくならなかった。株価を上げるための円安誘導と、日銀による大量買入れ(おかげで株式市場は透明性を失い、経済指標としての意味を失った)を行ない、円安で食品材料など輸入品が高くなったので、物価は実質的に上がったが、円安で潤った輸出企業も内部留保を増やしただけで、人件費には回さず、非正規がむやみやたらと増えて、実質賃金は下がり、購買力が落ちたので、景気がよくなるわけはなかった。むろん、経済格差はさらに広がった。教育についてもいらざる改悪(あの文科相をやっていた下村のアホは今何をやっているのか?)に精出し、他方で学問研究費は削った(このままではノーベル賞受賞者などは一人もいなくなるだろうと言われる)。医療費も同じで、高齢化のため青天井で上がり続ける医療費はたしかに大問題だが、感染症対策など、重要な部分も削ってしまい、それが今回の新型コロナ対応では大きなマイナスになっているのだという。赤字国債も増え続け、安倍政権はそれを日銀に買い取らせたので、その国債保有残高は空前のレベルに達した。日銀は輪転機を回して大量の新札を市中に放出し続けたが、インフレ期待→景気の活性化という目論見は成功せず、何のためにそんなことをしているのか、もはや誰にもわからなくなってしまった。経済面では安倍は有能だったというのも安倍応援団が作った嘘で、最低の国家経営能力しか、この政権はもたなかったということです。

 この前も書きましたが、この政権の最大の負の遺産は社会の広い領域にモラル・ハザードをひき起こしたことです。権力をもつ者が自分やお仲間の利害や己れのケチな自尊心のために嘘を連発し、好き放題やっても許されるのだという。犯罪も、身内のそれは罪にならず、敵のそれなら罪に問うのです。邪魔な相手は人格を貶めるような情報をリークして、信用を破壊しようと画策することさえある(政権に盾ついた前文科省事務次官、前川喜平氏の場合のように)。それでいて、愚劣な安倍ヨイショ本を二冊も書いた元TBS・ワシントン支局長の山口敬之が伊藤詩織さんからの性的暴行の告発で逮捕されそうになったときは、すばやく警察に手を回してそれを阻止したのです。当然ながら、お友達の政治家となると、その保護はさらに手厚くなる。下村の真っ黒けの不正献金疑惑、甘利の斡旋利得罪など、安倍のおかげで救われたのが何人もいるわけです。検察を手なずけておかなければならない理由もよくわかる。

 こんなことを言うと親韓左翼の人たちには不快な顔をされそうですが、そのあたり韓国の「ナロナムブル」政治と全く同じレベルになってしまった。実に、安倍政権こそ韓国政治の模倣者であり、追随者であると、韓国はなぜ自慢しないのでしょう? これほどまでに「韓国に近い」政権はこれまで存在しなかったのです。

 最新の毎日新聞の世論調査では、支持率は過去最低の27%になったという話ですが、これは黒川問題とコロナの無能対応のためで、ほとぼりが冷めれば、健忘症の日本人を欺くことはたやすいと、この政権はまだ考えているかもしれません。一部のネトウヨや極右の論客はこの期に至ってもまだ安倍政権擁護の珍妙な屁理屈を垂れていますが、無理なこじつけが多くなりすぎて、耳を貸す人が大幅に減っているのは、お気の毒と言う他ない。

 笑えるのは、黒川問題に関連して、次のような記事が出ていることです。

黒川氏の麻雀は非違行為に該当 東京高検作成資料で明らか

<品位と誇りを胸に 今一度見つめなおそう 自分の行動と職場の風土>

「東京高等検察庁非違行為等防止対策地域委員会」が作成したものだという話ですが、僕はこれを見て、学校の人権週間の標語を思い出してしまいました。学校というところは、むやみとこの手の標語が好きなものです。しかし、これは子供ではなく、いい齢をしたオッサンたちに向かって語りかけられているのです。記事はこう続きます。

