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イラク戦争の二の舞か?

2020.01.06.21:16

 新年早々、またアメリカがやらかしてくれたようです。例のイランの司令官殺害です。まずはロイターの記事。

焦点:イラン司令官殺害、米政府の法的根拠に疑問の声

 イランとイラクがごっちゃになっているのでわかりにくいが、イラクのアブドルマハディ首相がアメリカを非難しているのは、イランが影響力を強めつつあるイラク国内で、しかもイラク政府には無断で、イランのソレイマニ司令官殺害が行われたからです。これは明らかに国際法に違反する。この後、イラク議会が米軍の撤退を求める決議を採択したのを受けてトランプは記者団に、「仮にイラクが米軍の撤退を非友好的なやり方で要求してきたら、『いまだかつて見たこともないような制裁を科す。イランへの制裁が比較的大したものではないように見えることだろう』と強調した」(ロイターの別の記事)そうで、傲慢な「大国のエゴ」むき出しですが、元はと言えばトランプが他国の反対を無視して、イラン核合意から勝手にアメリカを離脱させて、イランを尖鋭化させたのがまずかったのです。さらにイランのイラクへの影響力云々に関しても、ブッシュ・ジュニア時代のアメリカが一方的に仕掛けた無法なあのイラク戦争(フセインという「血も涙もない独裁者」から「解放」したはずだったのに、イラクの人たちがアメリカを忌み嫌うようになったのはなぜなのか?)が原因だったと言えるので、トラブルの種を自らせっせと作り出しているのです。「おまえが一番悪いだろうが!」と言いたくなる。

 だから、「ソレイマニ司令官による差し迫った脅威」があったからとするアメリカ政府の「自己防衛」論も眉唾なので、「大量破壊兵器を隠し持っている」(実はなかった)としてイラクを攻撃したときのブッシュ政権のあれと同じではないかと疑われるのです。トランプの最大の動機は、例のウクライナ疑惑から国民の関心を逸らし、今年11月の大統領選に有利なイメージ(マッチョ崇拝の強いあの国では「敵を倒す」強さが好まれる)を作るためのアピールだったのではないかと。

 しかし、これで中東情勢がさらに悪化するのは確実です。

ソレイマニ司令官殺害でトランプ米大統領の中東戦略は支離滅裂に

 中国とロシアは、「それ見たことか!」と言わんばかりに、「アメリカの国際法違反」を非難する声明を出しています。これも「おまえらが言うな」という感じはするものの、予想どおりの展開で、商人のトランプは間違いなく「まずいディール」をしてしまったことになります。これでイランが報復し、アメリカがそれに倍する攻撃(愚かなプライドからそうしないではいられない)をイランに仕掛けることになると、厄介なことになる。イスラム過激派のテロをこれまでアメリカは一方的に非難してきましたが、この司令官殺害はテロではないと、どうやって世界を納得させられるのか? また、これで再びテロが頻発するようになったとき、それがアメリカが呼び寄せたものではないとどうして言えるのか?

 2020年が「大国の横暴」で幕開けとなったことは、幸先のよいことではありません。

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あの植村隆が韓国ジャーナリズムから「真実」ゆえに表彰された?

2019.12.24.10:52

 ネットに次のような記事が出ていました。

朝日「慰安婦誤報」で韓国から賞金100万円…植村隆記者は「光栄です」

 同じデイリー新潮のサイトには、別の「植村記事」もあり、順序としてはこちらを先に読んだ方がよさそうです。

「慰安婦誤報」の植村隆氏が韓国紙に登場 バッシングも裁判敗訴も日本の右傾化のせい

 それで後ろから見ていくと、これは有名な話ですが、発端は朝日新聞の記者時代、彼が書いた記事に明白な「誤り」があったことでした。

 そもそも、1991年8月11日に朝日新聞大阪版に掲載された植村氏の“スクープ”は、「思い出すと今も涙」という記事で、慰安婦の支援団体から入手した元慰安婦の金学順さんの証言テープをもとに執筆されたものだ。

 記事は〈日中戦争や第2次大戦の際、「女子挺身隊(ていしんたい)」の名で戦場に連行され……〉と始まって、韓国に先駆け、韓国人元慰安婦の証言を紹介した。その後の同国の反日・慰安婦活動に火をつけたきっかけとなった。

 ところが、金さんの記事が出た後、「養父によって慰安所に売られた」と〔金さん本人が〕発言。軍によって連行されたわけではなかったことが判明し、すでに朝日新聞(2014年12月23日付)は〈この女性が挺身隊の名で戦場に連行された事実はありません〉と訂正した。


 朝日新聞は、「1983年(昭和58年)以降、吉田証言を16回にわたって記事にしてきた」が、「2014年8月5日に吉田証言を虚偽と判断して、すべての記事を取り消した」とウィキペディア「吉田清治」の項にもあるように、一人の目立ちたがりの虚言症患者に振り回されて、80年代から虚偽の日本軍による「慰安婦強制連行」話を広め、韓国の反日左翼団体(とくに挺対協)の勢力拡大とその後の日韓関係の悪化に大きく“貢献”したのですが、植村氏のこの記事は、その流れに乗った「誤報」でした。

 植村氏は、「2015年(平成27年)に西岡力、櫻井よしこの両氏と関連する出版社に対して名誉棄損の裁判」を起こした(ウィキペディア「植村隆」の項)のですが、それは「捏造」だとする批判に対してであって、「23年前に自分が書いた2本の記事が『捏造』と批判され続け、その結果、家族や周辺まで攻撃が及」び、「私の人権、家族の人権、勤務先の安全を守る」ことが困難になっているということを理由としたものでした。

 要するに、ややこしいが、彼は「意図的な捏造」は行なっていないと主張したのであって、大弁護団を結成して訴えた一連の裁判(他にもある)ではそこが争われたのです。一方、客観的に見て彼の「女子挺身隊の名で戦場に連行され」云々が間違いだったことは、朝日新聞自身が認めている通り明白なので、「慰安婦のことを韓国ではそういうふうに(=挺身隊と)言われている」から、「報道した内容に誤りはないと主張」(同上)するのは筋が通らないわけです。挺対協が勝手にそう誤認して、国内のみならず、世界にもその虚偽話を広め、彼らは頑固にそれを訂正しようとはしなかったのですが、だからといってそれが「誤報」ではなかったと言うのは無責任すぎる(朝日に掲載された一連の「吉田証言」関連記事が、韓国反日市民団体とメディアによってその虚偽の“補強証拠”として悪用されたのは言うまでもありません)。

 誤りはそれだけではない。ウィキペディアにはその朝日の植村記事の問題箇所も出ているので、それも見ておくと、

 日中戦争や第二次大戦の際、「女子挺(てい)身隊」の名で戦場に連行され、日本軍人相手に売春行為を強いられた「朝鮮人従軍慰安婦」のうち、一人がソウル市内に生存していることがわかり、「韓国挺身隊問題対策協議会」(尹貞玉・共同代表、十六団体約三十万人)が聞き取り作業を始めた。同協議会は十日、女性の話を録音したテープを朝日新聞記者に公開した。テープの中で女性は「思い出すと今でも身の毛がよだつ」と語っている。体験をひた隠しにしてきた彼女らの重い口が、戦後半世紀近くたって、やっと開き始めた。
 尹代表らによると、この女性は六十八歳で、ソウル市内に一人で住んでいる。(中略)女性の話によると、中国東北部で生まれ、十七歳の時、だまされて慰安婦にされた。二、三百人の部隊がいる中国南部の慰安所に連れて行かれた。慰安所は民家を使っていた。五人の朝鮮人女性がおり、一人に一室が与えられた。女性は「春子」(仮名)と日本名を付けられた。一番年上の女性が日本語を話し、将校の相手をしていた。残りの四人が一般の兵士二、三百人を受け持ち、毎日三、四人の相手をさせられたという。「監禁されて、逃げ出したいという思いしかなかった。相手が来ないように思いつづけた」という。また週に一回は軍医の検診があった。数ヶ月働かされたが、逃げることができ、戦後になってソウルへ戻った。結婚したが夫や子供も亡くなり、現在は生活保護を受けながら、暮らしている。


 要するにこれは「挺対協」の完全な提灯記事なのですが、よく見ると、「『女子挺身隊』の名で戦場に連行され」という箇所と、「十七歳の時、だまされて慰安婦にされた」という箇所が矛盾しているわけです。だから「朝日新聞社は上記の植村の記事について、『記事の本文はこの女性の話として「だまされて慰安婦にされた」と書いています。この女性が挺身隊の名で戦場に連行された事実はありません。前文の「『女子挺身隊』の名で戦場に連行され」とした部分は誤りとして、おわびして訂正します。』と謝罪記事を掲載」する羽目になったわけです。書いている本人がこのおかしさに気づかないわけはない。さらに、

 記事の元になった証言を行った金学順はアジア太平洋戦争韓国人犠牲者補償請求事件の原告の一人であったが、裁判の訴状の中には「女子挺身隊」の名で戦場に連行されたといった記述はなく、「そこへ行けば金儲けができる」と養父に説得され、養父に連れられて中国に渡った。と記述されている。

 とあるので、註に出ている訴状に直接当たってみると、たしかにこう書かれています。

 原告金学順(以下、「金学順」という。)は、一九二三年中国東北地方の吉林省で生まれたが、同人誕生後、父がまもなく死亡したため、母と共に親戚のいる平壌へ戻り、普通学校にも四年生まで通った。母は家政婦などをしていたが、家が貧乏なため、金学順も普通学校を辞め、子守りや手伝いなどをしていた。金泰元という人の養女となり、一四歳からキーセン学校に三年間通ったが、一九三九年、一七歳(数え)の春、「そこへ行けば金儲けができる」と説得され、金学順の同僚で一歳年上の女性(エミ子といった)と共に養父に連れられて中国へ渡った。トラックに乗って平壌駅に行き、そこから軍人しか乗っていない軍用列車に三日閥乗せられた。何度も乗り換えたが、安東と北京を通ったこと、到着したところが、「北支」「カッカ県」「鉄壁鎭」であるとしかわからなかった。「鉄壁鎭」へは夜着いた。小さな部落だった。養父とはそこで別れた。金学順らは中国人の家に将校に案内され、部屋に入れられ鍵を掛けられた。そのとき初めて「しまった」と思った。

 この訴訟が東京地裁に初めて提訴されたのが植村氏の記事と同じ年の1991年12月で、彼はこの訴状の内容を知っていたのではないかと疑われたわけですが、仮にそうでなかったとしても、記載を知った後も自分の記事の訂正は行わなかった。訴状の文面を読めばわかるとおり、彼女を「だました」のは日本軍ではなく、彼女の「養父」であったことは明らかですが、朝日の彼が書いた記事からはどう見てもそうは解釈できない。「日本軍の意図的な偽計」によってそうなったかのように書いたのです。「強制連行」とは言えないまでも、日本軍に騙されて慰安婦にされたのだと。事実は養父(当然、韓国人)が娘を売り飛ばしたのです(言うまでもなく、だから気の毒な金さんの運命への同情は不要だということにはならない)。

 確かにこれは「捏造」と言われても仕方のないような書きぶりなので、だから裁判でも敗訴したわけです。「裁判所の右傾化」のせいにはできない。要するに、植村氏は独立したジャーナリストとしての誇りをもたない、慰安婦問題を政治利用した挺対協のたんなる使い走りでしかなかったわけです。