 資料の冒頭には<国民の期待と信頼に応えるよう一層気を引き締めて非違行為等の防止に万全を期してください>とあり、法務官僚や検察官が行ってはならない事例や具体例が示されている。
 例えば<第2 服務規律>では、<信用失墜行為については、刑事罰の対象となる事案が多く、そのほとんどは刑事罰に加え免職などの懲戒処分を受けることになります>とあり、信用失墜行為の代表例としてこうある。
<勤務時間外の交通違反・事故、麻雀等の常習賭博、わいせつ行為等の犯罪行為>
 要するに黒川氏の賭けマージャンは<わいせつ行為>と並ぶ重大な信用失墜行為であり、本来は免職や懲戒処分が相当なのだ。そして、<第3 国家公務員倫理法、同倫理規定>では、<利害関係者とみなす者>として<マスコミ関係者>が挙げられ、<利害関係者から、無償で役務の提供を受けてはならない ※「無償で役務の提供を受ける」とは、ハイヤーによる送迎の受けることがこれに該当します>とある。


 これを見ると、黒川氏の賭け麻雀や「ハイヤーによる送迎」はモロにこの規定に抵触するわけです。しかし、「東京高等検察庁」トップの黒川検事長は、「そのほとんどは刑事罰に加え免職などの懲戒処分を受けることになります」とあるにもかかわらず、「訓告」という処罰と言うにはあまりに軽すぎる措置の上で、退職金を満額もらってやめることになったのです。

 こういうのは、子供たちに「いじめの悪」や「思いやりの大切さ」についてお説教しながら、教師間で執拗かつ低劣ないじめを行なっていたあの神戸の公立学校の教師たちとも相通じるものがありますが、たとえて言うなら、「清く正しい生活」を説く中学か高校の校長が、平日の昼間、泥酔の上、校長室で生徒に性行為を迫っていたのと同じくらいのインパクトがありそうです。下の者は規則やモラルを遵守しなければならないが、トップはそれを免除されるのです。究極のモラル・ハザード。

 僕の弟は、かつて国税関係の役人をしていました。国税専門官というのをやっていたのです。こっけいだったのは、母親が不良の長男の行いを心配していて、まっとうな職につけ、税金はきちんと払え、つまらないことに腹を立てて暴行事件など起こして警察沙汰になるようなことは厳に慎めと、くどく僕に言って寄越したことです。とばっちりを受けて弟がクビになっては困るからだという。最初の件は別として、第二、第三については濡れ衣もいいところで、思い当たるフシは全くない。そもそもの話、兄と弟は別人格なのだから、別にこちらがどうでもそんなことにはならないだろうと言いましたが、おまえは世の中を知らないからそんな無責任なことを言うので、品行のよろしくない兄のために真面目な弟が失職するようなことがあっては世間にも顔向けできないと言う(弟に公務員になるよう熱心に勧めたのは僕で、そうすれば両親も喜んで、自分に対する風当たりがいくらか弱まるだろうと期待したのですが、今度はそう言って責められるとは想定していませんでした)。

 その弟にかつて聞いた話ですが、盆暮れには不可解な贈答品がいくつも届くので、それを送り返すのに余分なカネがかかるという話でした。大した肩書でもない者にまでそれが届くのだから、上は推して知るべしですが、彼は堅苦しい人間ではなく、ほどほどに人情味があって、杓子定規の対応をする人間ではなかったものの、そういうけじめははっきりしていたので、相手もそれがわかると送って寄越さなくなるという話でした。彼は酒も飲まなかったので、接待も利かない。「役得」と言いますが、公務員は程度の差こそあれ、そういう誘惑にはつねにさらされているのです。昔、ある地裁の判事が休みの日にパチンコを打っていたところ、その日はなぜかよく出るので喜んでいたら、そこの店主が愛想笑いを浮かべて挨拶にやってきた。その店主は係争中の民事事件に関係していることがその時点でわかり、すっかり興ざめになってあわてて店を出たという話でしたが、全く油断も隙もないと、その判事は嘆いたそうです。監視カメラを見て、店主はその判事の姿に気づき、台を裏から遠隔操作してよく出るようにしていたのです。

 麻雀好きの黒川氏の場合、新聞記者相手に負けることは少なかったでしょう。それは彼の腕がよかったからではないので、勝たせるように、少なくとも大きな負けにはならないように相手が手心を加えてくれるからです。ハイヤーの無料送迎にも、彼は慣れてしまっていた。その程度の役得は当然だと、抵抗感をもたなくなっていたのでしょう。それはそれ自体としては「小さな不正」だが、それが「大きな不正」につながりかねないものであるのは、高い道徳心をもつ人間にはわかる。安倍官邸は彼のその弱点をよく見抜いていた。邪悪な人間はそのあたり、非常にさといものだからです。彼が検事総長にならなかったのは日本社会にとって幸いなことでした(安倍政権はアベノミクスの何本目の矢か知りませんが、「IR推進法」という素晴らしいカジノ法案を成立させたので、退職金は海外ではなく、日本に開設予定の、横浜か大阪のカジノで気前よく使って下さるよう、皆で黒川氏にお願いしましょう。7千万あれば、一年ぐらいは遊べるかも)。