 ところが、冒頭の記事によれば、韓国ジャーナリズムは「年に1度、真実の追求に努めたジャーナリストに与えている」名誉ある賞と賞金を植村氏に与え、その“貢献”をたたえたというのです。記事によれば、植村氏はそれを断るどころか、次のように述べてそれを有難く拝受した。

「賞の受賞は、“負けずに頑張れ”という韓国ジャーナリズム界の大きな励ましだと思います。私を応援してくれる韓国の皆さんに感謝します。この受賞をきっかけに日本と韓国のリベラル勢力の交流が一層深まることを願っております」

 僕は日本国内で植村氏に加えられたプライバシーもへちまもない激しいバッシングを見て、いくら何でも度が過ぎると思っていた人間の一人ですが、彼がジャーナリストとしてロクな裏取りもしないまま、「まとも」とは言えない記事を書き、その後も非を認めようとしなかったのは上にも見た通りたしかなので、「真実の追求に努めたジャーナリストに与えられる賞」を受賞するなどというのは、ブラックジョークとしか思えません。こういうのは、韓国ジャーナリズムが自らの偏向・虚偽報道の正当化に日本人ジャーナリストを利用しようとするいつもの動機から出たものであることは明白ですが、日本でのあのバッシングがトラウマになっていたとしても、ジャーナリストの良心に照らしてそれは受けられないと考えるのがふつうでしょう。

 しかし、彼の感覚はふつうではない。後ろの新潮記事にもこんな箇所があります。

植村:1991年8月11日、私の書いた記事は、韓国挺身隊問題対策協議会が金学順おばあさんの証言を調査しているという内容だった。争点は慰安婦に対する強制性だ。「強制的に連れていった」というおばあさんの証言だけで証拠の文書はない。だから私は報道で「強制」という言葉は使わなかった。それでも、こうした判決が出たのは、日本の裁判所が右傾化したためだ。(これ自体、支離滅裂で何を言いたいのかわかりませんが、そのまま)

「強制的」どころか「養父に連れて行かれた」のだが……。それにしても「裁判所が右傾化したから負けた」というのだから恐れ入る。たしかに親日が罪になるような韓国の裁判所であれば、植村氏に軍配が上がるかもしれない。なにしろ、慰安婦問題を客観的に論じた「帝国の慰安婦」の執筆者である朴裕河・世宗大学校日本文学科教授を、検察が虚偽だと起訴するような国である。その日本語版書き下ろし版を出版したのは、ほかならぬ朝日新聞出版なのである。

 これについて、京郷新聞の記者はこう問うのだ。〈『帝国の慰安婦』という本は、慰安婦は自発的であり、日本軍と同志的という観点の本である。そのような本を出すのは朝日が保守化したという証拠ではないか?〉

植村:朝日新聞出版の判断だろう。系列社ではあるが、金儲けのためには何でも出版するところだから。日本には朴裕河のような人を信じたい知識人もいるが、大抵はその分野には関心がない。


 これに怒った朴裕河教授はフェイスブックで反論したという話なのですが、ろくすっぽ読みもしないでこういう愚劣なことを言っているわけで、「『帝国の慰安婦』という本は、慰安婦は自発的であり、日本軍と同志的という観点の本である」と断じる京郷新聞の記者自体が悪意の曲解を行なっているのです。しかし、無責任にそれに歩調を合わせて、自分が受けた「捏造」批判以上に心ない中傷を朴教授に対して行なっているのだから呆れてしまう。こういうのを見ると、彼へのバッシングに同情していた人たちも、「おまえがやってることはそれに劣らず悪質ではないのか?」と白けてしまうでしょう。こうしてまた叩かれる原因を自ら作り出しているのです。

「この受賞をきっかけに日本と韓国のリベラル勢力の交流が一層深まることを願っております」という彼の受賞の弁は何を意味するのか? ハンギョレに再々登場する、和田春樹や山口二郎といった面々と共に、韓国側報道や歴史教育の虚偽性には一つも触れることなく、日本が安倍政権の下、「過去の歴史を反省」せず、「危険な右傾化」を続け、嫌韓と軍国化への道をひた走りしているというようなことばかり言って、いっそう日韓の対立を煽りますといった“誓い”の言葉なのでしょうか? これまでの経緯を見ると、「日本と韓国のリベラル勢力」の共闘が日韓対立深刻化の大きな原因になっていたことはたしかで、それが逆にネトウヨの勢力を拡大させ、一般日本人の「嫌韓」も強化されてしまったのですが、そういう因果関係は彼らには全く認識されていないようで、いい加減にしてくれと言っても、馬耳東風なのが悲しいところです。

 おそらくネトウヨからは、「売国奴の植村は二度と日本に戻ってくるな。韓国に帰化しろ!」といった暴言がすでに発せられているでしょう。再婚した奥さんも「太平洋戦争犠牲者遺族会で働いていた女性」で韓国人だし、現職も「韓国のカトリック大学校招聘教授」(いずれもウィキペディア)なので、実際にそうなってしまいそうですが、韓国に帰化して無茶苦茶言っているあの保坂祐二教授みたいに、韓国反日派に忠誠を誓うあまり、「反日種族主義」の権化みたいになってしまわないよう気をつけていただきたいものです。

アメリカ帝国と中華帝国、どちらがマシか?

2019.12.11.17:00

 先進国であれ、発展途上国であれ、国家運営がうまく行っているところは今はほとんどないように思われますが、今後は気候変動による異常気象の多発や自然破壊の末の食糧難、フロンティア喪失による資本主義の行き詰まりなど、ネガティブな要因の重なりが予想されるので、事態が大きく好転することは望み薄です。「貧すりゃ鈍する」で、今後は経済的な行き詰まりから国家間紛争が多くなり、戦争に発展する危険も高まるでしょう。弱り目に祟り目で、大地震や火山噴火なども起き、大混乱の中でついに核戦争に突入、なんてことももはや杞憂ではない。

 二十世紀、ことにその半ば以降は、アメリカの時代でした。米ソの冷戦は、ソ連の崩壊によってあっさり片がつきましたが、これは資本主義側にもマイナス面が多かったようで、それまでは共産主義の浸透を恐れて社会主義的な施策も多く行なわれていたのが、資本主義丸出しになって、金融資本と多国籍企業のやりたい放題になり、グローバリズムを錦の御旗として、政府がその使い走りと化したアメリカでは貧富の差の拡大と同時に、産業空洞化を招いて、国力は低下しました。そこに、make America great again!を叫ぶトランプが登場し、彼はそのあたりの因果関係は全く理解していないようなので没落白人層を救うことには少しもならないと思いますが、ともかくカン違いした彼らの不満を集めて大統領に当選したわけです。

「自由と民主主義」を掲げるアメリカが、自国の世界支配の拡大のために、裏でCIAなどの諜報機関を使って他国の民主政権の転覆を図り、軍事傀儡政権を作るなどのことを平然とやっていたというのは、ノーム・チョムスキーの著作などでおなじみですが、21世紀になった今、その力に大きな陰りが見えているのは歴然としているので、代わって台頭してきたのが広大な国土と14億の人口をもつ共産党一党独裁下の中国です。もはやあの国は共産主義国家ではありませんが、「自由と民主主義」を否定する(西側諸国を見てもわかるようにそんなものは腐敗と堕落しかもたらさないのだ!)中央集権独裁国家の強みと、国民の物質的欲望には応える資本主義的なシステムをもつという点で、旧ソ連とは違う強みをもつ。

 この新・中華帝国は世界制覇の目論見をもはや隠さなくなりました。習近平の時代になってそれが顕著になってきたので、まずカネ(AIIB、アジアインフラ投資銀行なるものを作った)で手なずけて衛星国を増やし、昔の日本の「大東亜共栄圏」の拡大バージョンみたいな「一帯一路」構想を出して、自分がその盟主になり、支配権を広げて、アメリカに代わって自分が覇権を取ろうという態度を公然と示すほど自信をつけたのです。領土的野心も隠さなくなった。

 その下心が露骨に見えるようになったので、他の国々は警戒するようになりましたが、9.11以後目に余るようになったアメリカの暴走(ブッシュ・ジュニア政権下でのアフガン、イラク攻撃はいずれも国際法違反で、まともな人たちを唖然とさせた)を斟酌したとしても、中国がそれと較べて「良心的」であるかどうかには疑問符が付くので、最近のウイグル自治区問題、香港騒乱は、習近平の「中華帝国」の“体質”を見る試金石になっています。

 次のニューズウイークの記事などはかなり笑えるものです。

・ウイグル人権法案可決に激怒、「アメリカも先住民を虐殺した」と言い始めた中国

「おまえが言うな!」と中国は怒っているという話ですが、確かにアメリカは先住民に対してひどいことをした。残された先住民も相変わらずひどい仕打ちを受けているのは、昨年公開された映画『ウインド・リバー』にも描かれている通りですが、中国のこの論理は、「たしかにオレは強盗殺人をしているが、同じ前科をもつおまえに言われる筋合いはない」と言っているのと同じで、あまり説得力はない。強権によるチベット支配(そもそもそれ以前の侵略が押し込み強盗に等しかった)も同じですが、無茶苦茶なことを今現在やっていて、それを批判されると、「他にも似たようなことをやっている奴はいるのだから、オレだけ非難するな!」と真面目に言い募るのです。

 アメリカの場合にはまだしも、国内に政府を批判する自由はある。中国にはそれはないので、ネットに書いただけで、監視者に密告されて逮捕されるのです。ウイグル問題でも、国内の情報統制は徹底しているから、大方の国民は自国政府がやっていることを知らないままでしょう。香港問題も、「政府発表」しか知らされていない。歴史教育にしてからが、韓国とどっこいどっこいの「洗脳自画自賛教科書」を使って行われているのです。そこには学問の自由も、言論の自由もない。北朝鮮みたいに経済的に無能ではないというだけの話です。

 中国、韓国、北朝鮮と、思えば日本は厄介な国々ばかりを最も近い隣人としているわけですが、わが国はかつて中国を侵略して日中戦争を戦い、朝鮮半島を植民地として支配下に置いていたのだから、今のこれらの国々のありようと無関係と言うことはできない。いずれもその後にできた国家であり、体制だからです。そうでなければもっと良い国々になっていたという保証はないが、関係はあるのであって、それで恨みも残してしまったので、これは一種のカルマのようなものです。

 話を戻して、アメリカをはじめ西側先進国には、「中国はいずれ一党独裁をやめて、政治も民主化の方向に舵を切るだろう。かんたんには行かないことなので、時期を見計らっているだけだ」と楽観視する見方があったようですが、それは完全に裏切られました。ウイグル問題でも、香港問題でも、逆の統制を強めようと強引な手法を取ったことから、事態は悪化したのです。むしろ先祖返りして、昔の王朝時代の中華帝国に戻ろうとしている。

 それは時代錯誤の間違ったことだと言っても聞かないなら、世界としてはその企てが潰れるようノーと言い続けるしかない。おぞましい国と見られて、国際的に信用を失うだけだということになれば、世界制覇もクソもなくなってしまうので、行いを慎まざるを得なくなるでしょう。中国人は実利感覚には秀でた民族なので、そのあたりバランスを取ることはできるだろうと思います。今の米中経済戦争も、覇権争いの側面が濃厚ですが、分の悪い中国は落としどころを模索しているところだろうと思います。