祝子川通信 Hourigawa Tsushin


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いかにも安倍政権らしい、わけのわからない展開

2020.05.22(16:50) 725

 一体どうなっているのかと、首を傾げた人が少なくないでしょう。黒川東京高検検事長を次期検事総長にするために違法に定年を延長し、さらにそれを事後正当化するために、改正公務員法案に幹部検察官の裁量定年延長制規定を紛れ込ませ、かえってそれが世間のさらなる怒りを招いて、国会でも野党の徹底抗戦に遭遇し、安倍政権は今国会での成立を断念したのですが、今度は公務員の定年延長法案自体、「公務員の優遇のしすぎ」という批判があるということで、廃案にする意向を政府は示しているという。公務員の組合組織を支持基盤にする立憲民主党(巨大労組を頼みにするから、かえって国民的支持が広がらない)にすれば、「ちょっと待ってくれ…」と言いたいところでしょう。

  しかし、よく考えてみれば、そうした改正案そのものが「不要不急」だったので、「まとめて廃案」になっても多くの国民は何ら痛痒を感じないでしょう。働きに対して給与が高すぎる高齢公務員を増やすぐらいなら、若者をその分多く雇った方が明らかに社会のためだからです。薄給の公務員の非正規が増えているのも、人件費削減のためで、その理由の一端は中高年公務員の高給のためなのです。どう見ても社会的公正の要請とは一致しない。退職金もたっぷりあることだし、年金支給年齢まで、働きたければ非正規に準じる待遇で働けばいいので、それ以上は欲のかきすぎです。

 けれども、今頃になってそんなことを言うくらいなら、コロナ騒ぎの折も折、こんなクソ法案、初めから出さなければよかったのだということになるわけで、安倍政権はその程度のこともわからないアホの集まりなのか、ということになってしまいます。国会議員をやらせている意味自体がなさそうなので、ほんとにこの国は終わっている。安倍首相自身、今後自分にいいことは一つもなさそうなので、早く総理をやめたい一心でしょう。一年延ばした東京オリンピックも、それで開催できなければ中止(招致運動に始まって、これまでどれほどの巨費を費やしてきたことか)だという話だし、例の憲法改正も、「安倍政権下ではやらせない」という有権者が大半なので、何もかもどうでもよくなりかけているはずです。あのアベノマスク(再来年ぐらいには届くのか?)なんて、末代までの笑いものです。女房のアッキーに足を引っ張られるのにも疲れた。それでもまだ愛想を尽かさないところからして、よほどアッキーには惚れているのだろうから、引退後、『愛の不条理について』というような本でも書いたら体験に裏打ちされた説得力があって、売れるかもしれません(300万で代筆を引き受けるので、よかったら安倍首相にお伝えください。「感動的」なものに仕上げる自信あり)。とにかく、彼の政治家としての賞味期限は完全に過ぎてしまった。

 話はまだこれで終わらないので、今度は禁じ手連発で守ろうとしたその黒川検事長がコロナの緊急事態宣言下、産経新聞の記者2人、朝日の元記者1人と、産経記者の自宅で長時間“3密”の賭け麻雀に興じていたという話が週刊文春にすっぱ抜かれて、辞表を提出する羽目になったのです。それで、後任には名古屋高検検事長、林真琴氏を充てる予定だという。これ、検察側は元から林氏を東京高検検事長に推していて、次期検事総長にするつもりだったのが、安倍官邸の横槍で東京高検は黒川氏になり、しかし、稲田検事総長が辞任要請に応じないというので、無理に黒川氏の定年を延長し、7月末が63歳の誕生日の林氏より後まで居座らせておいて、強引に稲田検事総長の跡目にするつもりだったわけでしょう? ところが、この黒川賭け麻雀事件で、そうした策謀が全部水の泡になり、最初の検察側の希望のとおり、林次期検事総長が濃厚になったのです。要するに、人騒がせなロクでもないことばかりして、結局それは何の意味もなかったことになるわけです。上の公務員法改正案と全く同じ。