 両者の覇権争いは今後も続くのでしょうが、アメリカも中国も猛獣です。猛獣に通常の「良心」を期待することはお門違いなので、彼らがあまり勝手なことができないように、賢く仕向けるしかない。猛獣使いとしての自覚と能力を僕らはもつように努めなければならないということですが、さしあたってはこのウイグル問題と香港問題に世界の注目が集まっていることを、中国政府にアピールし続けることでしょう。「あーっ、あんなことしてる!」と騒がれるのが、習近平政権としては一番イヤなはずです。アメリカ議会の非難決議に対するヒステリックな反応も、それをよく示している。

 ちなみに、「再教育(re-education)」という名の洗脳と拷問は、毛沢東以来の中国共産党のお家芸です。僕が高校生のとき読んだ毛沢東の伝記(著者が誰か忘れましたが、西洋人の書いたもの)は高潔善良な人柄が強調されていて、「聖人伝」のようでしたが、彼の実像はサイコパスに近かった。習近平はそれを「お手本」にしているのかもしれません。

香港の若者

2019.11.19.16:14

 李栄薫編著『反日種族主義』日本語版を買って読み、「確かにこれはいい本だ」と感銘を受けたので、それについて書くつもりだったのですが、先にこちらを書いておきます。

「妊婦に催涙スプレー」「出歩くだけで逮捕」荒れ狂う香港で若者に広がるある言葉

 一読するだけでそのすさまじさがわかり、逮捕者もすでに3400人に達している(大半が若者)という話ですが、記事の見出しにある「ある言葉」というのも尋常ではない。

「国際的な支援を求めてはいますが、香港は大国間のせめぎあいのゲームの駒にされているようで、過度な期待はしていません。とはいえ、ツイッターなどSNSを使って香港の状況をより多くの世界の人々に伝える努力はこれまで以上に重ねます。いつの日か、警察や官僚が、今犯している人道、国家犯罪に関して、国際法廷で裁かれる日を夢見ながら」

 そういった厳しい状況の中、若者たちのなかで広がりつつあるのが「攬炒(ラムチャオ)」(死なばもろとも)という覚悟だ。

 これは、警官を巻き込んで死んでやるといった意味ではない。習氏が香港人の「自由と民主」を認めないなら、中国経済にとっても欠かせない香港の国際金融センター機能を麻痺(まひ)させ、失業、給与カットなど、たとえ自分たちが不利益を被ることになっても、香港内の親中的な富裕層や中国政府に多大な打撃を与えてやるという覚悟だ。


 中国共産党、習近平と刺し違えても「自由と民主」を守る覚悟だというのです。これはたんなる「血気にはやった行動」というのではないでしょう。彼らはあの天安門事件などもよく知っているはずだからです。中国共産党政府がどんなえげつない手を使う権力かということもよく承知した上での「覚悟」です。また、抗議活動は若者、大学生が中心でも、一般市民の厚い支持がある。

 習近平が人民解放軍(この名称はほとんどブラックジョークですが)を使えばかんたんに制圧できるが、世界注視の中、それをやったのでは国際的非難が一気に高まるだけでなく、中国の世界覇権戦略も大ダメージを受ける。あんな国の経済援助を受けたり、その資本を受け入れたりすると、後でどんな目に遭わされるかわかったものではないと、すでに「中国ファースト」的態度が露骨すぎて警戒されるようになっているのに、悪評は決定的なものとなる。米中経済戦争のさなか、それは痛すぎるダメージです。

 かといって譲歩すれば、中国本土内の民主派が勢いづき、これまで従順だった一般国民も政治的な自由を求める方向に動きかねない。一党独裁の“共産党王朝”が揺らぎかねないのです。独裁国家特有のメンタリティからしても、譲歩すればボスとしてのメンツが潰れて、習近平では駄目だ、という動きが共産党内部から出かねない。強権に頼ってきた“孤独な独裁者”は、KGB上がりのロシアのプーチンなども同じですが、コワモテをやめれば同時に失墜するという危険を抱えているのです。

 原因を作ったのは「一国二制度」の約束をなしくずし的に反故にしようとした“驕れる独裁者”習近平の方なので、彼に同情するいわれは全くありませんが、その愚かさを認めることはなおさら彼にはできないでしょう。心臓発作でも起こして死んでくれれば、後継者は自分のメンツを気にせずに、香港に大きな自治権を認めることができ、それで騒乱は終息するかもしれませんが、習近平が病気だという話は聞かないので、それは望み薄です。

 結局はケチくさいエゴとメンツの問題で、家庭や学校、職場でも、それが原因で自分の非を認めることができず、トラブルが発生するのは日常茶飯ですが、こういう問題でもそれは同じなのです。韓国の文在寅なども、GSOMIAの破棄でアメリカを怒らせてしまい、これはまずいことになってしまったと内心狼狽しながら、しかし、それを引っ込めたのでは面目が丸潰れになるので、先に貿易規制を仕掛けてきた日本政府がけしからんのだから、それを撤回すれば考え直してやってもいいとカッコをつけて見せるのです。その前に自分がやらかした国際常識に照らして自己チューかつ非常識きわまりないことはきれいに棚上げして、とにかく自分のメンツを保とうとする。一国の外交より、自分のメンツが大事なのです。ここでうかつに譲歩すれば支持率が下がって、今度の選挙で負けてしまうということなのでしょうが、それもたんなる「自己都合」にすぎません。彼の場合、何ら明確な先の見通しもなく悪手を打ち続けるという点で、とくに頭が悪いとは言えるでしょうが、大本の問題はエゴなのです。