 こういうの、何と言えばいいのでしょう? 愚劣・お粗末の2乗で、おいそれとは言葉が見つからない。何もかも意味のないことばかりだったのです。この前も書きましたが、このままでは黒川検事総長は世論の反発があってとうてい無理な情勢になっていました。黒川氏は官邸が総長就任を要請しても固辞するだろうと見られていた。そこで官邸は、お友達メディアの産経新聞関係者を使って、文春にこの件をリークさせたのではないか? そしたら、黒川氏本人の資質の問題にして、やむを得ず切ったということにでき、就任を断られて自分のメンツが潰れることは避けられると考えたのでしょう。森法相、より正確には安倍官邸が下した処分は「訓告」という最も軽いものだったそうですが、それは退職金を満額もらえるようにして、黒川氏に恩を売ろうとするものです。だから、辞めても後で具合の悪いことを暴露したりするなよ、と。

 姑息なのは、林氏を後任に持ってきて、その後検事総長に就任という流れにして、当初の検察の希望通りにすることによって、「だから、ボクやアッキーや、自民党にあんまりキツいことしないでね?」という検察へのメッセージを発したことです。検察を怒らせたままでは、とことんやられかねない。1億5千万の破格の選挙資金を安倍官邸が出した河合案里は逮捕直前だし、森友事件再捜査の機運も高まっているなどのことからして、安倍の「ボクちゃんの、ボクちゃんによる、ボクちゃんのための政治」の暗部が次から次へと暴かれかねない。首相退任後、安倍が逮捕されるという韓国政治並のことも起きかねない。最近不仲が伝えられる菅官房長官と黒川氏はべったりで、黒川定年延長はむしろ菅氏の意向が大きかったのではないかと言われますが、この件では仲良く安倍・菅の利害が一致して、「あの麻雀狂いのことをリークして、仕方なくこうなりましたということにしよう」という密談があったか、失点続きの例の「官邸官僚」たちが、「今度はうまく行きますよ」ということで、リークを具申したのかもしれない。それなら、じゃああの無理な定年延長は何だったんだということになりますが、そこまでは知恵が回らないのです。

 全くもって救いがたい政権です。33%まで下がった支持率が3割を切るのは時間の問題で、この際打てる手は何でも打とうと死にもの狂いなのかもしれません。前文科省事務次官の前川喜平氏は、「黒川氏は安倍官邸に何か弱みを握られているのではないか?」と言っていましたが、海外のカジノ通いや、賭け麻雀がそれだったのかも知れません。しかし、もう利用価値がなくなったので、それをリークしてご本人に詰め腹を切らせることにしたのです。

 森友事件で公文書改竄を指示した佐川は結局惨めなことになったし、黒川氏も不名誉なかたちで辞表を提出するよう仕向けられた。政権を自ら盾となって守ろうとした“忠臣”の末路がそれだというのは皮肉なことです。黒川氏の場合、賭け麻雀程度で、破廉恥な少女買春の類でなかったのだけはまだマシですが、この政権に仕えると、後がロクなことにならない。ノーテンキなアッキーは、自分がしでかした数々のロクでもないこと(おかげで自殺者まで出た)はきれいに棚に上げて、営業休止要請で自分の経営する居酒屋UZUが赤字で、小池東京都知事の休業補償が不十分だと文句タラタラだという話ですが、こういうのと、安倍、麻生、菅などの“黒い政治家”たちは何のお咎めもなしに無傷で窮地をすり抜けるのでしょう。その周りには切られたトカゲの尻尾がたくさん散らばっている。よく見るとそれはトカゲではなくて、生きた人間なのですが。他にも罪もないのに汚名を着せられかけた人たちがたくさんいるわけです。それだけの犠牲を払ってこの政権が成し遂げた功績というのは一体何なのか? 忖度行政、お友達で固めた情実政治、罪は全部下におしつけて責任はまるでとらないリーダー学。要はモラル・ハザードを社会全般に行き渡らせたというだけではなかったのか? 東京オリンピックがこれで中止になれば、莫大な財政支出も全部パーになる。戦後最長政権の、それが実態だったのです。いまどきの若者ふうに言えば、国民としては「脱力感半端ない」ということになるでしょう。

“失言美魔女大臣”こと森雅子法相は続投を命じられたそうですが、官邸に代わって汚れ役を最後まで務めなさいということで、彼女もトカゲの尻尾の一つ、アベ政治の犠牲者の一人なのかもしれません。ご本人にその自覚があるかどうかは知りませんが。



祝子川通信 Hourigawa Tsushin


政治
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