 中国の場合、今のあれはそもそも共産主義でも何でもありませんが、元からあの面妖なシステムには無理があるので、どこかで政治的・思想的自由を認めて一党独裁をやめる方向に舵を切らねばなりません。中国のゴルバチョフがいつか出現する必要があるのです(尤も、あれはその後がエリツィン、プーチンと来て、よろしくなかったのですが)。しかし、そんな気配は全くなさそうなので、今回の香港騒乱は軌道修正のきっかけになりうるものですが、かえって中国共産党幹部たちの恐怖心を強めてしまったようです。それゆえに彼らは身動きが取れなくなっている。とくに習近平は根が小心な人であるように思われるので、ここで折れると先々何が起きるかわからないという恐怖心を強くもっているのでしょう。

 これから先どうなるのか、僕のような素人にはわかりませんが、中国共産党政府は人民解放軍(抑圧軍と名前を変えた方がよさそうですが)を入れて正面から制圧することはできないので、今後も汚い手を次々繰り出して反対派の疲弊、解体をはかろうとするでしょう。元が巨大国家権力を相手の戦いなのだから、抵抗派に勝ち目は薄い。しかし、ここまで長引いているということ自体、中国共産党には大きなダメージで、印象戦では勝利に近いでしょう。

 翻って、今の日本は平和で、若者もおとなしい。例の「桜を見る会」がけしからんといった程度の話だけで、大学生たちはシューカツにいそしみ、受験生たちはセンターまであと二ヶ月で、他のことどころではありません。塾教師の僕も、眠そうな顔をしている生徒に、「ちゃんと寝ろよ。寝不足では頭が働かず、勉強の能率が上がらない」なんて言っているのですが、同じ惑星上に生きていても、所違えば意識もやっていることもまるで違うのです。

 これはいい、悪いの問題ではありませんが、これからやってくるであろう激動の時代、無風状態の中で、内向きの意識の中、十代、二十代を過ごした彼らがそれにどう対処するのか、できるのか、いくらか心配になることはあるのです。今の日本の若者は「安全意識」が発達していて、将来の生活設計なども怠りない一方、広い文脈でものを考えることが苦手で、思考の幅が狭すぎると感じることが少なくないので、せめて視野を広くもって、あれこれ考えながら、自分の勉強の意味づけをしてくれればいいのですが。

慰安婦財団を勝手に解散しておいて、残った分を徴用工用補償に回すとは…

2019.11.06.22:41

 韓国の文喜相・国会議長が早大で講演して、新たな「思いつき発言」をしたとか。次は韓国・聯合ニュース日本版の記事です。

徴用賠償問題で韓国国会議長が新たな提案 「韓日企業+国民」からの寄付で支援

 この議長は、慰安婦問題とからめ、米ブルームバーグ通信とのインタビューで、次のように語ったと報じられた人物です。

「(謝罪をするのは)日本を代表する天皇がされるのが望ましいと思う。その方はまもなく退位すると言われるから。その方は戦争犯罪の主犯の息子ではないか。だから、その方がおばあさんの手を握り、本当に申し訳なかったと一言言えば、すべて問題は解消されるだろう」

 お粗末だったのは、ブルームバーグがこれを記事にして、日本側の反発が報じられると、ご本人は「戦争犯罪の主犯の息子」という発言はしていないと否定し、「げんに言ってるではないか!」と同通信がその箇所の音声を公開して、嘘がバレてしまったことです(上の訳は朝日新聞記事のもの)。そうでなければ、「日本は人の発言を曲解してインネンをつけてくる。反省もなく、盗人猛々しい!」とまた日本攻撃に利用されていたことでしょう。

 当時、文政権は「反日」イケイケドンドンで、政府が率先してそれを煽りまくっていたので、それに乗せられて国内向けの人気取りでそう言ったのでしょうが、この御仁は「ソウル大学法学部卒」の肩書をもつにもかかわらず、明治憲法下での日本の天皇の地位がかつての西洋的な絶対君主のそれとは大いに異なっていたことすら知らなかった、あるいは知っていても韓国の国内世論に迎合するためにそれを歪曲したのだろうと、いかにも韓国の政治家らしいご都合主義に苦笑させられたものです。「文」と名のつく人にはとりわけ問題が多そうだなと。

 彼のこの、「強制徴用被害者への賠償問題の解決法として、韓日の企業と両国国民の自発的な寄付を募り、被害者へ支援することを柱とする『1プラス1プラスアルファ』案」なるものは日本政府に全く相手にされていませんが、それもそのはずで、元弁護士の文在寅もこの文喜相も同じですが、リーガル・マインドというものを全く身につけずに卒業したらしく、順序を踏んだ思考ができていない。それで法学部を卒業できるとは、韓国の大学はよほどレベルが低いとしか思えないので、この講演の中でも彼は、

 韓国大法院(最高裁)の判決について、「韓国大統領や国会は現行法上、判決にともなう強制執行を中断させたり延期させたりする権限がない」と説明した

 そうですが、それなら、日本側の同意なしの日韓請求権協定の実質的な破棄は国際法上許されるのか、という問題になるので、前にも書きましたが、こういう判決が出てしまった場合、大統領としては「ちょっと待ってくれ」と言わねばならないのです。国家としての信用がかかっているので、国家間合意を一方的に破棄することはできない。日本と再交渉して方途を探るから、相手側の合意なしに一方的に日本企業の資産を差し押さえなどすると、「あの国は条約でも何でも自己都合で平気で反故にする」ということで国際的な信用を失ってしまう、そこはわかってもらわないと困ると、自国民を説得しなければならないのです。朴槿恵政権は最高裁でそういう判決が出ると困ったことになると、判決を遅らせるよう画策していたと言われ、文政権はそれはけしからんと、その関係者も処罰しようとしたのですが、そこには国際法的な配慮が働いていたのであり、感覚的には文政権よりよほどまともだったのです。

 しかし、彼にはそんな配慮はまるでなかった。「国内でこういう判決が出てしまったから、再交渉してもらう必要が出てきた。それに応じてもらえないだろうか」と日本政府に言ってきたというのならまだわかります。ところが、彼はそんなことは全くしなかったのです。「韓国は三権分立の国(外部からはそうは見えない)だから、それに口出しはできない」で終わりで、実質的な一方的破棄を当然のように見なしたのです。

 日本政府が十億円を拠出した慰安婦財団を勝手に解散してしまったのも全く同じです。心情的には、あれは朴槿恵政権の功績だったから是が非でも否定しなければならないというのがあったのでしょうが、そんな個人的・党派的な感情、都合のために、ここでも平気で国家間合意を踏みにじったのです。夜郎自大という言葉は文政権のためにこそある。

 しかし、あの解散は一体どういう名目で行われたのか? 次はそれに関する昨年11月24日付のレコード・チャイナの記事です。これは「香港メディアの文匯報」の記事の紹介なので、日本のものではない。日中戦争を戦った中国側の視点から見てそれがどう映ったかという点でも興味深いものです。

なぜ韓国は突然、慰安婦財団を解散したのか―香港メディア

 これを見ると、文政権が言うことをコロコロ変えていたことがよくわかりますが、後半部をそのまま引用(但し、〔〕は引用者の補い)すると、

 ところが21日に突然、韓国女性家族部が解散を発表したと記事は紹介。その理由について、「国民と世論の反応を考慮したからだ」と〔この記事は〕分析した。実際、「韓国国民の多くが不満と反対を表明しており、日韓の合意で慰安婦問題を最終的かつ不可逆的に解決したというのは、感情的に受け入れがたいものだった」と〔韓国政府は〕している。また、「被害者及び関係団体からの強い抗議」や、「合意に至るまでの秘密協議の状況が暴露され〔実際は韓国政府が進んで暴露した〕、日韓の政治協議が正常に行えなくなったこと」も原因として挙げている。

 記事は、日韓慰安婦合意には確かに重大な欠陥があるとしつつも、「朴槿恵(パク・クネ)政権と安倍政権との間での合意であり、これを破棄しないことは文政権にとっていくつかの利点がある」と指摘。それは、「国家としての威信を保てること」、「責任を全て朴元大統領に押し付けられること」、「金で慰安婦問題を解決しようとした安倍政権に責任を要求できること」、「この先日本政府に対し再び慰安婦問題を提出する余地ができたこと」だという。

 しかし記事は、問題の本質は「和解・癒やし財団」の解散が事実上、「日韓慰安婦合意」の破棄と同等の意味を持つことにあると指摘。「和解・癒やし財団」の解散で、日韓の「攻守」の立場が逆転し、日本政府は強制徴用問題や竹島問題について「攻勢」をより強め、国際社会において韓国政府の道徳や信用度を攻撃してくる可能性があると分析した。また、朝鮮半島の和平や核問題でも米国からの圧力を受けるようになるだろうとしている。

 結びに記事は、「韓国政府は『日韓慰安婦合意』に重大な欠陥があると考えているなら、日本政府に対し正式に再協議を要求すべきで、日本を説得し続けることが問題解決の王道だと思う」と主張した。


 最後の結論部は、全く道理にかなった話で、徴用工の問題でも慰安婦問題でも、それを日本政府が呑むかどうかは別として、「重大な欠陥があると考えているなら、日本政府に対し正式に再協議を要求すべき」だったのです。それで日本側が頭ごなし拒絶すれば、逆に日本政府が国際的非難の矢面に立たされることもありえたでしょう。しかし、繰り返しますが、驕った文在寅はそのような努力は何もしなかった。

 この慰安婦財団ではとくに、多くの元慰安婦の人たちがその賠償金を受け取った。問題はあのとことん難癖つける挺対協改め正義連で、僕はそれを「札付きの反日左翼市民団体」と呼んでいますが、慰安婦問題を政治利用してきたこの政治団体及び左翼労組などが文政権の支持母体なので、それを「韓国国民の多く」とみなして、それを正当化したのです。

 しかし、「最終的かつ不可逆的」という文言まで織り込んだあれを一方的に破棄することはいくら何でも近代国家としてはまずすぎる。それで「韓国外交部は日本や国際社会からの批判を避けるため、「慰安婦合意を破棄しないこと、日本政府に慰安婦問題の再交渉を求めないこと、『和解・癒やし財団』を解散しないこと」にしていた」のですが、文政権はそのあたりをどうするかも考えず、「突然、…解散を発表」してしまったのです。支離滅裂と言う他はない。朴槿恵、安倍憎しで凝り固まっていたのかもしれませんが、論理も順序もへったくれもないのです。

 解散はしたものの、日本政府は依然としてあれは有効だという立場に立っているから、残金の受け取りも拒んだ。そこで話はこの韓国国会議長センセイの講演に戻りますが、「あの残金も使おう!」という話になるのです。

 文議長は「両国企業の寄付金とするものの、責任のある企業だけでなくそのほかの企業を含め自発的にする寄付金形式」とし、「両国国民の民間寄付の形式を加える」と説明した。

 また、旧日本軍の慰安婦問題を巡る2015年末の韓日合意に基づき設立された「和解・癒やし財団」の残りの財源60億ウォン(約5億6000万円)を含めるとし、「このような基金を運用する財団に韓国政府が拠出できる根拠となる条項を作らなければならない」と説明した。


 全くもって支離滅裂な話で、あれは元慰安婦及びその遺族に渡されるべきおカネなのです。それをかの国政府はこちらに何の相談もなく勝手に「解散」してしまった。昔、請求権協定で徴用工の人たちに渡すべき分を韓国政府は勝手に使い込んでしまったのと同じで、慰安婦財団は解散してしまって残金が浮いているから、今度はそれを元徴用工補償に回せば「資金の有効活用」になる、素晴らしいアイディアではありませんかと、唖然とするようなことを平気でのたまうのです。

 国会議長ともなると、「超論理」を自在に使い分ける能力が必要とされるのかもしれませんが、行き当たりばったり適当なことを言って、行き詰まれば前後の脈絡なしにまた別のことを言い出すのです。なのに「韓国は理の国」だと自慢するので、意味がさっぱりわかりませんが、その言葉は紙のように軽く、国家間の合意や協定でさえ、「あれは前の政権が国民感情を無視してやったことなので、関知しない」とそれらを反故にすることに何のためらいも見せないのです。そういう国と国民に、どうやって対処すればいいのでしょう?

 今回の文政権の対応ぶりではっきりわかったのは、韓国は「自己都合」だけの国だということです。国と国との交渉事は、利害が対立するものならなおさら、双方の妥協と歩み寄りがなければ成立しません。100%自分の主張が通らなければイヤというのは幼児の特徴で、小学生同士のおもちゃなどの物々交換ですら、お互いの譲歩が必要だということはわかっている。それが「社会性」というものですが、今の韓国政府にはそれが全くない。前に結んだ約束に対する不満が大きくなったというなら、一方的に破棄するのではなく、相手に再交渉を申し出なければならない。それが理にかなったものなら、相手も譲歩してくれるかもしれない(してくれなくても仕方がない)。しかし、そんな努力は何もせずに一方的に破棄して、相手が怒ると、「賊反荷杖(賊が居直ることで、盗人猛々しいと訳された原語)」と逆ギレするのです。幼稚園児が国の舵取りをしているようなもので、とてもつきあいきれない。

 それで文政権は日韓関係を「最悪」と言われるような事態にまで追い込んだ。最近風向きが変わってきたのは、あのGSOMIAの破棄にアメリカが怒っているからです。元はといえば、慰安婦合意もアメリカの後押しがあってまとまった(僕もあれには驚いたほどで、安倍政権にしては最大限の譲歩でした)。文政権はそれをどちらもチャラにしてしまったのです。加えて、文政権は「大本営発表」を続けていますが、失策続きで経済の落ち込みぶりがひどい。一方的にラブコールを送っている北朝鮮の金正恩には事あるごとに罵倒されるだけ。トランプと来た日には「何であんな人が大統領になったのか」と世界の首脳が居並ぶ席で発言するほどです。また、ヨーロッパ諸国首脳に文は北朝鮮に対する規制緩和を説いて回って、「金正恩の代理人」と冷笑された。まともに相手にしてくれる人間は、外部に誰もいないのです。

 要するに、最近出てきた「対話姿勢」も全部、旗色が悪くなった彼の「自己都合」なのです。ところが、「親日派」を弾劾・追放してしまったために、政権関係者で日本とまともに交渉できる人間が誰もいない。それで、「天皇は戦争犯罪の主犯の息子」発言の国会議長まで駆り出さねばならなくなっているわけで、そのしょーもない御仁の「解決案」というのがこれなのです。「話にならない」と日本政府関係者に一蹴されるのも無理はない。

 にしても、「慰安婦財団の残金も徴用工補償に」という案など、荒唐無稽の域に属するので、「同じ日帝支配の犠牲者だから」という屁理屈で無理に正当化するつもりなのかもしれないが、通る理屈ではないので、そんなものを韓国国会の審議にかけても賛同を得られるわけはないでしょう。それが通るようなら、なおさら韓国は信用できないと、日本人は思うだけです。仮にそれが成立して再合意したところで、100%、問題はまた蒸し返される。

 だから無意味な話なのですが、早稲田でのその珍講演を、学生たちはどんな顔で聴いていたのでしょう。右翼の夕刊フジの記事によれば、「講演会場では、『上皇陛下に謝れ!』などとヤジが飛ぶなど、終始緊迫した雰囲気だった」そうですが、そんなことを言うのは右翼の活動家だろうから、右でも左でもないふつうの学生はこれをどう受け止めたのか。ネットで検索してみても、2ちゃんねるのネトウヨの罵詈雑言はあっても、その様子がわかるようなものは見つかりませんでした。今はあの大学の学生もお行儀がよくなっているので、そこに突っ込みを入れるというようなことはなかったのかもしれません。紳士的に「どういうロジックでそういうことになるのか、ご説明いただけますか?」と質問すれば面白いことになったでしょうが、質疑応答の時間は設けられなかったのか、そういう展開にはならなかったようです。大声でわめくより、そちらの方がずっとインパクトはあったでしょうが。

 何にせよ、文政権は日本での信用を完全に失った。日韓関係改善の糸口は文政権の退陣の他にはない。韓国内の保守派に対しても、日本に対しても、今後は「融和策」を取ってくるかもしれませんが、時すでに遅しで、朴大統領に対する弾劾のろうそくデモ以上の大規模デモが彼を待ち受けているかもしれません。権力を握った野心家が復讐心と功名心に駆られ、夜郎自大なふるまいに陥って自ら墓穴を掘るなど、韓流歴史王朝ドラマを見せられているようですが、それを地で行ったのがあの政権であり、文在寅だと言えるでしょう。あの非常識としか言いようのないチョ・グク事件なども、ドラマの一エピソードとしてはそれにふさわしいものです。

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